あの日、あの場所で

いまさら小次郎

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第一章 どこかでみた光景

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「それじゃあ、可愛いかも分からず、おっぱいの大きさも分からなかったと。何だ、何の収穫もないじゃん」
「人の夢にケチつけるんじゃねぇ」

明くる日の昼休み。
孝之と殿上は勤めているビルの屋上にいた。
屋上と言ってもこのビルは8階までしかなく、
辺りに立ち並ぶ高層ビルの半分にも満たなかった。

「俺が気にしてるのはそこじゃない。あの女は誰なんだってことだ」
「孝之の妄想でしょ」
「俺のことを知ってるって言ってたし、あの風景…どこかでみたことがあるんだ」
「まぁ、やることやったら、また報告して」

くそ野郎めと吐き捨てて、孝之は雲一つない青空を見上げた。

妄想なら、それで良い。
ただの欲求不満なんだと思えば、それで良い。
だけどなぜか気にかかる、あの風景。
あの大きな桜の木を、どこかで見たことがある。
あの”天使”は、何かを伝えようとしている。

何で、お前なんだ。
お前は、どこから来たんだ。
お前は、誰なんだ。

さすがに5日連続で見る夢ともなると、
その意味を問わずにはいられなくなる。
出来うる限りの情報を得たい。
自分が作り出した妄想でも良い。
何か、答えが欲しい。
安心したいのだ。
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