大統領

杉本けんいちろう

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大統領

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『…はい!英人くんありがとう。そっかぁ!英人くんは、大きくなったら野球の選手になりたいんだね!その夢が叶うように、いーっぱいがんばりましょうね!』

『うん!』

『はい!みんな!英人くんに拍手!…じゃあ次は、純くんね。』

『はい!』

『みんなに聞こえるように大きな声で発表してください。』

『僕は、大きくなったら日本の大統領になりたいです!一番えらい人になって、日本をアメリカみたいに強くしたいです!』

『そ、そっかぁ!純くんは、大統領かぁ!すごい大きな夢だなぁ!なれるといいですね!先生も応援してます!』

『うん!ありがとう!みゆき先生!僕、がんばるね!』

『はい!みんな!純くんに拍手!じゃあ次は…。』

ーーー。

『ねーねー、純くん!』

『なーに?なっちゃん。』

『知ってる?日本で一番えらい人は、大統領じゃなくて、総理大臣て言うんだよ!だから日本じゃ大統領には、なれないんだよ。』

『うん!知ってるよ!』

『え?』

『だから僕は、大統領になりたいんだ!だって大統領の方がカッコイイもん!』

『純くん…。でも、よく分からないけど、それってすごく大変なことだと思うよ。』

『みんな一緒だよ!夢を叶えるのに、楽ちんなものなんてないでしょ!みんな大変だよ!』

『はい!ゆり組さん集まってー!教室もどりますよー!』

『あ!呼んでるよ!行かなきゃ!』

『じゃあ、カワイイお嫁さんになるのも大変なの?』

『え?』

『だって、みんな一緒なんでしょ?』

『そうだと思うよ!だって、お嫁さんになるには、誰かに好きになってもらわなきゃいけないんだもん!それって大変なことじゃない?』

『純くん…。』

『なっちゃーん!純くーん!何してるのー?』

『あっ!ほら!行こ!』

『あ!待ってよー!』

ーーー。

『ねぇ、お母さん。』

『あら、どうしたの?純ちゃん。』

『お母さんは、僕が大統領になれると思う?』

『そうねぇ。なってくれたら、そりゃあ、お母さんも嬉しいけどね。でも大変よぉ。大統領になるには、いろんな壁を乗り越えていかなきゃならないの。』

『壁って?』

『そうね…。まず一番に、みーんなの信頼を得ないとダメね。その信頼が、あとで大きな団結力になるのよ。』

『しんらい…。だんけつ…。』

『まだ、純ちゃんには、ちょっと難しいかな。』

『うーうん!そんなことないもん!他には?他にはないの?』

『あとは、そうね。リーダーシップかな。人を動かせる力ね!』

『人をうごかせるちから…。』

『うふふ。やっぱり、まだ純ちゃんには難しいわね。』

『そ、そんなことないもん!僕…!』

『いーの!そんなに焦らなくていーのよ!純ちゃん。今は、毎日お友達と楽しくすごせれば、それだけでいいのよ。』

『毎日、楽しく…。』

『そう。純ちゃんが毎日、笑顔でいてくれたら、お母さん今は、それだけで満足だわ。』

『うん!わかった!』

ーーー。

『…あら。困ったわね。』

『みゆき先生、どうしたの?』

『純くん。勉くんがね、クレヨンの入った箱をなくしちゃったんですって。』

『そうなんだ…。じゃあ、僕のクレヨン貸したげるよ。一緒に使お!』

『純くん…。ありがとう。』

ーーー。

『はい!今日のお絵かきの時間は、お友達の似顔絵を描きましょう。二人で向き合って相手の笑ってるお顔を描くんですよ。分かりましたかぁ?』

『はーい。』

ーーー。

『ねー純くん。僕も肌色使いたいよ。』

『うん!いーよ!じゃあ…、はい!』

『え!純くん、このクレヨンまだ新しいやつじゃないの?折っちゃうなんて…。』

『だって、こうしなきゃ一緒にお顔を描けないでしょ?順番こなんて嫌だもん。みゆき先生も言ってたでしょ。笑ってるお顔を描きましょうって。やっぱり一緒に描く方が楽しいもん。』

