11 / 40
(11)
しおりを挟む
今日は宮廷で大きな行事がある日。
あぁ、もう、どうしてこんなに緊張するんだろう。
別に私が何か大事な役割を果たすわけでもないんだけど、周りがすごく華やかで、つい気後れしちゃう。
宮廷の雰囲気って、どうしてこんなにピリッとしてるんだろう?
いつもより気を使うし、なんだか肩が凝っちゃう。
「王太子妃様、少し背筋を伸ばしたほうがいいですよ。」
背後からベテラン侍女の言葉が響く。
いつも厳しいことを言ってくるけど、この日はなぜかちょっと優しげに見えた。
でも、内心はドキドキしている自分がいる。
私は精一杯笑顔を作ることに集中しながら、宮廷の広間に向かって歩き出す。
中に入ると、華やかな衣装を着た貴族たちが集まっていて、まるで一つの大きな舞踏会のようだ。
誰もが他人の服装や振る舞いを気にしながら歩いている。
私はというと、あまり目立たないようにひっそりと歩いていたけれど、ふと顔を上げると、レオニードが遠くに立っているのを見つけてしまう。
あ、やっぱり。
彼、すごく冷たい顔をしてる…。
レオニードはいつものように、周りの誰とも関わろうとせず、ただ静かに立っている。
その冷たい視線が私にピタリと重なった瞬間、思わず息が詰まる。
あんなに冷たい目で見られたら、私だって凍りつきそうになる。
「…そんな顔して、何を考えてるのかしら?」
心の中でつぶやいてみるけど、もちろん彼がそんな私の思いに答えるわけもなく、無言で視線を外した。
あぁ、またこれか…。
でも、そんな彼に傷ついている自分が、少しだけ情けなくなる。
どうして私、こんなに冷たいレオニードに気を使っちゃうんだろう?
…いや、答えはわかってる。
私は彼に少しでも振り向いてもらいたくて、無意識に彼の態度を気にしてしまうんだろうな。
でも、私は笑顔を忘れちゃいけないんだ。
周りの目もあるし、あくまで“形だけでも”はしっかりしないと、後で何を言われるかわからない。
そう、だから、少しだけ深呼吸をして、もう一度顔を上げる。
周りの人々に微笑みかけると、なんだかホッとした気持ちになる。
だって、私は“しっかり”しなくちゃいけないんだから。
笑顔が大事だよね。
「お、エリシア王太子妃様。今日は素晴らしいお美しさですね。」
突然、隣にいた貴族が声をかけてきた。
その褒め言葉を素直に受け取る自分がちょっと恥ずかしくなるけれど、どうしてもその笑顔を作るのは、私ができる精一杯のことだから。
「ありがとう。今日は楽しんでくださいね。」
私はさらに笑顔を広げる。
ほんの少しだけ気持ちが楽になった気がした。
でも、目の前にいるレオニードの冷たい視線が、どこか遠くに感じてしまう。
彼の視線を感じるたびに、胸が痛くなるけれど、私はまたその痛みに耐えて笑顔を作り続けた。
一方で、レオニードは私が笑顔を作っていることに気づいているのか、ほんの少しだけ眉をひそめた。
その微妙な変化を私は見逃さなかった。
少なくとも、何かを考えているってことだよね?それとも、ただの気まぐれ?
「ああ、レオニード…。どうして、こんなに冷たいのかな?」
心の中で呟きながらも、私は笑顔を崩さないように努力する。
でも、やっぱり胸の奥がしんと冷たくなるのを感じるんだ。
「…もしかしたら、私の笑顔なんて、彼には届いてないのかな?」
そう思うと、ちょっとだけ心が寂しくなって、でも、また一つ大きく深呼吸して、顔を上げる。
私は今日も笑顔でいると決めたんだから。
そのまま、行事は淡々と進み、私も彼に振り向いてもらうことなく、なんとか無事に終了する。
帰り際、少しだけ彼と目が合う。
すぐに彼の視線は私から離れるけれど、今度はその冷たさの中に、少しだけ不思議な感情が混じっているように見える。
…でも、それがどうしたの?
私はただ、彼の態度に耐えて、笑顔を絶やさないようにし続けるだけなんだよね。
だって、私にはそれしかできないから。
こんなに冷たくされても、それを無視して笑顔を絶やさない私を、いつか彼がどう思ってくれるのか、期待しながら。
だって、私はこれからも、笑顔を絶やさずに、彼を少しずつ振り向かせてみせるんだから。
あぁ、もう、どうしてこんなに緊張するんだろう。
別に私が何か大事な役割を果たすわけでもないんだけど、周りがすごく華やかで、つい気後れしちゃう。
宮廷の雰囲気って、どうしてこんなにピリッとしてるんだろう?
