坂の上の帰り道

１

　小学校からの帰り道、赤いランドセルでミチルはいつもひとりで帰る。

　なぜかいうと、ミチルの家は他の子たちより違う道を通るから。
　他の子たちはほとんど団地に住んでいる。だが、ミチルはその逆の小高い丘の、森の中に住んでいる。
　森には、家が三軒しかなくて、しかもミチルの家は頂の方にある。だから、帰り道はひたすら坂をのぼらなくてはならない。
　しかも、三十分もずっと。けれど、のぼりきって、お手製のハチミツ入りの紅茶で、疲れは全部吹き飛んでしまう。

「ミチルの家には行けないよ」

　団地の友だちは口をそろえてそう言う。そして、誰も遊びに来てくれない。
　平べったい土地に建つ団地に住んでいるから、みんなの足ではきついと、ミチルは思っている。

　だけど、ミチルはぜんぜんさびしくない。

　手頃の石ころを見つけると、それをサッカーボールみたいにけりながら歩く。それに石ころは毎日顔も形も違うから、面白い。
　ゴツゴツした形、スベスベした丸っこい形、皿のように平べったい形。毎日どんな形の石ころに出会うのか、ミチルは楽しみでたまらない。

　時には坂道で転がってしまうが、それを上手くけりあげていくのも楽しい。