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第8話 ドン〇ッチソード
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霞が変身ウォッチのアップデート作業を完了させてから数日が過ぎたのだが、あれから怪人の目撃情報は見つかっていない。
さらに明依さんから武器のモデルが完成したと連絡が来たようで、俺達は再び秋葉原に向かっていた。
「やはりバイクは快適だな。もう二度と電車には乗りたくない」
この前は電車で秋葉原まで移動したが、今回の移動方法はバイクであった。
確かにバイクだと通勤ラッシュに巻き込まれる心配もない。
「俺はいつも電車で移動してるから、そんなにしんどくは無かったけどな。霞はあんまり電車に乗らないのか?」
「ああ。私は断然バイク派だ。その方がカッコ良いしな」
「まぁ……確かにそうだな」
バイクがカッコ良いという意見には同感であった。
霞は秋葉原駅の近くにある駐車場にバイクを停めた。
駐輪場から明依さんの店まで歩いて五分ほどで到着した。
この前と変わらず、俺達以外には客はいないようであった。
「明依―、いるかー?」
霞がレジカウンターの奥の方に声を掛ける。
しかし、何も反応が無い。
「いないのかな?」
「そのようだな。仕方ない、電話してみるか」
霞がスマホを取り出すと、スマホから着信音が鳴った。
ちなみに着信音は俺も聞いたことのある某仮面ライダーの主題歌である。
地獄の軍団がどうとか言っている。
「もしもし……霞です。は、そうですか。では、これから現場に向かいます」
現場に向かう?
霞は電話を切ると、俺に視線を送った。
「鈴鹿さんからの連絡だ。秋葉原に怪人が現れたから出陣して欲しいってことだった」
「わ、分かった……明依さん、大丈夫かな」
「多分……大丈夫なはずだ」
言葉に反して、霞の表情は険しかった。
やはり明依さんのことが心配のようだ。
霞はこの前、購入した仮面ライダーのマスクを持ってきており、それを被った。
俺も正体を隠す為、先に店の中でダークウォリアーに変身しておき、怪人が暴れているという現場に向かう。
「いた……あいつだ」
メイド達がよくビラ配りに勤しんでいる秋葉原の裏通り、そこに蟹の怪人がいた。
逃げ惑う通行人に対し、怪人は容赦なく襲い掛かっていた。
「ほらほら、俺様が怖いか!?」
「だ、誰かー! 助けて!」
「オラァ!」
「キャァ!」
ビラ配りをしていたメイドがハサミによる攻撃を受ける。
そのメイドは地面に倒れてしまい、俺は「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
「いてて、あ、ありがとうございます。大丈夫です……」
メイドがゆっくりと立ち上がった。
怪人によって、切り裂かれた服を見ると、表情が一変した。
「な、何よ、このダッサい服! 今すぐ店に戻って、店長に抗議しなくっちゃ!」
メイドは急に走り出し、その場から立ち去った。
ラカサから攻撃を受けた影響なのだろう。
メイドの言動から察するに、自分の服装にコンプレックスを抱いている人間が怪人化したというところだろうか。
「ん? まーたお前か。ダークウォリアー」
「覚えてくれてて嬉しいよ。これ以上、お前の好きにはさせない……覚悟しやがれ!」
「ふん。俺様に手も足も出なかったってのに、今更何が出来るってんだ?」
「言っておくが、この前の俺とは一味違うぞ」
変身ウォッチ内に新たに追加されたウェポンアプリ――『W』のアイコンをタッチする。
続けて、画面内に『Sword』と『Gun』の選択肢が出る。
『Sword』の方を選択すると、右手に剣が出現し、
「…………は?」
無かった。
手に持っていたものを見て、俺は唖然とした。
「おいおい、お前……それ、ネギじゃねぇか!」
怪人が指摘した通り、俺が持っていたのはまごうことなく長ネギであった。 何故か霞が誇らしげに微笑んでいる。
いや、こんなものでどう怪人と戦えというのだろうか。
「そんな野菜で俺様に敵うと思うなよ!」
怪人が俺にハサミを振り下ろしてきた。
咄嗟に俺はネギで防御した。
ハサミとネギがぶつかり合い、『カキィン』と甲高い金属音が鳴る。
おお、結構使えるじゃねぇか。
「何!? ふざけるなよ、そんな野菜で……」
「野菜じゃねぇよ。これはな……ドン〇ッチソードだ!」
ネギは想像以上に頑丈で素手で戦うよりも遥かに戦いやすくなったものの、両手にハサミを持つ怪人の方が有利であった。
俺は上空に飛び上がり、怪人の脳天にネギを振り下ろそうと試みた。
「甘い!」
しかし、片方のハサミで防がれ、もう片方のハサミで腹部に突き攻撃を貰った。
ハサミで突かれた箇所から火花が散り、激痛が走る。
「ぐはぁ! 痛い、ちくしょう……」
このままではジリ貧である。
何とかせねば、そう考えてると霞が「銃を使え!」と助言してきた。
再びウェポンアプリを起動し、『Gun』を選択する。
たちまちネギが消えたかと思うきや、今度はトウモロコシが出てきた。
葉の部分が引き金の形をしており、先端部分は銃口の形になっていた。
「また野菜か……まぁ、戦えれば何でも良いけどな!」
俺は銃口、もといトウモロコシを怪人に向け、三発ほど発砲した。
大きな銃声が鳴り響き、怪人は「ぐわぁ!」と悲鳴を上げる。
よし、これならいける。
俺は怪人との距離を詰め、続けて発砲しようとした。
しかし、怪人は何故か全くその場から動こうとはせず、プルプルと身体を震わせていた。
「ダメだ……もー我慢できん! ダークウォリアー、そこで待ってろ!」
「へ……?」
怪人はどこかに走り去ってしまった。
後を追おうとするも、霞は俺の肩に手を置き、「良いから、待っていろ」と諭してきた。
さらに明依さんから武器のモデルが完成したと連絡が来たようで、俺達は再び秋葉原に向かっていた。
「やはりバイクは快適だな。もう二度と電車には乗りたくない」
この前は電車で秋葉原まで移動したが、今回の移動方法はバイクであった。
確かにバイクだと通勤ラッシュに巻き込まれる心配もない。
「俺はいつも電車で移動してるから、そんなにしんどくは無かったけどな。霞はあんまり電車に乗らないのか?」
「ああ。私は断然バイク派だ。その方がカッコ良いしな」
「まぁ……確かにそうだな」
バイクがカッコ良いという意見には同感であった。
霞は秋葉原駅の近くにある駐車場にバイクを停めた。
駐輪場から明依さんの店まで歩いて五分ほどで到着した。
この前と変わらず、俺達以外には客はいないようであった。
「明依―、いるかー?」
霞がレジカウンターの奥の方に声を掛ける。
しかし、何も反応が無い。
「いないのかな?」
「そのようだな。仕方ない、電話してみるか」
霞がスマホを取り出すと、スマホから着信音が鳴った。
ちなみに着信音は俺も聞いたことのある某仮面ライダーの主題歌である。
地獄の軍団がどうとか言っている。
「もしもし……霞です。は、そうですか。では、これから現場に向かいます」
現場に向かう?