『純くん…。』

ーーー。

『純くん。』

『ん?直人くん、どうしたの?』

『純くんてさぁ、なっちゃんが好きなの?』

『え?!何で、いきなりそんな事聞くの?』

『僕、なっちゃんが好きなんだ。でも、もう会えなくなるから…。』

『直人くん…。会えなくなるって、何で?』

『僕、もうすぐ引っ越すんだ。だから、純くんとも、なっちゃんとも、お別れなんだ。』

『うそ!?ホントに!?遠くに行っちゃうの?』

『うん。お父さんが、みんなと会えなくなるくらい遠くに行くって言ってたから。』

『やだよぉ!行かないでよ!』

『純くん…。ありがとう。だから、最後になっちゃんに好きって言ってもいい?』

『うん。いいよ。僕もなっちゃんが好きだけど、それまで心の中にしまっとくね。』

『ねー、純くんってさぁ、大きくなったら大統領になりたいんでしょ?』

『うん。そうだよ。』

『じゃあ、いつか大統領になったら、テレビにいっぱい映るから、すぐに見つけられるね。そしたら僕、会いに行くからね。それまで僕の事、忘れないでね。』

『直人くん…。うん!もちろん!忘れるもんか!』

ーーー。

『突然だけど、みんなに悲しいお知らせがあります。直人くんが、お父さんの仕事の関係で遠くにお引っ越しをする事になりました。』

『えー!!』

『直人くん、前においで。』

『はーい…。』

『最後に、みんなにお別れの挨拶が出来るかな?』

『うん。みんな、今まで遊んでくれて、どうもありがとう。僕は、お父さんが生まれ育った街で大工さんとして、いっぱいお家を建てたいっていう夢を、お母さんと一緒に応援したいんだ。だから僕は、みんなとお別れするのは悲しいけど行くね。みんなの事忘れないよ。』

『直人くん…。』

『僕も、忘れなーい!』

『私も、忘れないよ!』

『みんな、ありがとう。』

『直人くん。』

『なっちゃん…。』

『直人くん、泣かないで。直人くんが泣いちゃったら、みんなも泣いちゃうよ。笑って、さよならしよ?』

『うん。ごめんね。そうだよね。ありがとう、なっちゃん。…あ、ねー、なっちゃん。』

『ん?なーに?』

『僕、なっちゃんが大好きだよ。』

『え…!私も、直人くんが大好きよ。』

『ホント?よかったぁ。』

『でも、もうお別れなんて…。純くんの言ってた通り…。』

『え…?』

『私の夢は、カワイイお嫁さんになる事なの。でも、純くんが教えてくれたの。そのためには、誰かに自分の事を好きになってもらわないといけないから、すごく大変だよって。』

『僕は、なっちゃんが好きだよ。』

『でも、遠くに行っちゃうんだもん。会えなくなっちゃうもん。そんなの嫌だもん。きっと、私も直人くんもお互いを好きな気持ちを忘れちゃうよ。』

『なっちゃん…。』

『直人くん、がんばってお父さんみたいに立派な大工さんになってね。私は直人くんを大好きだった事、忘れないよ。』

『ありがとう、なっちゃん。僕も、なっちゃんを大好きだった事、忘れないよ。』

『…そろそろ、いいかなぁ?』

『え?みゆき先生…?』

『はい!純くん、おいで!』

『はーい!』

『え?何?何?』

『直人くん、今日でみんなとお別れだけど、みんなの事忘れないって約束したよね?』

『うん…。』

『この約束は、いつかまた会った時に果たされるんだ。僕も、大統領になったら会いに来てくれるって言葉を忘れないからね。はい!コレあげる!』

『え?』

『みんなで、直人くんに秘密で折り紙で作ったんだぁ。それね、みんなが大きくなったら住みたいお家なんだよ。約束だよ。ちゃんと夢叶えてね!』

『純くん…。みんな、ありがとう。』

『これね、純くんがみんなに言って作ったんだよ。』

『みゆき先生…。そうなんだぁ。純くんって、なんだか、ホントに大統領になっちゃいそう…。』

『あははは!だって、それが僕の夢だから!あ!ちなみにそれ、僕のは、まだ日本にないホワイトハウスだからね!』

                                        ーおわりー
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