いつもより気を使うし、なんだか肩が凝っちゃう。
「王太子妃様、少し背筋を伸ばしたほうがいいですよ。」
背後からベテラン侍女の言葉が響く。
いつも厳しいことを言ってくるけど、この日はなぜかちょっと優しげに見えた。
でも、内心はドキドキしている自分がいる。
私は精一杯笑顔を作ることに集中しながら、宮廷の広間に向かって歩き出す。
中に入ると、華やかな衣装を着た貴族たちが集まっていて、まるで一つの大きな舞踏会のようだ。
誰もが他人の服装や振る舞いを気にしながら歩いている。
私はというと、あまり目立たないようにひっそりと歩いていたけれど、ふと顔を上げると、レオニードが遠くに立っているのを見つけてしまう。
あ、やっぱり。
彼、すごく冷たい顔をしてる…。
レオニードはいつものように、周りの誰とも関わろうとせず、ただ静かに立っている。
その冷たい視線が私にピタリと重なった瞬間、思わず息が詰まる。
あんなに冷たい目で見られたら、私だって凍りつきそうになる。
「…そんな顔して、何を考えてるのかしら?」
心の中でつぶやいてみるけど、もちろん彼がそんな私の思いに答えるわけもなく、無言で視線を外した。
あぁ、またこれか…。
でも、そんな彼に傷ついている自分が、少しだけ情けなくなる。
どうして私、こんなに冷たいレオニードに気を使っちゃうんだろう?
…いや、答えはわかってる。
私は彼に少しでも振り向いてもらいたくて、無意識に彼の態度を気にしてしまうんだろうな。
でも、私は笑顔を忘れちゃいけないんだ。
周りの目もあるし、あくまで“形だけでも”はしっかりしないと、後で何を言われるかわからない。
そう、だから、少しだけ深呼吸をして、もう一度顔を上げる。
周りの人々に微笑みかけると、なんだかホッとした気持ちになる。
だって、私は“しっかり”しなくちゃいけないんだから。
笑顔が大事だよね。
「お、エリシア王太子妃様。今日は素晴らしいお美しさですね。」
突然、隣にいた貴族が声をかけてきた。
その褒め言葉を素直に受け取る自分がちょっと恥ずかしくなるけれど、どうしてもその笑顔を作るのは、私ができる精一杯のことだから。
「ありがとう。今日は楽しんでくださいね。」
私はさらに笑顔を広げる。
ほんの少しだけ気持ちが楽になった気がした。
でも、目の前にいるレオニードの冷たい視線が、どこか遠くに感じてしまう。
彼の視線を感じるたびに、胸が痛くなるけれど、私はまたその痛みに耐えて笑顔を作り続けた。
一方で、レオニードは私が笑顔を作っていることに気づいているのか、ほんの少しだけ眉をひそめた。
その微妙な変化を私は見逃さなかった。
少なくとも、何かを考えているってことだよね?それとも、ただの気まぐれ?
「ああ、レオニード…。どうして、こんなに冷たいのかな?」
心の中で呟きながらも、私は笑顔を崩さないように努力する。
でも、やっぱり胸の奥がしんと冷たくなるのを感じるんだ。
「…もしかしたら、私の笑顔なんて、彼には届いてないのかな?」
そう思うと、ちょっとだけ心が寂しくなって、でも、また一つ大きく深呼吸して、顔を上げる。
私は今日も笑顔でいると決めたんだから。
そのまま、行事は淡々と進み、私も彼に振り向いてもらうことなく、なんとか無事に終了する。
帰り際、少しだけ彼と目が合う。
すぐに彼の視線は私から離れるけれど、今度はその冷たさの中に、少しだけ不思議な感情が混じっているように見える。
…でも、それがどうしたの?
私はただ、彼の態度に耐えて、笑顔を絶やさないようにし続けるだけなんだよね。
だって、私にはそれしかできないから。
こんなに冷たくされても、それを無視して笑顔を絶やさない私を、いつか彼がどう思ってくれるのか、期待しながら。
だって、私はこれからも、笑顔を絶やさずに、彼を少しずつ振り向かせてみせるんだから。
6
あなたにおすすめの小説
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。
侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい
花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。
ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。
あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…?
ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの??
そして婚約破棄はどうなるの???
ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
捨てられ令嬢は騎士団長に拾われ、いつのまにか国を救って溺愛されてました ~「地味で役立たず」と婚約破棄された私が、最強騎士様の唯一無二の光に
放浪人
恋愛
伯爵令嬢エレオノーラは、婚約者であるアルフォンス王子から「地味で役立たず」と罵られ、夜会の中、一方的に婚約破棄を告げられる。新たな婚約者として紹介されたのは、王子の寵愛を受ける派手好きな公爵令嬢だった。
絶望と屈辱の中、エレオノーラを庇ったのは、王宮騎士団長カイウス・ヴァレリアス。彼は冷静沈着で近寄りがたいと噂されるが、エレオノーラの隠れた才能と優しさを見抜いていた。
実家からも冷遇され、辺境の叔母の元へ身を寄せたエレオノーラは、そこで薬草の知識を活かし、村人たちの信頼を得ていく。偶然(?)辺境を訪れていたカイウスとの距離も縮まり、二人は次第に惹かれ合う。
しかし、元婚約者の横暴や隣国との戦争の危機が、二人の穏やかな日々を脅かす。エレオノーラはカイウスと共に困難に立ち向かい、その過程で自身の真の力に目覚めていく。
完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる