ピロティー

いまさら小次郎

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20:00, Friday アルバートホテル 7階にて

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翌朝。
いつもより1時間早くに目が覚めた。
ベッドの横にある窓から差しこむ陽の光を顔全体に受け、ゆっくりと目を開ける。

「まぶし……」

カーテンを閉めるのを忘れていた。
昨日はあれから自宅にもどるやいなや、スーツのままベッドに飛び込み、そのまま眠ってしまった。
いつもは気になっていた靴下も、脱ぐのをすっかり忘れたままだった。

ゆっくりと上半身を起こし、窓の外を見やった。
昨日の夜の事を、思い返す。

”またね”

別れ際の、弘のあの言葉が耳に響いた。

「夢じゃ…なさそうだな」

薄茶色の髪と、薄茶色の瞳。
がたいの良い白い身体と、時折見せる笑顔と。
囁かれる甘い言葉と、あの甘酸っぱい香水の香り。
手元に残ったものは何もないけれど、
あの温もりは確かに一度、自分の身体を通して伝えられたことを、忘れてはいない。

「シャワー浴びよ…」

真はベッドから重い腰を上げ、玄関の近くにある浴室に向かった。
外では強い風が吹いて、窓がガタガタと大きな音を立てながら揺れ始める。
真はゆっくりと振り返り、陽の光が差し込む窓の方に目をやった。

「”田中、弘”………」

いつもの朝が、始まる。




終わり
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