【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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隣国の宮廷に到着した瞬間、私は息を呑んだ。

目の前に広がるのは、金と白で輝く大理石の宮殿。

柱には美しい彫刻が施されていて、まるで夢の中の景色みたいだった。

だけど、その煌びやかさに呑まれそうな気分もあって、馬車の中でこっそり深呼吸をした。

落ち着け、エリシア。

ここで小娘っぽい態度を見せたら、継母や義理の姉妹たちに笑われちゃう。  

「姫様、ご到着です。」  

護衛騎士が扉を開けると、まばゆい日差しが差し込んできた。

私はそっとドレスの裾を直し、馬車から降りる。うん、これで一応お姫様っぽく見える…かな?  

***

「ようこそ隣国へ、エリシア姫。」
  
宮廷の使用人たちが並んでお辞儀をする中、一人の女性が近づいてきた。

年配の侍女らしき彼女の目は、優しげだけどどこか鋭いものがある。

きっとこれからの私の行動を全部チェックする気なんだわ。

ああ、緊張する…。  

「お疲れでしょう。すぐにお部屋をご用意しましたので、どうぞお休みくださいませ。」  

彼女の言葉に頷きながら、私は宮殿の中へと足を踏み入れる。

内部は外以上に豪華で、壁一面に美しいタペストリーが飾られていた。

天井には大きなシャンデリアが煌めき、まるで星空のようだった。

でも、そんな美しさも私の胸の中の不安を消してくれるわけじゃない。  

「本当にここでやっていけるのかな…」  

思わず呟いたその声が、廊下の静けさに響いてしまった。

***

案内された部屋は広くて立派だった。

窓の外には手入れの行き届いた庭園が広がっていて、色とりどりの花が咲き乱れている。

私は大きな鏡の前に立ち、自分の姿をじっと見つめた。  

淡いピンクのドレスに身を包んだ自分が、まるで他人みたいに見える。

昔の私なら、こんなに華やかな服を着るなんて夢にも思わなかった。

それが今や…  

「身代わりの花嫁、ね。」  

鏡越しに自分に微笑んでみるけれど、その笑みはどこかぎこちなかった。

***

結婚式の準備が始まったのは、その翌日だった。

部屋に次々と入ってくる侍女たちが、あれこれと服や髪型について指示を出してくる。  

「姫様、このティアラはいかがですか?」  

「こちらのドレスの色が王宮のテーマに合いますわ。」  

彼女たちの言葉を聞きながら、私は何度も頷いた。

だけど内心では、緊張で頭が真っ白だった。

だって、これってつまり…本当に結婚するってことだよね?  

「はあ…」  

思わずため息が漏れる。

すると、近くにいた侍女の一人が不安げに私を見た。  

「姫様、大丈夫ですか?」  

「あ、ええ、大丈夫よ。ただちょっと…あの、考え事をしていただけ。」
  
微笑んでみせたけれど、その表情が引きつっていたのは自分でも分かった。

***

午後になると、結婚式のリハーサルが始まった。

広間に通され、私は王子と並んで歩く練習をさせられる。

王子はまだ来ていないけれど、侍女たちが「この位置です」と私を歩かせるたび、心臓がドキドキして仕方がない。

「こんなに緊張してたら、本番で倒れちゃうかも。」  

自分の声が小さく震えていたのが分かった。

だけど、そんな私の様子に気付いた侍女の一人が、こっそり耳打ちしてきた。  

「姫様、笑顔です。どんな時でも笑顔でいれば、大丈夫ですよ。」  

「…ありがとう。」  

その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。

笑顔ね。

うん、頑張ろう。

自分らしく、笑顔でこの運命を受け入れるんだ。

***

夜、広いベッドに横になりながら、私は窓の外の星空を見上げた。

明日はとうとう結婚式の日。

まだ見ぬ王子との新しい生活が始まる。  

「どんな人なんだろう…」  

王子の顔を知らないまま結婚するなんて、本当に不思議な気分だ。

でも、これが私の運命。

そう思えば、少しだけ気持ちが楽になった。  

「きっと、大丈夫だよね。」  

自分にそう言い聞かせながら、私はそっと目を閉じた。
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