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なれれば苦労しなかった
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「ディグノォオオオオオオ─────────ッ!」
火蜥蜴が美女の足元に炎撃を打ち込んで、一瞬の隙を作ると、身体を捻って『少年』はしなやかな二本の檻から逃れた。
「何、何考えてんだっ?お前、好きで好きで堪らないからムツキ様を迎えに行ったんだろ?」
苛烈な視線に割り込んだグレンは困惑の極みにあったが、美女が元・同輩である事を本能的な勘で知った。
「んん、だから二人ともここに居るだろ?─────なにかおかしいかしら?」
「分かんねえって、おかしいって、何でムツキ様が男でお前が女で、勇者の血縁を何かに『使う』?おかしくねぇ所がむしろ無ぇだろうがッ‼︎」
一方、逞しい背中に回り込んだジャニアリィも頭の回転数をぐるぐるフル回転させていた。
考えろ、考えろ睦月!
師匠の弱点は何だ⁉︎ッば思いつけ、何だ何だ何だッ⁉︎
「てか、こんなピンチに思い付くかよ⁉︎だけど、流石にキラーイな妹でも死なれたら後味悪いしィ─────ッ!んががが、態々ソレこそを狙って『私』があっちでその手の爪痕残してきたっつーのに!何してくれてんだ、師匠ォー‼︎」
無詠唱で溜めてたチカラを背中に一気に解放すると、半透明の翅がバンッ‼︎と広がり、火蜥蜴の肩を踏み台にギルドの鐘つき櫓を一気に駆け上がる。
「────────だから、お前はツメが甘いっていうんだよ」
敵は情けを掛けずに粉砕しろ、って言ったろ?
重力無視して脚力に赤い吸着の魔力光を乗せて、見る間に距離を詰めてくる。
「妹は【敵】じゃない」
「反応を、睦月が、気にしている時点で、立派な磨滅対象だ」
護りの筈の『全方位防御』をぶつけ合い、コマの様に弾き合う。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい、何か決定的に拗らせてんゾォこのボイン(死語)~!
「─────────『俺』から、『死んで』逃がれようとするなんて」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!
全ての防御膜が剥がれ落ち、素の肌が触れ合って…抱き込まれた。
「そんなに俺が─────────嫌いかよ」
泣きそうで吐息の様な囁きが切なく、つい、耳に届いてしまった。
「あ~あ、─────────降参だよ。降参降参~」
『美女』の背中に腕を伸ばして宥めるべくポンポンした『少年』は、諦めた様な、それでいてすっきりした響きの答えを出した。
…もういいや。たとえこれが『この男』の罠か謀であっても、《可愛い》と思っちゃった時点でもうこちらの負けだわ。
「とにかく贄使ってまで戻ろうとすんの止めろ。暫くこのままでいいんなら傍にいてやる」
「…童貞食わ「ヤメロ、その内魔物の滅法強えのとかバンバン倒して魔石作って溜めて何とかすっから。むしろ師匠…いや、ディグ…アンタのチカラで」
重力変動を地上に展開して、羽根の如くフワリと二人は降り立った。
ぎゅうぎゅうと更に抱き込んでくる『美女』にもうナスがまま、胡瓜がパパの『私』は『彼女』を纏わり付かせたまま、そのままズルズルと引き摺って建物の中に入っていく。コイツと逢背を組む為に。モノごっつい衆人環視の中を、微々たるスピードで。
「くそ、これが【勇者の物語】の結末だなんて…信じられねえ…」
「幸せにするのに」
「誰が、だよ⁉︎」
「もちろん『俺が』」
「…この先妊娠とかしたら、アンタの《暴れン棒》は軟体生物にでも差しとけよ。浮気は容赦無く養育費ふんだくって捨てるからな」
「もう【人の理】を色々越えちゃったあたし達は多分この先二人きりだから安心なさいよ。それに挿すならお前にずっと延々と挿しとくわ」
「挿す言うな!何か卑猥なんじゃあ!」
もうすぐ、カウンターに辿り着く。受付嬢の引き攣った顔が妙に笑えて、苦笑に限りなく似通った笑みを浮かべる。
fin.
