上 下
65 / 66

(65)

しおりを挟む
 すると、再び会場に音楽が流れ始めた。

 アナリスが壇上に戻ると、ラファエルは彼女に片膝をついた。

「メイリーン・アダムス公爵嬢、改めてあなたにお願いする。わたしの正式な妻となってほしい。婚約はなく、あなたとの婚姻を正式に発表させてほしい」

 その言葉にアナリスは驚きの表情を浮かべると、ラファエルを見つめた。

 彼は真剣な表情でこちらを見つめている。

「はい、喜んでお受けいたします」

 アナリスは微笑みながら答えると、王と王妃に深々とお辞儀をした。

 その瞬間、会場中から拍手が巻き起こった。

 皆から祝福される中、二人はもう一度口づけを交わした──。


***


「おめでとう!」

「おめでとうございます!!」

 パーティの参加者たちは、口々に祝福の言葉を述べた。

 アナリスは照れくさそうに微笑むと、ラファエルを見つめた。

 彼の胸に飛び込みたい衝動に駆られたが、さすがにそれは遠慮しておいた。

 彼はそっとアナリスの手を握ると、会場を離れて、屋上までエスコートしてくれた。

 二人はバルコニーへ出て、夜空を見上げた。

 今夜は星々が輝く美しい夜だった。

「わたし……ラフィー様のこと本当に好きなんです」

 バルコニーに立ち尽くしながら、アナリスは言う。

 ラファエルは微笑み返すと、アナリスをそっと抱き寄せた。

「私も愛しているよ、アナリス」

 彼の言葉にアナリスは微笑むと、彼の胸に顔を埋めた。

(幸せすぎて怖いくらい……)

 彼女は心の中でそう思った。


☆☆☆


 それから、アナリスは正式にラファエル第三王太子妃となり、公務をこなしながらも、『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の執筆にも取り掛かっていた。

 そして、二か月後──。

 ついに『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の新刊が完成した。

 アナリスはラファエルに読んでもらうため、王宮の執務室へ向かった。

彼は仕事中だったが、快く引き受けてくれた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

秘密の男の娘〜僕らは可愛いアイドルちゃん〜 (匂わせBL)(完結)

Oj
BL / 完結 24h.ポイント:497pt お気に入り:8

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:22,941pt お気に入り:1,404

処理中です...