【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

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宮廷図書館。    

私にとっては、ここが静かな逃げ場だった。

宮廷内の喧騒や、冷たい視線を避けるために、よくここに来る。

今日は、何気なく手に取った書物に没頭していた。

ページをめくる音だけが響く、心地よい静けさ。  

「ふう…やっぱり本はいいなあ。」  

私は本を読みながら、思わず小さなため息をつく。

普段はあまり自分の感情を表に出さないようにしているけれど、この図書館の中では心が落ち着く。

文字の世界にすっかり浸っていると、目の前にひとりの人物が現れるのに気づいた。  

「……レオニード?」  

その人は、驚いたことに、私の前に立っていたのだ。

レオニードが私を見下ろしている。

どうやら私の姿を見つけて、ふらっと寄ってきたようだ。  

「お前、こんなところで何してる?」

  
彼の声には、少し不思議そうな響きがあった。

あれ? 何か変だな、と思って顔を上げると、レオニードが無表情でじっと私を見つめている。

「…本を読んでいるだけですが?」  

私は思わず呆れたように言ってしまう。

だって、普通本を読んでいるだけでそんなに驚かれないはずでしょ。

でも、レオニードの目が、ちょっと真剣に私を見ているのが分かる。

その瞳の奥に、何かが変わった気配を感じる。  

「…本か。」  

レオニードが少しだけ呟いて、少し顔をしかめた。  

「お前、そういうの好きなのか。」  

「もちろん。読書は…まあ、趣味ってわけじゃないけど、落ち着くから。」  

その言葉を聞いた彼は、また少し黙った後、無言で席を隣に取って腰を下ろした。  

「お前、本当に変わってるな。」  

「変わってる?」  

私は、少し驚きながらも、つい口をとがらせてみる。

すると、レオニードは冷たく見えていた表情を少しだけ緩め、軽く笑って答える。  

「うん。お前、見た目と違って結構深いところに行ってるよな。」  

その言葉に、私はほんのり照れくさい気持ちになる。  

「見た目? それってどういう意味?」  

「…お前、普通はただの奥ゆかしいお嬢様だと思ってた。」  

「うーん、それも少し違うけど。」  

私は苦笑いを浮かべる。

その言葉が心にひっかかるけれど、何となくそんなことを言われたことが嬉しくて、ちょっと顔が熱くなった。  

レオニードが私を見ている目が、少し柔らかくなったように感じる。  

「でも、知性があるって、意外だな。」  

彼は照れくさい笑みを浮かべながら、言った。  

「う、うるさいです。」  

私は本をちょっと持ち上げて、それを見せつけるようにして言う。

少し突き放してみたけれど、どこか嬉しい気持ちも混じっている。  

でも、そんなことをしていると、レオニードがふっと顔を近づけてきて、私の顔をじっと見る。  

「……本当に、本を読むの好きなんだな。」  

その目の前で、レオニードが微笑みかける。

その微笑みが、少し照れくさかったけれど、どこか安心するような温かさもあった。  

「はい。だって…こうやって本を読んでいると、色んな世界が広がる感じがして。すごく…面白いから。」  

「お前がそんなに本を読むって、意外だな。」  

その言葉に、私はちょっとだけ不満そうに眉をひそめる。  

「そう思うなら、もっと本を読めばいいじゃないですか。」  

「……それもそうだな。」  

レオニードがふっと笑って、頷く。  

その顔が、なんだか可愛く見えてしまう。

え、ちょっと待って。

可愛いって…私、今何を言っているのよ?

しばらく黙っていると、レオニードが目を細めて、私に言う。  

「お前が何を考えてるのか、ちょっとだけ分かってきた気がする。」  

「え?」  

私は目を大きく開けて、驚きながら言う。彼が何を言いたいのか全然分からない。  

「本を読んでるってことは、お前は何かを探してるんだろ。」  

その言葉に、私はちょっと驚くけれど、すぐに少し照れながら答える。 
 
「まあ、そうかもしれないね。でも、探してるのはちょっと違うかも。」  

「違う?」  

レオニードが不思議そうに聞くと、私はちょっとだけ口元を緩めて言う。  

「うん。何かを探しているんじゃなくて、何かを感じたくて読んでいるのかも。」  

その言葉を聞いたレオニードは、ちょっとだけ黙ってしまう。

その静かな空気が、少し心地よく感じる。

ふと、私は本を閉じて立ち上がると、レオニードが黙って私を見ていた。

その顔を見て、私はまた照れくさくなり、つい顔を隠すようにして笑ってしまった。

「じゃあ、私はもう行きます。今日も色々とありがとうございます。」  

「お前、行っちゃうのか?」  

「うん、ちょっと休憩終わりなので。」  

レオニードが肩をすくめながら言う。
  
「また来いよ。」  

その言葉を聞いて、私はふと心が温かくなる。  

「は、はい、また、おねがいします」  

そして、少しだけ後ろを振り返ると、レオニードが私を見送ってくれていた。

今日、私はまた少しだけレオニードに近づけた気がした。

そして、少しだけ彼がどんな人なのか、知ることができた気がして…なんだか、ちょっとだけ嬉しかった。
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