42 / 80
日本海
第42話
しおりを挟む
フクシマ、ニイガタ、トヤマ。
ゆっくり南下しノトへ。
僕の時代の能登半島を模して申し訳程度に張り出していた。この時代の観光地もリゾート特区も僕からすれば箱庭みたいに再現されたニセモノで、あまり楽しめなかったけどガイドブック片手にはしゃぐまあがかわいくてそれが嬉しかった。
だから僕らはノトは周らずカナザワの名所ケンロクエンへ向かった。
しかしケンロクエンの再現度は低かった。ニッコウもそうだったけど、木材が稀少なこの時代では木造建築は不可能で、もっぱら床や壁材として高級感を醸す為に木材が使われていた。
それでも「これが学校で習ったケンロクエンか。
「初めて来たわ!そんなに遠くなかったけど、お金なくて旅行なんて出来なかったから」
そうか、海沿いじゃなくて次のフクイのリゾート特区の山を南下したらギフ。すぐ隣はナガノだ。
また先を急ぐみたいな嫌な気分が足元から心臓に届く前に、まあちゃんの鼻をきゅうっとつまんで「あ、ごめっ…」我に返るまあの左手を引っ張ってベンチから立ち上がり、早足でずんずん歩き出した。
「ねえ、怒ったの?ごめんね!」「ねえ、ねえったら!」立ち止まり、振り返るとまあは泣きそうな顔してた。
「幸せだね、まあちゃん。僕らふたり、時間に縛られずに、ゆっくり旅をしてる。ごはんは食堂、風呂は温泉、洗濯はランドリー。歳をとってやっと、そんな時間を手に入れたんだ。だけどそのうちまた、例えばまあちゃんの娘たちに子供が出来たりしたら、また忙しくなっちゃうんだ。嫌いな言葉だけど、僕はラッキーだよ。まあちゃんの人生のいちばん長い隙間を一緒に居られるんだからさ。だからゆっくり、ゆっくり進もう。まあちゃんガイドブックのトットリのとこばっか見てわくわくしてるみたいけど、おあずけだよ」まあはまた酷く嬉し泣きして、鼻をかんだ。
屋台を見つけた。
焼きそばにじゃがバター。
懐かしくてふたりそれに缶ビール。
プロジェクターの夕焼けのもと、ふたり馬鹿みたいに「あーんして」と食べさせ合って、ずっとそこに居たかった。
ゆっくり南下しノトへ。
僕の時代の能登半島を模して申し訳程度に張り出していた。この時代の観光地もリゾート特区も僕からすれば箱庭みたいに再現されたニセモノで、あまり楽しめなかったけどガイドブック片手にはしゃぐまあがかわいくてそれが嬉しかった。
だから僕らはノトは周らずカナザワの名所ケンロクエンへ向かった。
しかしケンロクエンの再現度は低かった。ニッコウもそうだったけど、木材が稀少なこの時代では木造建築は不可能で、もっぱら床や壁材として高級感を醸す為に木材が使われていた。
それでも「これが学校で習ったケンロクエンか。
「初めて来たわ!そんなに遠くなかったけど、お金なくて旅行なんて出来なかったから」
そうか、海沿いじゃなくて次のフクイのリゾート特区の山を南下したらギフ。すぐ隣はナガノだ。
また先を急ぐみたいな嫌な気分が足元から心臓に届く前に、まあちゃんの鼻をきゅうっとつまんで「あ、ごめっ…」我に返るまあの左手を引っ張ってベンチから立ち上がり、早足でずんずん歩き出した。
「ねえ、怒ったの?ごめんね!」「ねえ、ねえったら!」立ち止まり、振り返るとまあは泣きそうな顔してた。
「幸せだね、まあちゃん。僕らふたり、時間に縛られずに、ゆっくり旅をしてる。ごはんは食堂、風呂は温泉、洗濯はランドリー。歳をとってやっと、そんな時間を手に入れたんだ。だけどそのうちまた、例えばまあちゃんの娘たちに子供が出来たりしたら、また忙しくなっちゃうんだ。嫌いな言葉だけど、僕はラッキーだよ。まあちゃんの人生のいちばん長い隙間を一緒に居られるんだからさ。だからゆっくり、ゆっくり進もう。まあちゃんガイドブックのトットリのとこばっか見てわくわくしてるみたいけど、おあずけだよ」まあはまた酷く嬉し泣きして、鼻をかんだ。
屋台を見つけた。
焼きそばにじゃがバター。
懐かしくてふたりそれに缶ビール。
プロジェクターの夕焼けのもと、ふたり馬鹿みたいに「あーんして」と食べさせ合って、ずっとそこに居たかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる