【完結】婚約破棄された絵描き令嬢ですが、公爵様が破られた絵を直して溺愛してきます

朝日みらい

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第9章:社交界の再来とリベンジ展示会

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 孤児院で子どもたちに絵を教えるようになってから、わたしの心は、以前にも増して晴れやかになっていきました。

そして、子どもたちが描いた絵を孤児院の壁に飾ったり、わたしが描いた絵を街の教会に寄贈したりするうちに、わたしの絵は、少しずつですが、街で評判を呼ぶようになったのです。

「グランヴェル公爵家にいる画家のお嬢様の絵は、とても温かい」

 そんな噂が、街の人々の間で囁かれるようになりました。

 ある日、公爵様がわたしを呼んで、静かに言いました。

「セシリア嬢。君の絵は、たくさんの人々の心を温めている。そこで、私は君のために、小さな個展を開こうと思う」

 個展……。

 その言葉に、わたしは思わず息を呑みました。

人前で絵を見せることは、もう怖くはありません。

ですが、公爵様のお名前を使って、そんな大それたことをしてもいいのだろうか、と不安になります。

「公爵様……。わたくしのような者が、そんな、恐れ多いです」

 わたしがそう言うと、公爵様は優しい目でわたしを見つめました。

「これは、君の絵が、それだけの価値を持っているということだ。それに、君が絵を描くことを、誰にも邪魔させはしない。これは、そのための、必要なことなのだ」

 公爵様の力強い言葉に、わたしの心は、揺るぎない確信に満ちていきました。

もう、臆病になってはいられない。

わたしは、公爵様とリリィちゃん、そして、わたしに絵を教わって目を輝かせてくれた、すべての子どもたちのために、この個展を開くことを決意したのです。

 個展の会場は、公爵家所有の、街の中心にある画廊でした。

 そこに展示されたのは、この一年間、わたしが心を込めて描いてきた、たくさんの絵でした。

 グランヴェル邸の庭に咲く、色とりどりの花々。

  無邪気に笑う、リリィちゃんの可愛らしい笑顔。

 そして、孤児院の子どもたちが、絵を描くことに夢中になっている姿……。

 どの絵も、わたしにとって、かけがえのない、温かい思い出でした。

 そして、展示会の中心には、あの絵が飾られていました。

 エリオット様によって破られてしまった、あの風景画。

公爵様が丁寧に修復してくださり、美しい額縁に収められた、わたしの、希望の絵。

 個展には、社交界の面々も、好奇心から、たくさん足を運んでくれました。

 わたしは、たくさんの人々が、わたしの絵を見て、驚き、そして、感動している姿を、そっと見つめていました。

「この絵には、本当に温かい風が流れているようだ」

「こんなに優しい絵を描く令嬢がいたなんて……。知らなかったわ」

 そんな、称賛の声が聞こえてきます。

 すると、そこに、わたしが一番見たくない人物が現れました。

 元婚約者のエリオット様でした。

 彼は、わたしがここにいること、そして、わたしの絵が称賛されていることに、驚きと苛立ちを隠せない様子でした。

 そして、修復された、あの風景画の前に立ち、息を呑んだのです。

 あの時、彼が「気味が悪い」と罵った絵は、今、多くの人々に「温かい」と称賛されている。

彼は、平静を装いながらも、わたしの絵に、そして、わたしに、完全に敗北したことを悟ったのです。

 わたしは、そんなエリオット様の姿を見て、ふっと微笑んでいました。

 もう、彼の存在を怖くはありません。あの日のわたしは、もういない。

 わたしは、まっすぐな瞳でエリオット様を見つめると、静かに、しかしはっきりと、語りかけました。

「この絵は、あなたが壊されても、私がまだ、描きたいと思ったものです」

 その言葉に、周囲の貴族たちがどよめきました。

 静かで、優しくて、それでいて確かな仕返し。

 かつてわたしを侮辱した男への、静かなリベンジが、ここに完成した瞬間でした。
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