サブローみたいに

２

　ぞうきんで黒板をふいていた菜々ちゃんが、割れた音を聞きつけて走ってきた。
　人形の前にしゃがみこむと、かけらを手のひらに集めている。

「ごめん」ってあやまったけど、奈々ちゃんの顔はさえない、それどころかみるみるゆがんでしまう。

「何があったんですか？」

　ジャージ姿の永里先生がやってきた。やせてて背が高い。黒縁メガネの奥にある目が、怒りでみるみるするどくなった。

　それからは最初の通りだ。ぼくとジュンヤは先生にすごく怒られた。おまけに先生が母ちゃんにまで電話を入れたから、ぼくはどこにも逃げ場がなくなった。

「まったく、なさけない子ね。野球の試合に行くどころの話じゃないわ」

　母ちゃんの頭が噴火して収まるまで、一時間くらいかかった。ついでに勉強ができないことや部屋のそうじをしてないこともえんえんと注意された。

　ぼくは自分の部屋にもどってぐったりして、べっドにころがった。

　しばらくして玄関のチャイムが鳴った。父ちゃんだ。仕事から帰ってきたんだ。
　下から母ちゃんが父ちゃんに、ぼくの失敗を大声で報告しているのが聞こえた。今日は試合に行けないかもしれない。

　ふてくされて布団をかぶっていたら、

「おい、早く行くぞお」

と、ドアごしに父ちゃんの大声がひびいた。