あの日、あの場所で

いまさら小次郎

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第一章 どこかでみた光景

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周りを取り囲む景色は相変わらず美しいもので、
白みがかった青空の下で繰り広げられる艶めかしいやり取りに
興奮しない訳にはいかない。

”天使”はひとしきり孝之の舌を弄んだところで、
今度は熱を含んだ舌をゆっくりと孝之の口の中に割り入れてきた。
これにはさすがに孝之も驚いて、目を見開いた。

「ちょ…ちょっと待て、おま…」
「タカユキ…タカユキ…」

”天使”の目は虚ろで、孝之の声は耳に届いていないようだった。
顎を横にずらそうにも”天使”が大きく身を乗り出して、
すぐさま口の中に舌を押し入れてくる。
中で逃げ回る舌を捕えるように、熱い、赤い舌で掬い上げられると、
さすがに刺激となって身体全体に伝わり始めるのが分かった。

白昼堂々と。
大胆な奴だな。

そんなことを呑気に思い浮かべながら、
暫く”天使”から繰り出される強烈な刺激に従うことにした。

”天使”は、動きを止めようとはしなかった。
何度も何度も孝之の舌に自分の舌を絡めては、
時折その舌に唇で吸い付いたりもしていた。
風に乗って擦れあう木々の乾いた音と、
すぐ近くで感じる湿り気のある音の対比に、
身体の奥がじわりと熱くなるのを感じる。

”天使”は白い頬を少し桃色に染めて、
孝之との触れ合いに視線を落としていた。
その表情を見つめているとこちらに気づいたのか、
ゆっくりと視線を向けてきた。
    
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