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第4章:はじめての朝、はじめての絵
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グランヴェル公爵邸で迎える、はじめての朝。
わたしは、自分の部屋の窓辺で目を覚ましました。
カーテンの隙間から差し込む朝の光は、とても優しくて、まるでわたしをそっと包み込んでくれているかのようでした。
自分の屋敷では、いつも、いつまた家族に冷たい言葉をかけられるのかと、びくびくしながら目覚めていました。
でも、ここでは違います。
深い眠りから覚めたわたしの心は、とても穏やかで、少しだけ、晴れやかな気持ちになっていました。
部屋から出ると、朝食の準備ができたと、公爵家の侍女がわたしを迎えに来てくれました。
公爵様とリリィちゃんと、三人で囲む食卓は、とても温かい雰囲気で満ちていました。
「セシリアおねえちゃん、おはよう!」
リリィちゃんが、太陽のような笑顔でわたしに話しかけてくれます。
「おはよう、リリィちゃん」
そう返すわたしの声は、以前よりも少しだけ、明るくなっているような気がしました。
朝食を終え、わたしが庭でスケッチブックを広げていると、元気いっぱいのリリィちゃんが、またわたしの元へ駆け寄ってきました。
「おねえちゃん、今日はお外で遊んでいいんだって! ね、私の絵、描いて!」
そう言って、リリィちゃんはくるくると回ってみせます。
わたしは、彼女の無邪気な笑顔を見ていると、胸の奥から、また絵を描きたいという気持ちが湧き上がってくるのを感じました。
「うん、描いてみましょうか」
久々に絵筆を握り、目の前の白いキャンバスに向かいます。
描くのは、ただの人物画ではありません。
リリィちゃんの、無垢で、きらきらと輝く笑顔そのもの。
わたしは、この温かい気持ちを、そのまま絵に閉じ込めるように、丁寧に筆を走らせました。
そして、完成した絵をリリィちゃんに見せると、彼女は目を大きく見開いて、感動したように言いました。
「わぁ! わたし、こんなに楽しそうな顔してたんだ!」
その言葉は、わたしの心に、また新たな光を灯してくれました。
そうか、わたしが描きたかったのは、誰かに「気味が悪い」と言われるような、暗い絵じゃなかった。
わたしが描きたかったのは、リリィちゃんが自分の笑顔を見て、こんなにも喜んでくれるような、温かい絵だったんだ。
わたしの絵は、誰かの心を温めることができる。
そのことに、わたしは生まれて初めて気づいたのです。
そこに公爵様もやってきて、完成した絵を静かに見てくださいました。
「この絵を見ると、心があたたかくなる。そう思いませんか、セシリア嬢」
優しい声でそう告げた公爵様の言葉は、わたしの胸に深く、深く残りました。
――ここにいていいのかもしれない。
傷ついたわたしの心に、そんな思いが、静かに、でも確かに、降り積もっていくのを感じます。
まだ、これは夢なのではないか、と信じられない気持ちのままだけれど。
それでも、わたしはほんの少しだけ、自分の未来に期待してしまっていたのでした。
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「わぁ! わたし、こんなに楽しそうな顔してたんだ!」
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そうか、わたしが描きたかったのは、誰かに「気味が悪い」と言われるような、暗い絵じゃなかった。
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――ここにいていいのかもしれない。
傷ついたわたしの心に、そんな思いが、静かに、でも確かに、降り積もっていくのを感じます。
まだ、これは夢なのではないか、と信じられない気持ちのままだけれど。
それでも、わたしはほんの少しだけ、自分の未来に期待してしまっていたのでした。
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