【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

(4)

　しかし、両親は二人の仲を許さなかった。

　二人が親しくしているのに感づいたのだ。

　オカリナとブルームとの仲は、まったく受け入れられないものだった。

　翌日、父親は娘を書斎に呼び、

「ブルームとは結婚は許さない」と冷たく言った。

　平民出で孤児出身のブルームと伯爵家では身分差がありすぎて結婚できない。
　両親はふさわしい貴族の男性と結婚するように言った。

　しかし、オカリナは初めて両親に反抗した。

「私はブルーム様と結婚するわ。なんで私の気持ちを理解してくれないのよ！」

「オカリナ、そんなことを言ってはいけない。お前は伯爵令嬢だぞ。身分にふさわしい相手と結婚しなければならない」
と父親は言った。

「身分なんて関係ない。愛があればそれでいいの！」
とオカリナは食い下がった。

「愛だけでは生きていけません。あなたはこの家の代々守り続けてきた名誉を汚すことになるのですよ」
と母親は言った。

　そして、ブルームはその日以降出入りを禁止された。
　騎士団の宿舎に戻ったきり、屋敷には現れなかった。

＊＊＊

　オカリナは18歳になった。

　成人となり、王国で最も美しい女性の一人として知られるようになった。

　金色の髪をふわりと巻いて、淡いピンク色のリボンで飾っていた。
　瞳は青くて大きく、まるで空のように澄んでいる。肌は白くて滑らかで、まるで雪のようにきれいだった。
　唇は赤くてふっくらとしており、まるで花びらのように甘いのだった。

　背が高くてスレンダーで、しなやかな曲線を描いている。胸が大きくて形が良く、ウエストが細くてヒップが豊かで、脚が長くて細かった。

　オカリナは服装にも気を使い、社交の場では高級な素材や色彩を選んで、自分に似合うドレスを着た。
　飾り気のないデザインを好み、シンプルだけど上品な印象を与えていた。
　アクセサリーも控えめにして、耳飾りやネックレスなどをつけた。
　靴も合わせており、足元も美しく見せた。

　普段からオカリナは、王都の最も華やかなサロンに招待されていた。
　その日は白いドレスに青いマントを着て、金色の髪に青いリボンを結んでいた。青い目をしていたが、その瞳の奥には深い悲しみが隠されていた。

　サロンに到着すると、女主人から歓迎された。女主人はオカリナの才能や美しさをほめそやし、他の客に紹介した。
　オカリナは礼儀正しく応対し、サロンの中で多くの人々と話した。彼女は音楽や芸術や文学などについて知識豊富に語った。

　オカリナは人々から賞賛や尊敬を受けて、笑顔で返事した。

　しかし、彼女は本当には笑っていなかった。心から楽しんでいなかった。

　オカリナの胸の中は孤独だった。自分の心を開くことができなかった。
　自分の辛いことを話すことができなかった。早くサロンから抜け出した。

　窓辺に立って外を見た。外には三日月が顔をのぞかせていた。月明かりは水面に映ってキラキラと輝いていた。

　オカリナは水面に揺れる月が泣いているように見えた。気がつくと瞼にいっぱいの涙があふれていた。ブルームの顔を思い出していた。抱きしめられたかった。愛していると言われたかった。

　オカリナは月明かりにささやいた。

「ブルーム、まだあなたを愛しているのよ……」