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今更、日常に戻れる気がしない❹
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❹
次の日から私があらゆる魔物と戦わせられ、休み時間ですら魔力の循環と練り方に充てられる様が映し出される。
「男の名はディグノ・トレイル。世界に数人しか居ない最年少のS級冒険者で私の…スパルタ教師だった」
最初は小さなスライムみたいな魔物から屠り、段々とこちらのレベルが上がるにつれ、獣型の魔物や人型に近いゴブリン、オーガタイプを相手に先ずは遠距離攻撃で仕留めさせ、ゲーム感覚で殺戮に対する忌避感を徐々に麻痺させていった。
「最初は良かったんだー。訓練ばっかで鬱憤溜まってたからさ。魔物相手に暴れてスッキリ。でも、段々と距離が近付き、人タイプの魔族と打ち合った時」
心底、面白そうに嗤うアイツの瞳に気が付いたんだ。
それは歪で最強に肩を並べる程のアイツが、私という【怪物】を、【魔物を屠る最強の大量殺傷兵器】を、
モノを眺める目だったんだよ。
「それに気付いた時、私は愕然と膝から崩れ落ちたんだ~」
奇しくもソレは魔王戦の真っ只中で。
目の前のスクリーンには迫り来る幾千万の魔物の前で力を無くす私の姿があった。
初めて目を見張り、血相を変えて走り寄る男の姿も。
私は何をしているんだ。
私は何に変えられてしまったんだ。
私は、私は…。
いつの間に、あの、酷い男をこんなに好きになってしまっていたのか。
絶望がこの身を覆った。
「気が付けば全方位防御で全てを拒否して、敵の真ん中に転移して、そこで感情と共に魔力暴走を起こして重力変動によって半径数百キロの巨大なクレーターを作って。
────死屍累々の魔物軍の中心で、私は倒れた」
目の前に虚ろな表情に滂沱の涙を流し続ける自分が地面に倒れている様子が流れ続けている。
アイツが私の名を叫びながら全力で駆け寄ってくるが全方位防御がそれを阻む。
激しい斬撃の音。剣に魔力を乗せてディグノが防御壁を破ろうと必死になっていた。
「…この男はお前を騙していたんだろう?何で、こんなに…」
私は何でもない顔をしてコメカミをグリグリと人差し指で摩る。
「ディグ曰く、ここにきて初めて自分の本当の気持ちに気が付いた…とか抜かしてたね、そう言えば」
思えば心を預け過ぎたのだ。
私の周りには幸いにして【勇者】を尊ぶ者が多かった。だから、指導には細心の注意が払われ、遅々として進まぬチートの開花にも表立って溜息を吐く者はいなかった。
だから、怖かった。
いつ、見捨てられるのか。
見切りを付けられれば役立たずの私の為に態々帰還の儀などやってくれないんじゃないのか。
この世界にたった一人の【勇者】。
それはただの化け物じみた力を持つ異なる世界の、死んでも誰も困らない異質なる女だった。
「まあねー、そんな訳でココからはそう面白い話じゃないから切り上げるわ。この後すったもんだあって、魔物の親分である魔王を倒した私は、その褒美に彼方で開花した【力】を閉じずに帰還を果たしたのさー」
そして英雄を送り出すに相応しく、再び集まった錚々たる各国の魔術師達により、私はこちらの世界の限りなく召喚した時に近い時間に送り還される。そう、私にとって五年の月日をまるで無かったかの如く。
「これが私の一泊二日の旅行の詳細さあ」
次の日から私があらゆる魔物と戦わせられ、休み時間ですら魔力の循環と練り方に充てられる様が映し出される。
「男の名はディグノ・トレイル。世界に数人しか居ない最年少のS級冒険者で私の…スパルタ教師だった」
最初は小さなスライムみたいな魔物から屠り、段々とこちらのレベルが上がるにつれ、獣型の魔物や人型に近いゴブリン、オーガタイプを相手に先ずは遠距離攻撃で仕留めさせ、ゲーム感覚で殺戮に対する忌避感を徐々に麻痺させていった。
「最初は良かったんだー。訓練ばっかで鬱憤溜まってたからさ。魔物相手に暴れてスッキリ。でも、段々と距離が近付き、人タイプの魔族と打ち合った時」
心底、面白そうに嗤うアイツの瞳に気が付いたんだ。
それは歪で最強に肩を並べる程のアイツが、私という【怪物】を、【魔物を屠る最強の大量殺傷兵器】を、
モノを眺める目だったんだよ。
「それに気付いた時、私は愕然と膝から崩れ落ちたんだ~」
奇しくもソレは魔王戦の真っ只中で。
目の前のスクリーンには迫り来る幾千万の魔物の前で力を無くす私の姿があった。
初めて目を見張り、血相を変えて走り寄る男の姿も。
私は何をしているんだ。
私は何に変えられてしまったんだ。
私は、私は…。
いつの間に、あの、酷い男をこんなに好きになってしまっていたのか。
絶望がこの身を覆った。
「気が付けば全方位防御で全てを拒否して、敵の真ん中に転移して、そこで感情と共に魔力暴走を起こして重力変動によって半径数百キロの巨大なクレーターを作って。
────死屍累々の魔物軍の中心で、私は倒れた」
目の前に虚ろな表情に滂沱の涙を流し続ける自分が地面に倒れている様子が流れ続けている。
アイツが私の名を叫びながら全力で駆け寄ってくるが全方位防御がそれを阻む。
激しい斬撃の音。剣に魔力を乗せてディグノが防御壁を破ろうと必死になっていた。
「…この男はお前を騙していたんだろう?何で、こんなに…」
私は何でもない顔をしてコメカミをグリグリと人差し指で摩る。
「ディグ曰く、ここにきて初めて自分の本当の気持ちに気が付いた…とか抜かしてたね、そう言えば」
思えば心を預け過ぎたのだ。
私の周りには幸いにして【勇者】を尊ぶ者が多かった。だから、指導には細心の注意が払われ、遅々として進まぬチートの開花にも表立って溜息を吐く者はいなかった。
だから、怖かった。
いつ、見捨てられるのか。
見切りを付けられれば役立たずの私の為に態々帰還の儀などやってくれないんじゃないのか。
この世界にたった一人の【勇者】。
それはただの化け物じみた力を持つ異なる世界の、死んでも誰も困らない異質なる女だった。
「まあねー、そんな訳でココからはそう面白い話じゃないから切り上げるわ。この後すったもんだあって、魔物の親分である魔王を倒した私は、その褒美に彼方で開花した【力】を閉じずに帰還を果たしたのさー」
そして英雄を送り出すに相応しく、再び集まった錚々たる各国の魔術師達により、私はこちらの世界の限りなく召喚した時に近い時間に送り還される。そう、私にとって五年の月日をまるで無かったかの如く。
「これが私の一泊二日の旅行の詳細さあ」
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