霞は電話を切ると、俺に視線を送った。
「鈴鹿さんからの連絡だ。秋葉原に怪人が現れたから出陣して欲しいってことだった」
「わ、分かった……明依さん、大丈夫かな」
「多分……大丈夫なはずだ」
言葉に反して、霞の表情は険しかった。
やはり明依さんのことが心配のようだ。
霞はこの前、購入した仮面ライダーのマスクを持ってきており、それを被った。
俺も正体を隠す為、先に店の中でダークウォリアーに変身しておき、怪人が暴れているという現場に向かう。
「いた……あいつだ」
メイド達がよくビラ配りに勤しんでいる秋葉原の裏通り、そこに蟹の怪人がいた。
逃げ惑う通行人に対し、怪人は容赦なく襲い掛かっていた。
「ほらほら、俺様が怖いか!?」
「だ、誰かー! 助けて!」
「オラァ!」
「キャァ!」
ビラ配りをしていたメイドがハサミによる攻撃を受ける。
そのメイドは地面に倒れてしまい、俺は「大丈夫ですか?」と声を掛けた。
「いてて、あ、ありがとうございます。大丈夫です……」
メイドがゆっくりと立ち上がった。
怪人によって、切り裂かれた服を見ると、表情が一変した。
「な、何よ、このダッサい服! 今すぐ店に戻って、店長に抗議しなくっちゃ!」
メイドは急に走り出し、その場から立ち去った。
ラカサから攻撃を受けた影響なのだろう。
メイドの言動から察するに、自分の服装にコンプレックスを抱いている人間が怪人化したというところだろうか。
「ん? まーたお前か。ダークウォリアー」
「覚えてくれてて嬉しいよ。これ以上、お前の好きにはさせない……覚悟しやがれ!」
「ふん。俺様に手も足も出なかったってのに、今更何が出来るってんだ?」
「言っておくが、この前の俺とは一味違うぞ」
変身ウォッチ内に新たに追加されたウェポンアプリ――『W』のアイコンをタッチする。
続けて、画面内に『Sword』と『Gun』の選択肢が出る。
『Sword』の方を選択すると、右手に剣が出現し、
「…………は?」
無かった。
手に持っていたものを見て、俺は唖然とした。
「おいおい、お前……それ、ネギじゃねぇか!」
怪人が指摘した通り、俺が持っていたのはまごうことなく長ネギであった。 何故か霞が誇らしげに微笑んでいる。
いや、こんなものでどう怪人と戦えというのだろうか。
「そんな野菜で俺様に敵うと思うなよ!」
怪人が俺にハサミを振り下ろしてきた。
咄嗟に俺はネギで防御した。
ハサミとネギがぶつかり合い、『カキィン』と甲高い金属音が鳴る。
おお、結構使えるじゃねぇか。
「何!? ふざけるなよ、そんな野菜で……」
「野菜じゃねぇよ。これはな……ドン〇ッチソードだ!」
ネギは想像以上に頑丈で素手で戦うよりも遥かに戦いやすくなったものの、両手にハサミを持つ怪人の方が有利であった。
俺は上空に飛び上がり、怪人の脳天にネギを振り下ろそうと試みた。
「甘い!」
しかし、片方のハサミで防がれ、もう片方のハサミで腹部に突き攻撃を貰った。
ハサミで突かれた箇所から火花が散り、激痛が走る。
「ぐはぁ! 痛い、ちくしょう……」
このままではジリ貧である。
何とかせねば、そう考えてると霞が「銃を使え!」と助言してきた。
再びウェポンアプリを起動し、『Gun』を選択する。
たちまちネギが消えたかと思うきや、今度はトウモロコシが出てきた。
葉の部分が引き金の形をしており、先端部分は銃口の形になっていた。
「また野菜か……まぁ、戦えれば何でも良いけどな!」
俺は銃口、もといトウモロコシを怪人に向け、三発ほど発砲した。
大きな銃声が鳴り響き、怪人は「ぐわぁ!」と悲鳴を上げる。
よし、これならいける。
俺は怪人との距離を詰め、続けて発砲しようとした。
しかし、怪人は何故か全くその場から動こうとはせず、プルプルと身体を震わせていた。
「ダメだ……もー我慢できん! ダークウォリアー、そこで待ってろ!」
「へ……?」
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