[完結]癒し系魔術師のわたしは冒険者パーティーから追放されたので、諸事情により魔王様と結婚してみることにします

朝日みらい

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20  最終回 いつまでも

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 新しい命が芽吹く春の訪れとともに、小高い丘に
魔王とフローラルの、新しい屋敷ができた。

 小さな村全体を見下ろせ、向かいの高台に建つシラスク公爵邸と引けを取らない、邸宅である。

 しかし、大理石の白色の、いかつく頑強で目立つような仕上がりではなく、木造の落ち着いた木肌を活かした自然に溶け込む仕上がりになっていた。

 庭には季節ごとに咲く花々が植えられていて、自然に湧き出てできた小川が、広い庭の池に注ぎ込む。

 室内には木材から、かぐわしい森の匂いが漂い、住民を癒してくれる。

 すでにここには、魔王とフローラルはもちろん、フローラルの父やリリアも住んでいる。

 父親は、魔王やアーゴイルたちと触れ合ううちに、怪物を殺す冒険者としての仕事に見切りを付けて、庭の手入れに熱心だ。

 フローラルは、父親にあの結婚式で着た純白のドレスを着て、目の前で披露することができた。

 アーゴイルとアングリーズは店の手伝いを通じて、激しい気性同士で意気投合して、今は魔王の城に暮らしている。

 この屋敷に、表敬訪問として、シラスク公爵とクレマンチーヌ、アルボ一家が訪れた。

 あれからクレマンチーヌは夫の改心を認め、夫婦として、家族として、再出発をすることに決めたのだと話してくれた。

 シラスク公爵一家の馬車を二階のバルコニーから見送りながら、

「わたし、幸せ」

と、フローラルは魔王の頬に口づけをする。

「わたしもだよ。ここからずっと、君を見ていられる。君のお店も見えるし、丘を下れば、すぐに会いに行ける」

 フローラルは、ふと、思いついたように、

「わたし、まだ、あなたの本当の名前を知らないかも知れない。あなたとか、魔王様とかしか、呼んだことないもの……」

「わたしの名前は、アルマンドリスク・ハングドリセト・マグシルトステクスネルと言うんだよ」

 フローラルは、じっと思案していたが、

「長いから、アルマンド、じゃ嫌?」

「いいよ。ぴったりの名前だね。フローラ?」

「フローラ? わたしをこれからはそう呼ぶの?」

 フローラルが甘え声で囁く。

 アルマンドは首をかしげてから、苦笑する。

「いや、やっぱり、君はフローラルがぴったりだ。永遠に愛し続けるよ」

「わたしもよ、アルマンド」

 二人は夜空の星々に見守られながら、唇を添えた。
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