【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

(15)

　ブルームとオカリナはエドワーズと兵士たちに追われて、必死に逃げた。

　彼らは国境の柵を飛び越えようとしたが、エドワーズが間一髪で追いついてきた。

　エドワーズはブルームの馬の足を切りつけて、ふたりを落馬させた。

　エドワーズはブルームに向かって剣を振り下ろそうとしたが、そのとき、隣国の兵士たちが現れた。

「ここは我が国の領土だ。侵入者は許さない」と言って、エドワーズと兵士たちに攻撃し始めた。

　ブルームとオカリナは隣国の兵士たちに助けられて、無事に国境を越えて、国王の住む宮殿へと連れていった。

　隣国の宮殿は壮麗で美しい建物だった。白い大理石でできており、金色の屋根や窓や扉が輝いていた。宮殿の周りには緑豊かな庭園が広がっており、色とりどりの花や木々が咲いていた。

　庭園には小さな池や噴水や彫像があり、水の音や鳥のさえずりが聞こえてきた。宮殿の中には豪華な調度品や絵画や宝石が飾られており、王様の富と権力を示していた。

　宮殿内には多くの人々が出入りしており、王族や貴族や官僚や兵士や使用人などが行き交い、活気に満ちていた。

　王子との謁見を許されて、ブルームとオカリナは広間へと案内された。玉座の王子は立ち上がり、ブルームに歩みよった。

「ブルーム隊長。私は君に感謝している。君がいなければ、私はもう死んでいたかもしれないからね｣

　ブルームは王子に跪き、頭を垂れた。

「お気遣いなく、王子殿下。私はただ任務に従っただけです。あの日、私がお助けしたのは、偶然です」と答えた。

＊＊＊

　あの日というのは、数ヶ月前のことだった。

　ブルームは騎士団の仲間と一緒に森の中を巡回していたときに、馬車がオーグに襲われているのを見つけた。人間よりも大きくて強くて凶暴な獣人たちは馬車をひっくり返して、中にいた人々を殺そうとしていた。

　ブルームは仲間に、
「あそこに馬車があるぞ。助けに行こう」
と言って、馬を走らせた。

　ブルームは馬車に近づいて、中にいた人々を見て驚いた。そこには隣国の王子がいたのだ。王子はオーグに捕まっていた。

　ブルームはすぐに剣を抜いて、オーグに向かって突撃した。オーグの背中や腕や足を切りつけて、王子を救出しようとした。オーグはブルームの攻撃に怒って、彼に一斉に反撃した。

　オーグはブルームの剣を受け止めて、彼を投げ飛ばした。ブルームは地面に落ちて深傷を負った。オーグはブルームに迫って殺そうとした。

　そのとき、騎士団の仲間たちが駆けつけてきた。彼らはブルームを助けて、オーグと戦った。

　彼らはオーグを数で圧倒して、倒した。彼らは王子を馬車から引き出して、安全な場所へ運んだ。

　王子は無事だったが、驚きと恐怖で震えていた。

　王子はブルームに
「ありがとう。君が私の命を救ってくれた。君の名前は何だい」
と尋ねた。

　ブルームは王子に「私はブルームと申します。騎士団長です」と答えた。

＊＊＊

　ブルームとオカリナは王子に、自分たちの身の上を話した。

　王子は彼らに同情して、
「あなた方は私の客人だ。私の国で自由に暮らしていい」
と言って、彼らに保護を与えた。

｢王子様、ありがとうございます｣

「ところで、あなた方は本当に無実なのか」と尋ねた。

　ブルームは王子に、
「はい。私たちは無実です」と答えた。

「それなら、あなた方は自分たちの無実を証明しなければいけないね。2週間後に、きみの国王が父に会いにわが国に来る。その時、きみの国王に直訴の機会を与えるよう、父に頼んでおくよ。あなた方はその日までに、真実を述べてほしい。我が国はその日にあなた方の運命を決めることにする。罪人を庇うことは、きみの国との関係を悪くさせるからね」
と言った。

　ブルームとオカリナは王子様に、

「ありがとうございます、殿下。私たちは必ず、自分たちの無実を証明します」

と言って、一礼した。