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終章 ひとりぼっちじゃない

第22話

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 未知子は身を乗り出して訊いた。

「たいしたことじゃないんだよ」
と木立は言った。 

「たいしたことじゃないのに、なぜ入院してるの。指、どうしたのよ」

 彼は少し唇をすぼめながら、
「実は、空調機のベルト点検の時に、突然機械が動き始めて。指が プーリーに巻き込まれて。上関節からちぎれちまった」

「ちぎれた……」

「まあ、でもな。止血してそのまま病院行ってさ 。それで、傷口を縫ってもらって。安静のためにって、ここで入院していることになったんだ」

 未知子は絶句した。
 そして愛おしそうに、頬をその包帯の指にすり寄せた。

「痛かったよね」

「死ぬほど痛かったさ」

「私も痛いんだよ」
「何で未知子も痛いの」

「同盟関係だもん。君が痛かったら私も痛いよ。もう一心同体。ひとりぼっちじゃないんだよ」

 木立は未知子の髪を撫でた。

 それから、目頭を押さえた。

「心配かけちゃったね」

「この仕事、危ないよ」

「それが俺の仕事だ。でも、仕方ないんだ。生きるために仕事はしなきゃならないから」

 彼は冷静に言った。

「誰か恵んでくれるわけじゃないし。金くれるのは、会社が出してくれるわけだし」

「そうね」

 未知子は静かに横にある席に座った。

「面会には誰か来てるの」

 彼は首を横に振った

「実家は青森の田舎だからな。会社の人間だって忙しくて来れないみたい」

「着替えとかあるの?」

「いらないよ。 明日には退院するから」
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