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「あ、どうしたの?」
公園の入り口で、キコがニコニコほほ笑んでいる。私はさっそく、学生カバンからスマホを取り出した。
「キコさん、録画させてください!」
練習が終わって、みんなが着替え始めた。けれど、私はまだジャージ姿のままだった。
「マコちゃん、どうしたの?」
ブレザー姿のキコがきいた。
「私、まだ練習しないとダメだと思って」
「だけど、もう暗いし、あぶないよー」
モモチが心配そうだったが、私は曲げなかった。みんなを見送ってから、学生カバンをベンチの隅に置いて、走り出した。ぐるりと町内を三周して公園に戻ったら八時を過ぎていた。
「キコさん……」
ベンチで、キコが待っていた。膝にカバンを抱えている。
「バッグ、盗まれちゃうよ。夜遅いし。さ、もう帰ろう」
キコが立ち上がった。
「試合まで、時間がないし。まだちょっとやらないと……」
キコの目がするどくなった。
「独りよがり! そんなの、マコちゃんらしくない。こんな遅くに、マコちゃんに何があったら、ラビッツはどうするの? 仲間に入れたあたしは、どうなるの?」
トボトボと二人で帰る。いつもはダンスのことやくだらない冗談ばかりだけど、さすがにだまったままだ。
駅前の交差点で、信号待ちをしていた時、
「何があった?」
と、キコが耳元でやさしくつぶやいた。私はうつむいた。
公園の入り口で、キコがニコニコほほ笑んでいる。私はさっそく、学生カバンからスマホを取り出した。
「キコさん、録画させてください!」
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「マコちゃん、どうしたの?」
ブレザー姿のキコがきいた。
「私、まだ練習しないとダメだと思って」
「だけど、もう暗いし、あぶないよー」
モモチが心配そうだったが、私は曲げなかった。みんなを見送ってから、学生カバンをベンチの隅に置いて、走り出した。ぐるりと町内を三周して公園に戻ったら八時を過ぎていた。
「キコさん……」
ベンチで、キコが待っていた。膝にカバンを抱えている。
「バッグ、盗まれちゃうよ。夜遅いし。さ、もう帰ろう」
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「試合まで、時間がないし。まだちょっとやらないと……」
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「独りよがり! そんなの、マコちゃんらしくない。こんな遅くに、マコちゃんに何があったら、ラビッツはどうするの? 仲間に入れたあたしは、どうなるの?」
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