【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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馬車の車輪がゆっくりと回り、私を新たな運命へと連れ去っていく音が、どこか心に響く。

隣国への旅路…なんて重々しい響きなんだろう。

だけど、実際に今こうして馬車に揺られている自分を見ていると、不思議と現実感がない。

まるで誰かが私を本の中の主人公にしたみたいだ。

窓から外を見れば、広がるのは果てしない草原。

風にそよぐ草の波が、まるで私に「頑張れよ」と囁いているようだ。

いや、草に励まされるなんて、自分でも相当な精神状態だと思う。

「私が隣国に行って、本当にうまくやれるのかな…」  

ポツリと呟くと、前の座席に腰かけていた護衛騎士がちらりとこちらを見た。

彼は短く「大丈夫ですよ、姫様」とだけ言ったけど、その表情には「まあ、俺には関係ないけど」感が滲んでいた。

ありがとう、でもそこまで冷たくしなくてもいいのにね。

***

馬車の中はそれなりに快適だった。

ふかふかのクッションに、ちょっとだけ甘い香りのする絹のカーテン。

これがなければ、さすがにこの長旅も耐えられないだろう。  

だけど快適すぎると、それはそれで考え事が進んでしまう。  

「隣国の王子様って、どんな人なんだろう…」  

そう思った瞬間、頭に浮かんだのは、義理の姉妹たちが日頃から吹き込んでいたゴシップの数々だった。  

「ねえ聞いた?隣国の王子って、超絶イケメンらしいわよ!」  

「でもね、ものすごく冷酷なんだって!召使いにすぐ怒鳴り散らすとか。」  

「それに、昔の婚約者を泣かせたとか…」  

どれも信じたくない話ばかりだけど、私が今向かっているのは、まさにその王子のもと。

胸がぎゅっと締め付けられる。

もし、噂通りの人だったら…いや、考えたくない!  

「まあ、どうにかなるよね。」  

自分に言い聞かせるように呟いたけれど、心の中は嵐のようだ。

***

ふと窓から外を見ると、遠くに小さな村が見えてきた。

煙がのぼる家々の屋根。

牧草地でのんびり草を食べる牛や羊たち。

そんな風景が、少しだけ私の心を和らげてくれた。  

「姫様、少し休憩されますか?」  

護衛騎士が声をかけてくれた。

彼の言葉に甘えて、私は馬車から降りることにした。

地面に足をつけた瞬間、思ったより硬い土の感触に驚いた。

宮殿の庭はいつも柔らかい芝生だったから、なんだか新鮮だった。  

「外の空気、気持ちいいなあ。」 
 
深呼吸すると、風に乗って運ばれてきたのは草と花の香り。

これが旅の醍醐味ってやつかな、なんて少しだけ気分が軽くなった。

***

休憩の後、馬車に戻ると、今度は少しだけ意識を変えてみることにした。

どうせ逃げられない運命なら、少しでも前向きに考えた方がいいし。  

「私がこんな状況になったのは運命。きっと、何か意味があるはずだよね。」  

そう思いながら窓の外を眺めると、さっきよりも少しだけ風景が輝いて見えた気がする。

王子様との結婚がどんなものになるのかは分からないけれど、せめて私は私らしく。

そう、エリシアとして胸を張って生きていこう。

そんな風に思った。

いや、そう思うしかないよね!

馬車の中で、ふわっと笑みを浮かべた私。

少しだけ、未来が楽しみになった気がした。
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