【完結】初夜で「君を愛さない!」って言われたけど、なぜかイチャイチャが止まらない 〜不器用な秘密工作夫婦の、政略結婚から始まる溺愛家族計画〜

朝日みらい

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最終章 政略結婚の果てに

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 帝国の罠を打ち砕き、死闘を終えたとき、空にはもう夜明けの光が差し込んでいました。

  瓦礫と化した廃墟の中で、わたしはレオンハルトさまと、そしてジーナと、三人で強く抱きしめ合いました。

ジーナの小さな手がわたしの背中に回され、レオンハルトさまの腕がわたしを力強く包み込みます。

 「……ママ! パパ!」 

 震える声でそう呼んでくれたジーナは、心細かったのか、わたしたちの胸に顔を埋めて、えぐえぐと声を上げて泣きました。 

 「ジーナ……。怖かったね。ごめんね、ひとりにさせて」

  わたしが髪を撫でてやると、彼女はこくこくと頷きながら、しがみつく力を強めます。

  隣でレオンハルトさまが、ぎこちないけれどとても優しい手つきで、ジーナの背中を撫でていました。

  「もう大丈夫だ。俺たちが、ちゃんとそばにいる」

  彼の低い声が響いて、ジーナはさらに安堵したように、わたしたちの腕の中で静かになりました。

 ――ああ、この光景こそが、わたしのすべてですわ。

  もう、怖いものなんて何もない。  そう思わせてくれる、たった二つの温もりでした。

 やがて、ジーナが疲れて眠ってしまったのを確認すると、レオンハルトさまは彼女を抱き上げました。

  「屋敷に戻ろう。まずは体を休めるんだ」 

 その言葉に、わたしは静かに頷きます。

彼の瞳は、疲労の色を隠せないでいましたが、それ以上に、安堵と、わたしへの深い温もりに満たされていました。

  家族で並んで歩く道すがら、夜明けの風が、わたしの頬を優しく撫でていきました。

 「セレナ」

  ふいに、レオンハルトさまがわたしの手を取りました。

彼の大きな、ゴツゴツとした手が、わたしの小さな手を包み込むように握りしめます。 

 「……ありがとう。おまえがいてくれなければ、俺は……」

  彼の言葉に、わたしは微笑んで首を横に振りました。

  「いいえ、わたしの方こそ。貴方がいなければ、わたしはジーナを救えませんでしたもの。それに、貴方がわたしを信じてくれたから、この作戦は成功したんです」 

  彼はわたしの言葉に、ふと立ち止まり、わたしの頬にそっと触れました。 

 「……初めて会ったとき、まさか君が、こんなにも大切な存在になるとは、思っていなかったよ」 

 その率直な言葉に、わたしの胸が甘くときめきました。

  「ふふ。それはわたしの台詞です。まさか、あんなに不器用な貴方が、これほどまでにわたしを愛してくれるなんてね!」

  わたしが茶化すように言うと、彼はまた少し顔を赤くしました。 

 「……うるさい。でもそれは……」 

 その続きを待つわたしに、彼はもう一度、わたしの手を強く握りしめました。

  「――これは、俺の人生で、最上の幸運だった」

  その言葉は、どんな甘い言葉よりも、わたしの心に深く、深く響きました。

 屋敷に帰り着くと、レオンハルトさまはわたしとジーナを連れて、暖炉のある部屋へ向かいました。

  ジーナはソファに寝かせられ、温かいブランケットがかけられました。

わたしもまた、温かいココアをレオンハルトさまから手渡されました。 

 「……ありがとう」

  わたしがそう言うと、彼はわたしの隣に座り、静かにココアを啜りました。 

 「……真相はこうだろうと思う」

  彼はそう言って、今回の事件について話してくれました。

  「帝国の過激派は、替え玉の皇女を使い、偽の誘拐事件を企んだ。そして、わが王国と帝国との間で争いを起こさせ、混乱に乗じてクーデターを起こし、帝国を内部から乗っ取ろうとしていた……」 

 わたしは、彼の話を聞きながら、静かに頷きました。 

 「……彼らが、ジーナを狙ったのは?」

  わたしが尋ねると、彼は静かに答えました。 

 「ジーナは、元々替え玉として連れてこられた少女だ。だが、彼女は、クーデター計画の内部情報を、知らず知らずのうちに知っていた。だから、俺たちが計画を阻止した時、証拠を消そうとした」

  彼の言葉に、わたしの心は、深く沈みました。

  「……そんな……。ジーナは、何も知らずに……」

  わたしがそう言うと、彼はわたしの手を再び握りしめました。

  「でももう、大丈夫だ。これからは、俺と君が、彼女を守る。どんな危険からも、必ず」

 その夜、わたしは、レオンハルトさまの隣で眠りにつきました。

  彼の腕の中に抱かれ、彼の胸の音を聞きながら。

  翌朝、目覚めたとき、わたしは、彼の温かさに包まれていました。 

 「……おはよう、セレナ」

  彼は、そう言って、わたしの髪を優しく撫でました。

  「……おはようございます、レオンハルトさま」

  わたしは、そう言って、彼の顔を見つめました。

  彼の瞳は、朝の光に照らされ、美しく輝いていました。

 「……レオンハルトさま……」

  わたしは、そう言って、彼の顔を見つめました。

  彼の瞳は、愛おしそうに私を見つめていました。 

 「……セレナ……愛してる」

  彼は、そう言って微笑みました。

  わたしは、静かに頷きました。

 その瞬間、彼は、わたしを強く抱きしめました。

  「……レオンハルトさま……」 

 わたしは、そう言って、彼の胸に顔を埋めました。

  わたしたちは、言葉を交わすことなく、ただ、互いを強く抱きしめ合いました。

  「……まさか、こんな日が来るなんて、思っていませんでしたわ」 

 わたしがそう言うと、彼は静かに頷きました。 

 「……ああ。俺も、思っていなかった。ただの政略結婚のはずだったのにな」 

 彼の言葉に、わたしは微笑みました。

 「……レオンハルトさま。覚えていらっしゃいますか? 初夜の夜に、貴方が言った言葉を」 

 わたしがそう言うと、彼は少しだけ顔を赤くしました。 

 「……うるさい。あんなことは、忘れろ」  

  彼は、そう言って、わたしの手を取り、強く握りしめました。

 「……いえ、忘れませんわ。貴方が、わたしを愛さないと言った、あの言葉を」

  わたしがそう茶化して言うと、彼は真剣な眼差しで、わたしの瞳を見つめました。 

 「……セレナ。俺は、初めて会った時から好きだった。でも、俺には秘密もあったから、君を危険に巻き込むのが怖かったんだ。でも、もう二度と、君を愛さないなんて言わないよ。君は、俺の最高の妻だ。そして、俺たちの子供のジーナの父親だ」 

 彼の言葉に、わたしの心は温かい気持ちで溢れました。 

 「……ええ。信じてるわ、レオンハルト。私も、最初からずっとあなたのこと、好きだった」

 
 かつての「愛さない」という初夜の宣言から始まった物語は、今では、わたしたちにとって、最上の愛に満ちています。 




【完】
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