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2章
母と修行開始
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俺たちは村を出て、近くの街で母さんの力と言うか、コネで大きな家に住めることになった。
今はここの庭で、回復魔法の修行中だ。
目をつむって、座り込む。
精神を研ぎ澄まし、魔力を身体に感じるように…その感覚に馴染んで来た。
周囲の雑音が、一つ一つ遮断されていく。
両手を広げて、体内に魔力を呼吸するように吸い込み、それを放出させる。
はぁー! 左手が虹色の光に包まれ、生命の息吹を体の奥底から、湧き上がる噴水のように感覚が全身にみなぎる。その温かいエネルギーはどこか懐かしさも感じる。
目を開いて、左手をそのままかざす。対象を癒すイメージだ。
良し、そのまま手から魔力を放出。
グリーンと白の光が混ざり合いきらめく。
それを事前に用意してあった花壇の、枯れた花の頭上に手を当てた。
ゆっくりと、花が咲きほこってきたのを俺は、嬉しさと達成感を感じた。
それでもまだ油断禁物と、身を引き締め、そのまま全ての花が生き生きとするまで当てていた。
ふぅ…終わり。俺は左手を握りまた開き、感触を確かめた。
やった…だけど指があった時は、もっと楽だった。時間もかかるな。
…贅沢は言ってられないな。これだけでも、満足しないと。
「さすがねー、うちの息子は天才ね!」
背後から声が聞こえた。
後ろを振り向くと母さんが微笑んでいた。
いきなり話しかけられて少しビクッと体が震えた。
それだけ考え込んでて、母さんが近寄るのにも気づかないぐらい集中していたのだろう。
母さんの心地よい声にすら驚くなら、他の人だったら、腰が抜けてたかな?
「そう? 母さんとどっちが凄いかな?」
もちろん母さんだろう。答えは分かってる。
けどそれを聞いたのは、褒めて欲しいと言う感情からだった。
「あら? 対抗心燃やしちゃって。マギの方が凄いわよ。回復魔法の素質はね。攻撃魔法の素質は、断然私が上、えっへん。」
…対抗心燃やしてるのはどっちかな? まったく。それでも俺の方が回復魔法、素質って言うのが引っかかるけど、褒めて貰えて、心が弾んで嬉しくなり、鼻をさすった。
「そういや母さんの本気の攻撃魔法って、見たことないな。見たいな。」
「そりゃね、街が吹っ飛ぶもの。ううん、自然が半壊するわね。」
一瞬耳を疑った。それはそうだろう。母さんが凄いのは、なんとなくで思っていたけれど、予想外にスケールがでかいと言うか。母さんが強大な力を持っていたことに、動揺を隠せなかった。
「…マジで? そんなに…じゃ普通に魔族と戦ったら余裕で勝てるんじゃ?」
「ふっ、誰もいない荒野なら、余裕でしょうね。」
「なんだよ、母さん人が悪いな。魔法の修行嫌いだから、弱いんじゃなかったっけ?」
「嫌いよ。でもそれは、神に酷いことされた、あとのことだからね。神に次元の狭間にいる時に修行1000年したし、閉じ込められた時は、精神修行1000年…魔王と戦った時も半分くらいの力だったかな? そう言えば…本気出したことない…」
「えっ? それって…母さん人類最強なんじゃ?」
「どうかしら? 世の中そう単純じゃないから。じゃんけんみたいなもので、私より弱くても、私に勝つかもしれない。それに私、神に回復魔法封印されてるからね。それがなければ…そうかもね。」
そうか…回復魔法封印されたんだっけ。
母さん強い…俺は完全に足手纏いだな。いやいや…そうならないように、回復魔法を極めれば…少しは役に立つはず。
「焦りは禁物よ。エルフなんだから、時間はたっぷりあるから。一応言っておくけど、魔族が街を襲うからって考えて、助けようと思って無理しちゃ駄目よ。あなたは正義のヒーローじゃないんだから、今は自分の為、仲間のことを考えなさい。」
母さんが見透かすようにアドバイスをくれた。
確かに俺は正義のヒーローじゃない。
でもやっぱり…それを考えないのは、俺には出来そうにない。
だって俺は前世人間だから。それでも今は、我慢して修行しないと、信頼出来る仲間に迷惑かけるしな。
少し焦る気持ちを、母さんの一言で和らいだ。
しかし回復魔法…これは…しんどいな。
一気に魔力が根こそぎ奪われる感覚だ。
この世界は、回復魔法消費が凄まじいのかな。
背後にいた母さんが、俺の肩に手をやる。俺は母さんの方に振り向いて笑顔で頷いた。
「ああー! 我が子ながらなんて可愛い笑顔なのー! 胸が…やら…れるぅ。」
母さんが胸を押さえながら、頬が赤らむ。大袈裟だな…リアクションが。
母の金髪の髪が陽に当たり、キラキラした光沢が、母の美しさを際立たせ俺の視界を占領する。
咳払いを母さんがして、俺は照れ臭さから視線を外した。
生い茂った深緑の草が辺りに生えている。その草が風に吹かれて揺れる。まるで俺にささやくかの様に。
