ひみつ。

杉本けんいちろう

文字の大きさ
1 / 1

ひみつ。

しおりを挟む
私とカンちゃんは、いつも一緒。2人だけの秘密なんていくつあるかな?数えらんないね。でも一つだけ、カンちゃんにも秘密してる事があるの…。

『ねぇ、カンちゃん。リカ、どこ行ったか知らない?もう、夕ごはんなのに全然帰って来ないの。』

『うーん…。今日は、会ってないからね。どこ行ったか知らないよ。』

『そう…。しょうがない子ね。カンちゃんも、もう暗くなるから早くおウチ帰りなさいね!』

『うん!じゃあね!』

僕は、リカちゃんのお母さんに嘘をついた。ホントは、知ってるんだ。リカちゃんの居場所。

たぶんね、あそこ…。

僕とリカちゃんは、家がお隣りの幼なじみ。気付いたらリカちゃんは、いつも隣にいた。だから、2人だけの秘密なんて一体いくつあるだろう。もう、数え切れないや…。

『リカちゃん!』

『あ!カンちゃん!』

『やっぱり、ここにいた!お母さんが探してたよ!』

『そうだよね。でも、今日は、カンちゃんに会いたかったんだ。さっき、カンちゃん家に行ったら、いなかったから、ここにいれば、その内カンちゃん来るかなって思って待ってたの。』

『え?何かあったの?』

『うーうん。何もないよ。ただ、カンちゃんに会いたかっただけ。でも、私の思ってた通り!そろそろ来るかなって思った途端、カンちゃんは来てくれたもん。やっぱり、私たちって繋がってるね!』

