【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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今日は宮廷で大きな行事がある日。

あぁ、もう、どうしてこんなに緊張するんだろう。

別に私が何か大事な役割を果たすわけでもないんだけど、周りがすごく華やかで、つい気後れしちゃう。

宮廷の雰囲気って、どうしてこんなにピリッとしてるんだろう?

いつもより気を使うし、なんだか肩が凝っちゃう。

「王太子妃様、少し背筋を伸ばしたほうがいいですよ。」  

背後からベテラン侍女の言葉が響く。

いつも厳しいことを言ってくるけど、この日はなぜかちょっと優しげに見えた。

でも、内心はドキドキしている自分がいる。

私は精一杯笑顔を作ることに集中しながら、宮廷の広間に向かって歩き出す。

中に入ると、華やかな衣装を着た貴族たちが集まっていて、まるで一つの大きな舞踏会のようだ。

誰もが他人の服装や振る舞いを気にしながら歩いている。

私はというと、あまり目立たないようにひっそりと歩いていたけれど、ふと顔を上げると、レオニードが遠くに立っているのを見つけてしまう。

あ、やっぱり。

彼、すごく冷たい顔をしてる…。

レオニードはいつものように、周りの誰とも関わろうとせず、ただ静かに立っている。

その冷たい視線が私にピタリと重なった瞬間、思わず息が詰まる。

あんなに冷たい目で見られたら、私だって凍りつきそうになる。

「…そんな顔して、何を考えてるのかしら?」  

心の中でつぶやいてみるけど、もちろん彼がそんな私の思いに答えるわけもなく、無言で視線を外した。

あぁ、またこれか…。

でも、そんな彼に傷ついている自分が、少しだけ情けなくなる。

どうして私、こんなに冷たいレオニードに気を使っちゃうんだろう?

…いや、答えはわかってる。

私は彼に少しでも振り向いてもらいたくて、無意識に彼の態度を気にしてしまうんだろうな。

でも、私は笑顔を忘れちゃいけないんだ。

周りの目もあるし、あくまで“形だけでも”はしっかりしないと、後で何を言われるかわからない。

そう、だから、少しだけ深呼吸をして、もう一度顔を上げる。

周りの人々に微笑みかけると、なんだかホッとした気持ちになる。

だって、私は“しっかり”しなくちゃいけないんだから。

笑顔が大事だよね。

「お、エリシア王太子妃様。今日は素晴らしいお美しさですね。」  

突然、隣にいた貴族が声をかけてきた。

その褒め言葉を素直に受け取る自分がちょっと恥ずかしくなるけれど、どうしてもその笑顔を作るのは、私ができる精一杯のことだから。

「ありがとう。今日は楽しんでくださいね。」  

私はさらに笑顔を広げる。

ほんの少しだけ気持ちが楽になった気がした。

でも、目の前にいるレオニードの冷たい視線が、どこか遠くに感じてしまう。

彼の視線を感じるたびに、胸が痛くなるけれど、私はまたその痛みに耐えて笑顔を作り続けた。

一方で、レオニードは私が笑顔を作っていることに気づいているのか、ほんの少しだけ眉をひそめた。

その微妙な変化を私は見逃さなかった。

少なくとも、何かを考えているってことだよね?それとも、ただの気まぐれ?

「ああ、レオニード…。どうして、こんなに冷たいのかな?」  

心の中で呟きながらも、私は笑顔を崩さないように努力する。

でも、やっぱり胸の奥がしんと冷たくなるのを感じるんだ。

「…もしかしたら、私の笑顔なんて、彼には届いてないのかな?」  

そう思うと、ちょっとだけ心が寂しくなって、でも、また一つ大きく深呼吸して、顔を上げる。

私は今日も笑顔でいると決めたんだから。

そのまま、行事は淡々と進み、私も彼に振り向いてもらうことなく、なんとか無事に終了する。


帰り際、少しだけ彼と目が合う。

すぐに彼の視線は私から離れるけれど、今度はその冷たさの中に、少しだけ不思議な感情が混じっているように見える。

…でも、それがどうしたの?

私はただ、彼の態度に耐えて、笑顔を絶やさないようにし続けるだけなんだよね。

だって、私にはそれしかできないから。

こんなに冷たくされても、それを無視して笑顔を絶やさない私を、いつか彼がどう思ってくれるのか、期待しながら。

だって、私はこれからも、笑顔を絶やさずに、彼を少しずつ振り向かせてみせるんだから。
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