【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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私が4才の時、ルヴィラ王国のうす暗い宮殿の一室で、庶民出身の母がこの世を去った。

あまりにも急な出来事で、陰謀やらで誰かに毒を盛られたなんて、噂を立てられたくらいだった。

「お母様、私を置いていかないで…!」

泣きじゃくる私に、母は微笑みながら最後の言葉を残した。

「リリアナ、いつかきっと幸せになりなさい。それと、足元には気をつけて。」

え?足元?――そう思った瞬間、泣きながら後ずさった私は、見事に椅子にぶつかって転んだ。

それ以来、私の人生はちょっと転びがちになった気がする。


間もなくして、王である父が再婚した。

相手は隣国の由緒正しいライヴェル公爵家から来たという冷たい目の継母。

初めて会った時から、全身に「嫌な予感」という文字が走ったのを今でも覚えている。

「リリアナ、また泥遊び?まぁ、王女ともあろう者が、そんなみすぼらしい格好で恥ずかしいわね。」

――泥遊びじゃない!庭で転んだだけ!

私は心の中で叫んだが、口に出せるわけもなく、無言で彼女の前をやり過ごすのが精一杯だった。

「エリシア、そんなにぼんやりしてるとまた転ぶわよ。ああ、まあいいわ、あなたが泥まみれになったって私の知ったことじゃないもの」  

継母の言葉はいつもこんな感じだった。

言葉の刃が突き刺さるたびに、「どうしてこんな人が母親の代わりになったんだろう」って思ってしまう。

でも、そんな気持ちを抱え込むたびに母の声が頭の中で響くのだ。

「エリシア、強くなりなさい。あなたならできるわ。」

そう言われても、正直、強くなんてなれなかった。  

父も父で、昔から体調が悪く、宮廷内の政治にも巻き込まれっぱなしで、私に構っている暇なんてなかった。

それでもたまに、幼い私を膝の上に乗せてくれる時間があった。  

「エリシア、君が小さかった頃は…」
  
「今も小さいけど?」  

父の顔が苦笑いでくしゃっとなるのを見ると、少しだけ気が楽になった。

けど、その瞬間がすぐに終わることをわかっているのがつらい。  

継母とその取り巻きたちは、そんな私の小さな幸せさえ奪った。

例えば、私がほんの少し微笑んでいると、それを見つけて意地悪を言ってくるのだ。  

「エリシアったら、ほんとにかわいそうね。お母様がいたら、あなたももう少し人前に出せるような子に育ったかも知れないのに。」  

…どうしてそんなことを言うんだろう?

心がズキッとして、言葉が出なかった。  

そんな日々が続く中で、私は自分だけの時間を作ることに決めた。

夜、皆が眠った後にひっそりと庭に出て、星空を眺めるのが習慣になった。


16歳になった今も同じようにひとりで夜になると外に出て、冷たい夜風を感じながら空を見上げていた。  

「あの星、母上が見てるかな…」  

そんなふうに呟くと、不意に胸の奥が温かくなったり、逆に痛くなったりする。

それでも、星空だけが私を包み込んでくれるような気がして、ここにいるときだけは自由だった。  

けれども、そんな日々の中で、たまに誰かが私の背中をそっと押してくれる瞬間があった。

例えば、父の一言だったり、たまたま通りかかった庭師のおじさんが優しく「お嬢様、がんばってくださいね」って笑ってくれたり。  

「私、強くなれるのかな…?」  

正直、自信なんて全然なかった。

それでも、この宮廷で孤独と戦い続ける中で、どこかに希望がある気がしていた。

未来は、まだ見えないけど、きっとどこかに小さな光があると信じていたい。  

そして、その光が何か大きな出会いに繋がる予感がする日もあれば、ただ星空を眺めて終わる日もある。

それでも私は生きていくんだ。

そんなふうに思いながら、今日も庭に足を運ぶ。

いつか、この静かな夜が大きな物語の始まりになると信じて。  
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