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第二十四章 裏切りの代償
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玉座の間に響き渡るのは、書簡の束が机に叩きつけられる音、ざわめく廷臣たちの声、そして――何より、証拠を突きつけられた貴族たちの引きつった顔だった。
「ふむふむ、なるほど。これがあの“秘密口座”ですか。数字がずいぶん多いですね。あっ、こっちは“裏金リスト第二弾”……?」
リディアが一つひとつ丁寧に書類を読み上げていくたび、侯爵ルベルクの顔色がどんどん悪くなっていく。まるで茹でた海老のようだった。
「こ、こんな小娘に……! まさかここまで掴まれていようとは……!」
ルベルクはぶるぶると震えながら、最後の手段に打って出た。
「こんな審問、茶番だ! 宰相も王太子も、王権を簒奪しようとする反逆者だ! 我ら正義の貴族は、今ここで立ち上がらねばならん!」
勢いよく剣を抜き、数名の廷臣がそれに続いた。王宮の空気が一瞬、凍りつく。
「おお……やる気だわね……」
リディアが呆れ気味に呟いたその瞬間――
「残念だったな。君の動き、読めてたよ」
玉座の背後の扉が開き、太子レオンハルトの私兵たちが鮮やかに進軍してきた。銀の甲冑が陽光を反射し、広間はまばゆい光に包まれる。
ルベルクたちは次々と取り押さえられていく。必死に抗おうとする者もいたが、まるで夜明け前の闇のように、すべては呆気なく蹴散らされた。
「……お前の反逆こそ、もはや弁解の余地はない」
ヴァルトの低く静かな声が、最後のとどめのように響いた。
「ふ、ふはは……ぬかったわ……まさか女に、女に敗れるとは……!」
膝をついたルベルクが呟いたその言葉に、リディアは涼しい顔でこう言い返した。
「性別より、賢さで勝っただけですわ。……あと、根性も」
「ぐぅ……!」
ルベルクの顔がますます赤くなったのは怒りのせいか、羞恥のせいか。本人にもわからなかったに違いない。
やがて騒動が鎮まり、兵士たちが反乱分子を連行していったころ。王が静かに玉座から立ち上がった。
「ヴァルト・ラインハルト。汝の潔白をここに認める。そして、リディア嬢。汝の勇気と忠誠を、王として、心より称える」
その瞬間、リディアの肩から何かがふっと落ちた気がした。
「……父の名誉も、ようやく……」
ぽろり、と。目から涙が一粒、頬を伝った。
ヴァルトはその涙を見逃さず、そっと彼女の手を握った。
「ようやく終わったな。これで、君も自由だ」
「ええ。……でも、できればあなたのそばに、自由に居させてほしいです」
「ふむ。では、改めて問おう。自由な意思で、私のそばに居続けたいと?」
「……はい、閣下。もう、あなたの“仮の婚約者”ではなく、“ほんもの”になりたいです」
その瞬間、彼女の言葉に王宮の一部から控えめな歓声と拍手が起こった。
「リディア、君は相変わらず大胆だな」
「あなたが相変わらず不器用だから、私がリードするしかないでしょう?」
そう言って微笑むリディアに、ヴァルトも小さく笑みを返した。
そして、二人の手がしっかりと重なったその瞬間――
法廷に再び陽光が差し込んだ。それは、長く続いた夜を終わらせ、新たな朝を告げる光。
王都は静かに、しかし確かに、新しい時代を迎えようとしていた。
「ふむふむ、なるほど。これがあの“秘密口座”ですか。数字がずいぶん多いですね。あっ、こっちは“裏金リスト第二弾”……?」
リディアが一つひとつ丁寧に書類を読み上げていくたび、侯爵ルベルクの顔色がどんどん悪くなっていく。まるで茹でた海老のようだった。
「こ、こんな小娘に……! まさかここまで掴まれていようとは……!」
ルベルクはぶるぶると震えながら、最後の手段に打って出た。
「こんな審問、茶番だ! 宰相も王太子も、王権を簒奪しようとする反逆者だ! 我ら正義の貴族は、今ここで立ち上がらねばならん!」
勢いよく剣を抜き、数名の廷臣がそれに続いた。王宮の空気が一瞬、凍りつく。
「おお……やる気だわね……」
リディアが呆れ気味に呟いたその瞬間――
「残念だったな。君の動き、読めてたよ」
玉座の背後の扉が開き、太子レオンハルトの私兵たちが鮮やかに進軍してきた。銀の甲冑が陽光を反射し、広間はまばゆい光に包まれる。
ルベルクたちは次々と取り押さえられていく。必死に抗おうとする者もいたが、まるで夜明け前の闇のように、すべては呆気なく蹴散らされた。
「……お前の反逆こそ、もはや弁解の余地はない」
ヴァルトの低く静かな声が、最後のとどめのように響いた。
「ふ、ふはは……ぬかったわ……まさか女に、女に敗れるとは……!」
膝をついたルベルクが呟いたその言葉に、リディアは涼しい顔でこう言い返した。
「性別より、賢さで勝っただけですわ。……あと、根性も」
「ぐぅ……!」
ルベルクの顔がますます赤くなったのは怒りのせいか、羞恥のせいか。本人にもわからなかったに違いない。
やがて騒動が鎮まり、兵士たちが反乱分子を連行していったころ。王が静かに玉座から立ち上がった。
「ヴァルト・ラインハルト。汝の潔白をここに認める。そして、リディア嬢。汝の勇気と忠誠を、王として、心より称える」
その瞬間、リディアの肩から何かがふっと落ちた気がした。
「……父の名誉も、ようやく……」
ぽろり、と。目から涙が一粒、頬を伝った。
ヴァルトはその涙を見逃さず、そっと彼女の手を握った。
「ようやく終わったな。これで、君も自由だ」
「ええ。……でも、できればあなたのそばに、自由に居させてほしいです」
「ふむ。では、改めて問おう。自由な意思で、私のそばに居続けたいと?」
「……はい、閣下。もう、あなたの“仮の婚約者”ではなく、“ほんもの”になりたいです」
その瞬間、彼女の言葉に王宮の一部から控えめな歓声と拍手が起こった。
「リディア、君は相変わらず大胆だな」
「あなたが相変わらず不器用だから、私がリードするしかないでしょう?」
そう言って微笑むリディアに、ヴァルトも小さく笑みを返した。
そして、二人の手がしっかりと重なったその瞬間――
法廷に再び陽光が差し込んだ。それは、長く続いた夜を終わらせ、新たな朝を告げる光。
王都は静かに、しかし確かに、新しい時代を迎えようとしていた。
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