【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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王宮での新生活が始まって数日。

これほど華やかな場所が、これほど冷たいものだとは思ってもみなかった。  

「ねえ、新しい王太子妃さまってさ、本命の王女様の身代わりで来たんでしょ?」  

廊下を歩いていると、聞こえてくるのはそんなささやき声ばかり。

近くを通りかかるたびに、わざとらしく口を覆って笑う侍女たちの姿が目に入る。  

「まあまあ、王女だってきどってるけど、きっと庶民に毛が生えてるくらいって話よ。きっとティーカップの持ち方も知らないんじゃない?」  

そんな言葉が背後から飛んでくるたび、胸がズキズキ痛む。  

でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。

私は振り返らずに歩き続けた。

いや、実際には「歩き続けた風」を装っていただけで、内心は「ああ、やっぱり戻りたい……」と叫んでいた。  

***

レオニードとの距離も、これまた寒々しいものだった。

朝の食事も、昼の謁見も、彼と目が合うことなんてほとんどない。

そもそも、彼が視線を合わせる気がない。  

食事の席で、彼はいつも私に一言だけ話しかけてくる。  

「食べているか?」  

その冷ややかな声に、私は思わず笑顔を貼り付ける。  

「ええ、とても美味しいですわ。」
  
でも、内心ではツッコんでいる。  

(どうせ私が何を答えたって興味ないくせに!)  

彼はそれ以上言葉を続けることなく、あっさりと視線を逸らす。

せっかくの食事も、味がわからなくなるほど気まずい雰囲気に包まれるばかりだ。  

***

しかし、そんな孤独な日々の中でも、少しずつ私の心を癒してくれる存在が現れた。

それは、王宮の下働きの人たちだった。  

「王太子妃さま、お掃除道具を運ぶのを手伝ってもらえませんか?」  

ある日、そんなお茶目なお願いをされたとき、私はすぐに快く引き受けた。

すると、彼らは目を丸くして驚いた表情を浮かべた。  

「まさか、こんなことまでしてくださるなんて……!」  

「何言ってるの、頼まれたら断れない性分なのよ。」  

私は笑って答えたけど、本当は自分でもびっくりしていた。

誰かに頼られるのが、こんなに嬉しいなんて。  

***

その日から、私は少しずつ下働きの人たちと打ち解けていった。

彼らの仕事を手伝うたびに、彼らの優しさや温かさに触れることができたからだ。  

「王太子妃さま、ここの拭き方はこうです。ほら、こうやって。」  

「へえ、なるほど。さすがプロね。」  

そんな会話が増えるたび、少しずつ心が軽くなっていくのを感じた。  

でも、そんな私の行動が、ある日レオニードの耳に入ったらしい。  

***

夜、いつものように冷え切った空気の中、彼がぽつりと言った。  

「君が侍女たちと掃除をしていると聞いたが、本当か?」  

その声には、ほんの少しの苛立ちが混ざっているように聞こえた。

私は、彼の視線を真っ直ぐに見返した。  

「ええ、本当ですわ。」  

「なぜそんなことをする?」  

「なぜって……彼らが頼んできたからです。それに、私も楽しいですから。」  

その言葉に、彼はほんの少し眉をひそめた。

でも、何も言い返してこない。

その代わりに、何かを言いたげな表情で私を見つめていた。  

***

その夜、私はベッドに入ってからも彼の言葉を思い返していた。

彼は何を考えているんだろう?

冷たい態度の裏に、少しだけ優しさが隠れているように見えたのは、私の気のせいだったのかな?  

「まあ、いいわ。形だけの夫婦でも、私たちが少しでも近づけるなら、それでいい。」  

そう自分に言い聞かせながら、眠りについた。  
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