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「それでは、いだだきます、しまーす」

 ミノワさんが、手のひらを合わせた。

「いただきまーす!」

 あいさつを終えるやいなや、子供たちはいっせいに、せんべいやクッキーを口に入れた。それから、わいわい、ガヤガヤ楽しそうな声がはじまった。

「ねえ、ねえ。食べたら何してあそぶ?」

 パロパロちゃんの口の周りに、クッキーの粒がくっついている。

「えっと」

 あたしが口ごもっていると後ろから、

「まずは、お部屋の探検だよっ」

と、ポニーテールの女の子が声をかけた。同い年ぐらいで、細い顔に茶目っ気たっぷりの大きなひとみがのぞいている。

「うち、グネグネール。りゃくしてグネグネでーす。ハクちゃん、どうぞよろしくおねがいしまーす」

 パロパロちゃんは、ムッとして目をほそめた。

「ちょっと、割り込まないでよ。ハクちゃんは、わたしのお友だちなんだから」
「なーによ、パロパロ。一人じめはよくないねえ。うちも、ハクちゃんといっしょに遊ぶんだからー」
「ねえねえ」

 あたしは、取り合いバトルにわって入った。

「部屋の探検ってなに?」

 パロパロちゃんが、目をぱちくりさせた。

「ほら、昨日わたしが扉から出たのを見てたでしょ。その扉がいろんな部屋に通じてるんだよ」
「そう、そう。その部屋までの道がトンネルみたいになっててさー。それが二つになったり三つになったりして、いりくんでるんだ。まるで、迷路みたいー」
「お星さまの部屋とか、おもちゃの部屋とかね。わたしは、お話の国が好き」
「うちは、ぜったい火山の国だねー。スカッとするもん」
「へえ」

 あたしは二人の話をきいて、ここはやっぱり変わってるって思った。だけど、変わってていい場所なんだ。ヘンでも、なんにもおこられない場所なんだってわかってきた。

(よーし、部屋探しの冒険に出かけよう)

 しかめっ面だけど、あたしの足はひさびさに、ワクワクドキドキの足踏みを始めた。
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