異世界に落ちたオレは、キミの最強の武器になる

朝日みらい

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異世界

10 捜索

 貧民街に入り、ここにきて意外な展開で、ケンが役立つこととなった。

 中には「これでも食べて強く生きなよ」と小さなフルーツみたいなのを差し出す老婆もいたほどだ。

 試しに恐る恐る口に含むと、固い感触の中にわずかな苦みと甘み。そして強烈に感じ始める様々な匂い。内側から鼻が敏感になり過ぎて、鼻の筋をつまむ。

「やべえ! 思いやりかと思ったら毒だった! なんか全身が燃えるように熱い! 死ぬかもしんない!」
「ザリガの実ね、これ。食べると体の中の嗅覚を刺激して、犬の鼻みたいに、匂いに敏感になるの。効果は個人差あって、だいたいは気休め程度なんだけど」

 痛みで顔を歪めるケンを見て、イリスは「ほうほう」と唇に指を当てた。

「見た感じだと、ケンってかなり効果が高いかもね。そっか、ケンを落とした魔女の匂いを見つけ出して」

「よしきた。俺の功績でわかった魔女の行方を追おう。俺の功績でわかった魔女の居場所を」

「役に立ったのが嬉しいのはわかる。けど、そこ二回言うのはすごく格好悪いよ」

 ケンは鼻をクンクンさせながら、今度は先頭になって、犬みたいに歩き出す。

「わたしは後ろの警戒をするからね。何かあったらすぐに私を呼ぶ。自分で何かしようとか思っちゃダメ。別にあなたを傷つけたいわけじゃないけど……最弱なんだから」

「おう」

 捜索を始める。といっても、やることは、貧民街の住人たちの匂いを嗅ぎまわって、建物をうろつき回るだけ。

「あ、ここじゃないか」

 窓のない掘っ立て小屋は、二人の来訪を待ち構えている。
 建物の大きさは、おおよそ良く通うコンビニの建物面積の2倍近くはあたるだろう
 高い防壁を背中にして、文字通り貧民街の最奥に居を構えている。

「あの高い壁っていうのは……」

「王都の防壁。いつの間にか端まできてたみたい」

 王都はおそらく、四方をこの手の高い壁に覆われた真四角の地形なのだ。その内側、中心か最北のどちらかに城があり、そこから離れた位置にこの貧民街が位置する。

 捜索が始まって二時間が経過している実感があるので、王都の広さはそれなりのもののようだ。

「さて、中にたぶん魔女ってえのがいると思うけど……こちらの立場としてはどんな感じ?」

「正攻法にいくわ。中を探して、魔女を捕まえるというか……拒否したら退治する。そのまま探して」

「お、おう」

 ケンは破顔して彼女の指示への答えとし、小屋の入口へと向かう。

 足取りは決して軽くないが、背中は期待とかすかな信頼によって押されている気分。手柄のひとつでも持って帰らねば、本格的に役立たずで終わってしまう。 
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