火蜥蜴が美女の足元に炎撃を打ち込んで、一瞬の隙を作ると、身体を捻って『少年』はしなやかな二本の檻から逃れた。
「何、何考えてんだっ?お前、好きで好きで堪らないからムツキ様を迎えに行ったんだろ?」
苛烈な視線に割り込んだグレンは困惑の極みにあったが、美女が元・同輩である事を本能的な勘で知った。
「んん、だから二人ともここに居るだろ?─────なにかおかしいかしら?」
「分かんねえって、おかしいって、何でムツキ様が男でお前が女で、勇者の血縁を何かに『使う』?おかしくねぇ所がむしろ無ぇだろうがッ‼︎」
一方、逞しい背中に回り込んだジャニアリィも頭の回転数をぐるぐるフル回転させていた。
考えろ、考えろ睦月!
師匠の弱点は何だ⁉︎ッば思いつけ、何だ何だ何だッ⁉︎
「てか、こんなピンチに思い付くかよ⁉︎だけど、流石にキラーイな妹でも死なれたら後味悪いしィ─────ッ!んががが、態々ソレこそを狙って『私』があっちでその手の爪痕残してきたっつーのに!何してくれてんだ、師匠ォー‼︎」
無詠唱で溜めてたチカラを背中に一気に解放すると、半透明の翅がバンッ‼︎と広がり、火蜥蜴の肩を踏み台にギルドの鐘つき櫓を一気に駆け上がる。
「────────だから、お前はツメが甘いっていうんだよ」
敵は情けを掛けずに粉砕しろ、って言ったろ?
重力無視して脚力に赤い吸着の魔力光を乗せて、見る間に距離を詰めてくる。
「妹は【敵】じゃない」
「反応を、睦月が、気にしている時点で、立派な磨滅対象だ」
護りの筈の『全方位防御』をぶつけ合い、コマの様に弾き合う。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい、何か決定的に拗らせてんゾォこのボイン(死語)~!
「─────────『俺』から、『死んで』逃がれようとするなんて」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!
全ての防御膜が剥がれ落ち、素の肌が触れ合って…抱き込まれた。
「そんなに俺が─────────嫌いかよ」
泣きそうで吐息の様な囁きが切なく、つい、耳に届いてしまった。
「あ~あ、─────────降参だよ。降参降参~」
『美女』の背中に腕を伸ばして宥めるべくポンポンした『少年』は、諦めた様な、それでいてすっきりした響きの答えを出した。
…もういいや。たとえこれが『この男』の罠か謀であっても、《可愛い》と思っちゃった時点でもうこちらの負けだわ。
「とにかく贄使ってまで戻ろうとすんの止めろ。暫くこのままでいいんなら傍にいてやる」
「…童貞食わ「ヤメロ、その内魔物の滅法強えのとかバンバン倒して魔石作って溜めて何とかすっから。むしろ師匠…いや、ディグ…アンタのチカラで」
重力変動を地上に展開して、羽根の如くフワリと二人は降り立った。
ぎゅうぎゅうと更に抱き込んでくる『美女』にもうナスがまま、胡瓜がパパの『私』は『彼女』を纏わり付かせたまま、そのままズルズルと引き摺って建物の中に入っていく。コイツと逢背を組む為に。モノごっつい衆人環視の中を、微々たるスピードで。
「くそ、これが【勇者の物語】の結末だなんて…信じられねえ…」
「幸せにするのに」
「誰が、だよ⁉︎」
「もちろん『俺が』」
「…この先妊娠とかしたら、アンタの《暴れン棒》は軟体生物にでも差しとけよ。浮気は容赦無く養育費ふんだくって捨てるからな」
「もう【人の理】を色々越えちゃったあたし達は多分この先二人きりだから安心なさいよ。それに挿すならお前にずっと延々と挿しとくわ」
「挿す言うな!何か卑猥なんじゃあ!」
もうすぐ、カウンターに辿り着く。受付嬢の引き攣った顔が妙に笑えて、苦笑に限りなく似通った笑みを浮かべる。
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でもなー、復讐は十二分に終わっているし、これから続けると師匠の執念に屈するまで延々とイチャコラを見せられるのか、うん、それ見たいなぁw
まぁなんやかんや言いながら完結お疲れ様です〜。
ハハハッ‼︎(某ネズミのノリ)更新サボっててすみませんでした。いやあ、枷の外れた睦月が言う事聞いてくれなくて。
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