【完結】作家の伯爵令嬢は婚約破棄をされたので、愛読者の第三王太子と偽装結婚して執筆活動に邁進します!

朝日みらい

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(あ、危ないところだったわ)

 アナリスは、帰りの馬車に揺られながら思っていた。

(でも、まさか隣国の第三王太子がファンだった、なんてね)

 最初は疑っていたが、彼の話を聞いているうちに、なんだか申し訳ない気持ちになったのも事実だ。

(それにしても……『メイリーン』に似てるって言われても困るんだけど)

 アナリスは、心の中でため息をついた。

「今日はひどく疲れているので、後日またの機会に……」

と、やんわりと王太子からの誘いを回避して、それでも馬車で自宅まで送る話も断って、アナリスはやっとのことで帰宅することができたのだ。

「お嬢様、おかえりなさいませ」

 使用人のアリスが、出迎えてくれる。

 彼女の姿を見て安心したのか、アナリスは力が抜けてその場に崩れ落ちそうになった。

「お嬢様! 大丈夫ですか!?」

 慌てて駆け寄ってきたアリスに支えられながら、なんとか立ち上がることができた。

「いや……いろいろあり過ぎてね。でも大丈夫よ……少し疲れただけだから」

「まあ……お疲れなら早くお休みください」

 アリスは心配そうに言うと、アナリスを寝室まで連れていってくれた。

 ベッドに横になると、すぐに睡魔が襲ってくる。

 けれども、作家脳はさえまくっている。

(わたし、今、婚約破棄されたヒロインの気持ちがよくわかるし。ぐいぐい書けるわ!)

 アナリスはそう思うと、新しいアイディアが次々に浮かんできた。

「そうだわ。書き上げたら、さっそく出版社に持ち込まねばっ……」

 アナリスはそう呟くと、すやすや深い眠りの中へと落ちていった。
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