リカちゃんとは、もちろん、幼稚園も一緒。同じバスに乗って、同じ星組の教室で同じ時間を一緒に過ごしてる。だから、ほとんど毎日、会って遊んでる。

『カンちゃーん!』

『あ!』

『やっぱり!いたいた!』

『今日は、リカちゃん来ないと思ったんだけどなぁ。』

『なんで?来たら何かマズイ事があったの?』

『うーうん!何にもないよ!』

『そう…。なら、良いんだけど。ねぇ、それより聞いて!ここよりもね、良いところ見つけたの!』

『え?良いところ?』

『そう!私たちだけの新しい秘密の場所!今から行こ!』

『う、うん…。』

リカちゃんは、明るくて、いつも積極的に僕を引っ張って、アレしよう!コレしよう!って誘ってくれる。この場所を初めに見つけて教えてくれたのもリカちゃんだった。

僕は、ここ好きだったんだけどなぁ…。

『カンちゃん!ここ!ここ!』

『ここ?』

『そう!良いでしょ!?あっちより広いし、誰も分からないよ!』

『うん!良いね!ここ!でも、こんな分かりにくい場所、どうやって見つけたの?』

『私ね、ずっと探してたんだ。新しい秘密の場所。』

『どうして?』

『前のところは、狭いし、私たち以外にも誰か入ったような跡があったし。もっと、良い場所ないかなって、ずっと探してたんだ。そしたら、ここを見つけたの!』

『そうなんだ。』

『ここなら、また私たちだけの秘密の場所にできるね!』

僕は、このまま、リカちゃんと結婚するんだろうな。まだ5歳だけど、もう、そんな気がする…。

『カンちゃん。実はね、私、幼稚園を卒園したら、それと同時に引っ越すんだ。』

『え…?』

『遠くに引っ越すんだ。』

僕は、リカちゃんと結婚して、お母さんとお父さんも一緒に、いつまでも仲良しの家族を作るんだ。そんな気がする…。

『カンちゃん、今まで、ありがとうね。寂しいよ!別れたくないよ!でも、ゴメンね!行かなきゃいけないの!カンちゃんの事、絶対、忘れないからね!』

僕は、リカちゃんと一緒に。このままずーっと一緒に。死ぬまでずーっと一緒にいるんだろうな。そんな気がする…。

『リカちゃん!』

名前を呼んでも、あの声は聞こえてこない。

『カンちゃん!』

僕を呼ぶ、あの声も聞こえてこない。

リカちゃん、ホントに、遠くに行っちゃったんだね。リカちゃんが見つけてくれた、この2人だけの秘密の場所。僕一人だけだと広過ぎるよ。

『…あれ?何?この箱。もしかして、リカちゃんが置いて行ったのかな。』

20年後ー。

『リカちゃん!?』

『わ!カンちゃん!?』

『やっぱり、ここにいた!』

『カンちゃん!大人になったねぇ!でも、ちゃんと面影ある!やっぱり、カンちゃんだ!』

『リカちゃんだって!でも、正直、あんまり変わってないね。そのまま、大きくなったって感じ!』

『ってか、良かった!ちゃんと約束通り来てくれて!もしかしたら、手紙に気づいてくれないかと思ったから。』

『すぐ気づいたよ!そりゃあ、見慣れない箱が突然、置いてあったら開けるでしょ!20年後の4月1日。この場所で再会しよう!そんな手紙があったら、そりゃあ、来るでしょう!』

『でも、ここは、新しい方の秘密の場所じゃないじゃん。古い方だよ?どうして、こっちに来たの?』

『だって、リカちゃん、何だかんだ言って、新しい場所より、結局こっちに来てたじゃん。俺、知ってるよ。』

『知ってたんだ。だって、カンちゃん、こっちでコソコソ一人で何かやってたから、もしかして、何か隠してるのかなって思ってさ。気になって探してたんだ。』

『そうなんだ。俺がコソコソやってたのも分かってたんだね。で、見つかった?お目当ての物。』

『結局、見つかんなかった。でもね、さっき見つけたの!20年も、良く誰にも見つからずにあったよね!』

『ホントに?』

『うん!コレでしょ?このプラスチックの青い指輪!』

『うわ!懐かしい!』

『で?この指輪を何で隠してたの?』

『え?そんなの決まってるじゃん!』

僕は、このまま、リカちゃんと結婚するんだろうな。まだ5歳だけど、もう、そんな気がする…。

『その指輪を渡してプロポーズするつもりだったんだよ。土の中に埋めといて、いつでも行けるようにタイミングをはかってたんだよ。』

『あははは!やっぱし?』

僕は、リカちゃんと結婚して、お母さんとお父さんも一緒に、いつまでも仲良しの家族を作るんだ。そんな気がする…。

『でも、まさか引っ越しちゃうなんて思いもしなかったから、結局、プロポーズ出来なかったけどね。』

『私だって、まさか引っ越しするなんて思わなかったもん。だから、凄い辛かったんだよ!カンちゃんと離ればなれになるの!』

僕は、リカちゃんと一緒に。このままずーっと一緒に。死ぬまでずーっと一緒にいるんだろうな。そんな気がする…。

『でも、何で20年後の今日だったの?』

『だって、20年後だったら、再会したら、そのまま結婚出来るでしょ?』

『リカちゃん…。』

『はい!いいよ!言って!』

『もう、その感じ変わってないなぁ。でも、安心したよ。リカちゃん、結婚しよ!』

『うん!』

『ホントはね、もう一個あるんだ!指輪!』

『え?そうなの?一つしかなかったよ?』

『あれ?赤い指輪なかった?』

『その青い指輪は俺ので、リカちゃん用は、赤い指輪を用意してたんだけど、さすがに無くなっちゃったのかな。』

『そうなんだ…。』

『ま、いいや!じゃ、買いに行こうか!改めて!結婚指輪!プラスチックじゃないの!』

『うん!』

私とカンちゃんは、いつも一緒。二人だけの秘密なんていくつあるかな?数えらんないね。でも一つだけ、カンちゃんにも秘密してる事があるの…。

ホントはね、赤い指輪も見つけたの。でも、見つからなかった事にしたの。だって、ね…。

『うわぁ!キレイ!やっぱり、ダイヤってキレイだね!』

もう、大人だもんね!


                                                ー完ー
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

幼馴染の婚約者ともう1人の幼馴染

仏白目
恋愛
3人の子供達がいた、男の子リアムと2人の女の子アメリアとミア 家も近く家格も同じいつも一緒に遊び、仲良しだった、リアムとアメリアの両親は仲の良い友達どうし、自分達の子供を結婚させたいね、と意気投合し赤ちゃんの時に婚約者になった、それを知ったミア なんだかずるい!私だけ仲間外れだわと思っていた、私だって彼と婚約したかったと、親にごねてもそれは無理な話だよと言い聞かされた それじゃあ、結婚するまでは、リアムはミアのものね?そう、勝手に思い込んだミアは段々アメリアを邪魔者扱いをするようになって・・・ *作者ご都合主義の世界観のフィクションです

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

処理中です...