…草のように俺はしぶとく、踏み潰されても、這い上がってやる。魔族との戦いをイメージして俺は決意を新たにした。
今はここの庭で、回復魔法の修行中だ。
目をつむって、座り込む。
精神を研ぎ澄まし、魔力を身体に感じるように…その感覚に馴染んで来た。
周囲の雑音が、一つ一つ遮断されていく。
両手を広げて、体内に魔力を呼吸するように吸い込み、それを放出させる。
はぁー! 左手が虹色の光に包まれ、生命の息吹を体の奥底から、湧き上がる噴水のように感覚が全身にみなぎる。その温かいエネルギーはどこか懐かしさも感じる。
目を開いて、左手をそのままかざす。対象を癒すイメージだ。
良し、そのまま手から魔力を放出。
グリーンと白の光が混ざり合いきらめく。
それを事前に用意してあった花壇の、枯れた花の頭上に手を当てた。
ゆっくりと、花が咲きほこってきたのを俺は、嬉しさと達成感を感じた。
それでもまだ油断禁物と、身を引き締め、そのまま全ての花が生き生きとするまで当てていた。
ふぅ…終わり。俺は左手を握りまた開き、感触を確かめた。
やった…だけど指があった時は、もっと楽だった。時間もかかるな。
…贅沢は言ってられないな。これだけでも、満足しないと。
「さすがねー、うちの息子は天才ね!」
背後から声が聞こえた。
後ろを振り向くと母さんが微笑んでいた。
いきなり話しかけられて少しビクッと体が震えた。
それだけ考え込んでて、母さんが近寄るのにも気づかないぐらい集中していたのだろう。
母さんの心地よい声にすら驚くなら、他の人だったら、腰が抜けてたかな?
「そう? 母さんとどっちが凄いかな?」
もちろん母さんだろう。答えは分かってる。
けどそれを聞いたのは、褒めて欲しいと言う感情からだった。
「あら? 対抗心燃やしちゃって。マギの方が凄いわよ。回復魔法の素質はね。攻撃魔法の素質は、断然私が上、えっへん。」
…対抗心燃やしてるのはどっちかな? まったく。それでも俺の方が回復魔法、素質って言うのが引っかかるけど、褒めて貰えて、心が弾んで嬉しくなり、鼻をさすった。
「そういや母さんの本気の攻撃魔法って、見たことないな。見たいな。」
「そりゃね、街が吹っ飛ぶもの。ううん、自然が半壊するわね。」
一瞬耳を疑った。それはそうだろう。母さんが凄いのは、なんとなくで思っていたけれど、予想外にスケールがでかいと言うか。母さんが強大な力を持っていたことに、動揺を隠せなかった。
「…マジで? そんなに…じゃ普通に魔族と戦ったら余裕で勝てるんじゃ?」
「ふっ、誰もいない荒野なら、余裕でしょうね。」
「なんだよ、母さん人が悪いな。魔法の修行嫌いだから、弱いんじゃなかったっけ?」
「嫌いよ。でもそれは、神に酷いことされた、あとのことだからね。神に次元の狭間にいる時に修行1000年したし、閉じ込められた時は、精神修行1000年…魔王と戦った時も半分くらいの力だったかな? そう言えば…本気出したことない…」
「えっ? それって…母さん人類最強なんじゃ?」
「どうかしら? 世の中そう単純じゃないから。じゃんけんみたいなもので、私より弱くても、私に勝つかもしれない。それに私、神に回復魔法封印されてるからね。それがなければ…そうかもね。」
そうか…回復魔法封印されたんだっけ。
母さん強い…俺は完全に足手纏いだな。いやいや…そうならないように、回復魔法を極めれば…少しは役に立つはず。
「焦りは禁物よ。エルフなんだから、時間はたっぷりあるから。一応言っておくけど、魔族が街を襲うからって考えて、助けようと思って無理しちゃ駄目よ。あなたは正義のヒーローじゃないんだから、今は自分の為、仲間のことを考えなさい。」
母さんが見透かすようにアドバイスをくれた。
確かに俺は正義のヒーローじゃない。
でもやっぱり…それを考えないのは、俺には出来そうにない。
だって俺は前世人間だから。それでも今は、我慢して修行しないと、信頼出来る仲間に迷惑かけるしな。
少し焦る気持ちを、母さんの一言で和らいだ。
しかし回復魔法…これは…しんどいな。
一気に魔力が根こそぎ奪われる感覚だ。
この世界は、回復魔法消費が凄まじいのかな。
背後にいた母さんが、俺の肩に手をやる。俺は母さんの方に振り向いて笑顔で頷いた。
「ああー! 我が子ながらなんて可愛い笑顔なのー! 胸が…やら…れるぅ。」
母さんが胸を押さえながら、頬が赤らむ。大袈裟だな…リアクションが。
母の金髪の髪が陽に当たり、キラキラした光沢が、母の美しさを際立たせ俺の視界を占領する。
咳払いを母さんがして、俺は照れ臭さから視線を外した。
生い茂った深緑の草が辺りに生えている。その草が風に吹かれて揺れる。まるで俺にささやくかの様に。
…草のように俺はしぶとく、踏み潰されても、這い上がってやる。魔族との戦いをイメージして俺は決意を新たにした。
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