【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい

文字の大きさ
22 / 40

(22)

最近、なんだか気配が変わった。

宮廷内で目立つようになったわけでもないのに、周りが妙に私に気を使っているようにも、見張られているようにも感じる。

侍女たちの視線や、やたらと耳に入ってくる不審者発見の噂話、どう考えてもただの偶然ではない気がする。

そんなある日、レオニードと一緒に歩いている時に彼が言った。

「最近、お前の周り、少し騒がしくないか?」  

ああ、やっぱり彼も気づいていたんだ…!  

私は少しドキっとしながら、慌てて答える。  

「そ、そんなことないよ。多分、気のせいじゃないかな?」  

「気のせいで済むほど、宮廷の空気は軽くない。」  

レオニードの目が鋭くなる。

ああ、彼の冷徹な目って本当に鋭い…でも、それに見守られている感じが、何だか安心するんだよね。

でも、レオニードも心配してくれてるのに、私はどうしても放っておけなかった。

宮廷内で進行中の陰謀、正体を暴かれそうになっている私、そんな状況がいつまでも続くわけがない。

その晩、私は侍女たちに少しだけ耳打ちしてみた。

「ねえ、最近変なことが起こっているとか、何か知らない?」  

「お姫様、どうしてそんなことを?」
  
リリーという侍女が眉をひそめながら問いかけてきたけれど、私は軽く肩をすくめる。  

「ただの気まぐれよ、ちょっとだけ話をしてみたくなっただけ。」   

リリーは少し考え込んだ後、周囲を見回してから低い声で言った。  

「お姫様、最近、宮廷内で何か不穏な動きがあるという話を聞きました。特にお姫様に関わることで…」  

私の胸がドキっとする。やっぱり、そうなんだ…。

その夜、私は宮廷の暗い廊下で、他の侍女たちとも何度か情報交換をした。

みんな、普段はおとなしいけれど、気づいたことをこっそり教えてくれる。

彼女たちの目が光るように鋭くなるのが、なんだか頼もしい。  

「姫様、気をつけてください。誰かがあなたの動向を監視しているという話を耳にしました。」  

「監視?」  

「はい、どうやら、お姫様の正体を暴こうとする者がいるようです。」  

その言葉を聞いて、私の心臓が早鐘を打つようにドクドクと音を立てた。

もし私の母が庶民の貧しい出身だなんて知れたら、証拠なんて見つけられたら、王家に相応しくないと言われるかも…。

なにより血統を重んじる王家では大スキャンダル、クーデターの引き金にもなりかねないし。

私は口元をぎゅっと結びながら、深呼吸をする。

でも、ここで引き下がっても意味がない。 

私は確信している。

私には、レオニードの力に頼るだけではなく、自分の力で何とかしなくてはならない時が来るって。

自分のことを守るために、少しずつ動き始める時が。

その後、数日間に渡り、私は侍女たちとこっそり情報を集める日々が続いた。

毎晩遅く、宮廷の裏通路を歩きながら、時折目を光らせては、耳を澄ましては新しい情報を集めていた。

ふと、足元が軽くなると、リリーが目を輝かせながら言った。  

「お姫様、今夜、また何かが動くかもしれません。宮廷内でとある有力貴族が刺客を紛れ込ませた、近いうちに何か重要な動きがあるという情報を持っています。」

「本当に?」  

「はい、ただしその刺客が、宮廷のどこに紛れているのかまでは分かりません。でも、私たちが見守っている限り、何かしらの手掛かりは掴めるはずです。何か騒ぎを起こそうとしているかも」  

その言葉に、私は少しだけ胸を躍らせる。

いい感じで進展している…でも、危険な香りがただよってくる予感もした。

その夜、私はレオニードと一緒に食事をとっているときに、ふと気づく。

レオニードがいつもより少し目を細めて、私をじっと見つめている。  

「…どうしたの?」  

「お前、最近、少しだけ変わったな。」  

彼が言うと、私は少し顔を赤らめながら答える。  

「変わったって、どういう意味?」
  
「何かを考えているだろう。」  

彼がその言葉を真剣に言った瞬間、私はつい口をつぐんでしまう。

ばれるわけにはいかない。

「…そんなことないよ。」  

「本当に?」  

その声には鋭さが混じっていて、私は慌てて視線をそらす。  

「うーん…ちょっと忙しいだけ。」  

「忙しい、か。」  

レオニードはじっと私を見つめてきた。

その目が私の心をすっかり見透かしているようで、思わず息を呑んでしまった。

ああ、このままじゃ、私の秘密がばれてしまうかもしれない。

それは何とか阻止したい。

私はもう後戻りできない。  

「レオニード、気づかないでいてくれる?」  

「気づかないでいる? 俺が?」  

「うん、お願い。」  

彼は少し沈黙した後、微かに微笑んだ。  

「お前、無理するなよ。」  

その言葉を聞いて、少しだけ胸の奥が温かくなる。

ありがとう、レオニード。

だけど、宮廷内で進行中の陰謀は、確実に私の背後で動いている。

どうしてもそれを止めなければ、私の正体が暴かれることになるだろう。

でも、今は私だけの力ではなく、侍女たちと協力して進めるべきだと思う。

少なくとも、誰かが一緒にいてくれる。

それだけでも、心強いものがあるから。
感想 0

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます

白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。 特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。 だがある日、突然の婚約破棄通告――。 「やはり君とは釣り合わない」 そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。 悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。 しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。 「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」 「よければ、俺が貰ってやろうか?」 冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!? 次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには 「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」 ――溺愛モードが止まらない!

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

幸せなお飾りの妻になります!

風見ゆうみ
恋愛
私、アイリス・ノマド男爵令嬢は、幼い頃から家族のイタズラ癖に悩まされ、少しでも早く自立しようと考えていた。 婚約者のロバート・デヴァイスと、家族と共に出席した夜会で、ロバートから突然、婚約破棄を宣言された上に、私の妹と一緒になりたいと言われてしまう。 ショックで会場を出ようとすると引き止められ、さっきの発言はいつものイタズラだと言われる。 イタズラにも程があると会場を飛び出した私の前に現れたのは、パーティーの主催者であるリアム・マオニール公爵だった。 一部始終を見ていた彼は、お飾りの妻を探しているといい、家族から逃げ出したかった私は彼の元へと嫁ぐ事になった。 屋敷の人もとても優しくて、こんなに幸せでいいの? 幸せを感じていたのも束の間、両親や妹、そして元婚約者が私に戻ってこいと言い出しはじめて――。 今更、後悔されても知らないわ! ※作者独自の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。