【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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「大丈夫よ。お料理のお皿をちょうだいな」  

私は何気なく手を伸ばして、食堂の隅でお昼の配膳を手伝っている下働きの女性に笑顔を向けた。

その笑顔に彼女もふっと安心したのか、ほっとした表情を浮かべて、私に小さな皿を差し出してくれる。 
 
「いつもありがとうございます。体、無理しないでくださいね。」  

私はその一言をかけながら、少しだけ食器を整える。

どうしてこう、私は下働きの人たちが気になるのかな? 

彼らも大切な宮廷の一員なのに、どうしてか他の貴族たちはすぐに冷たい態度を取ったり、無視したりする。

私はそんな態度がどうしても許せなくて、できる限り優しく接しようと心がけている。

でも、まったくそれが当たり前だとは思っていない。

たとえ誰であろうと、心を込めて接することが大事だと思うから。

「うん、よくやってるな、エリシア。」  

背後から、そんな声がかかった。

私はハッとして振り向くと、そこにはレオニードが立っていた。

…あれ? いつの間にそこに?

「レオニード…王太子?」  

私の声が少し驚きに震える。

その顔は冷たく見えたけど、私は無理して笑顔を作る。

心の中では、もうちょっと落ち着いて話さなきゃと思っているけれど、なぜか少しドキドキしてしまう。

「君がこうやって下働きの者たちに気を使っているのを見るのは、意外だな。」  

彼の声はいつも通り冷たく響くけれど、私の目をじっと見つめているその瞳には、何かが宿っているような気がして、ちょっと胸が高鳴る。

「…え?」  

私がそう答えると、レオニードはちょっと驚いたような顔をして、少しだけ眉をひそめる。

その様子がまた不思議で、私は何度も彼の顔を見つめてしまう。  

「仕える者たちに気を使っている姿、上に立つ者として感心だな」  

彼はちょっと意味深に言った後、少しだけ目を逸らす。

その瞬間、私の心の中で何かがプチッと音を立てて弾けたような気がした。

レオニードがこんな風に私に関心を示すなんて、想像していなかった。

でも、その言葉にはどこか私を見つめる真剣さがあって、少しだけ胸が温かくなる。

「まあ、私は…ただ、できるだけみんなに優しくしたいだけですよ。」  

私はそう言いながら、軽く笑いながら頭をかいてみせる。

でも、ちょっとだけ照れくさくて、視線が彼の目から逃げる。

すると、レオニードは一瞬驚いたような顔をして、それから少しだけ眉を寄せた。  

「…それは本気で言っているのか?」
  
その問いに、私は少し自信を持って頷く。  

「もちろんです。私はみんなが仲良く過ごせるように、ちょっとしたことでも気を使おうと思っているんです。」
  
こう言って、私はまた笑顔を向けた。
  
「そんなことで、私が何か得をしようなんて思っていません。みんなが笑顔でいられるのが、一番幸せだと思いますから。」

レオニードが黙って私の言葉を聞いた後、少しの間、私をじっと見つめる。

その視線には、何か考え込んでいるような様子が見える。  

「…そうか。」  

彼はそう言って、ふっと息を吐く。

私にはその表情が少し不思議で、でもどこか新しい一面を見たような気がした。

その時、私は不意に彼の瞳がほんの少し柔らかく見えたような気がした。

でも、それがほんの一瞬のことで、すぐにまた冷たい表情に戻るのが、いつものレオニードの特徴だ。  

「でも…」  

レオニードがついに口を開く。
  
「君が下働きの者たちに優しく接するのは、君らしいと言えば、君らしいな。」  

その言葉がなんだかちょっと嬉しくて、私の顔に自然と笑みが広がる。

「ありがとうございます。」  

私がにっこりと答えると、彼の顔にほんの少しだけ、思案するような表情が浮かぶ。  

「でも、注意してほしい。あまりにも過度に世話を焼くのも、逆に彼らを甘やかすことになるからな。」  

その冷静な忠告を受けて、私はしばらく黙って考える。

確かに、そういう面もあるかもしれないけれど、私はそんなことを気にしていても、心が通じ合わない気がして仕方ない。

「わかりました。でも、私のやり方でやってみます。」  

少しだけ頭を下げると、レオニードは静かに頷いた。

その後、私は何気なく食堂の片隅で働いている兵士たちと少し言葉を交わしたり、他の下働きの人たちとも自然に話をしたりして、楽しく過ごしていた。

最初はちょっとだけ緊張していたけれど、周りの人たちの表情が柔らかくなっていくのを見ていると、なんだか嬉しくなってきた。

そして、ふと気づくと、レオニードが遠くからこちらをじっと見つめているのが見えた。  

…あれ? さっきからなんだか、目線が私に向けられている気がする。

もしかして、さっきの会話が気になったのかな?

でも、私はそんなことは気にせず、また下働きの人たちと笑顔を交わしていた。

それだけで、何だか心が満たされるから。
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