地球に落ちた(元)神様〜移住先で自由気ままな人生はじめました〜

涼月あん

文字の大きさ
45 / 68

45☆ 島巡り3=大久・後編=

しおりを挟む
モウモウ牧場から南に進路を変え、やおたか酪農園に向かって、車を走らせた。

やおたか酪農園は、大久と綿津の中間地点で、やおろず山脈側にあった。それほど大きくない敷地だが、牧草地が広がっていた。

やおたか酪農園に着いたので、全員車から降りた。しかし⋯門がしまっていた。人のいる気配がなかった。ほんとにここか?と疑問に思っていたら、門の向こう側から、老人が来て声をかけてきた。

『なにか用か?』

「ここは⋯やおたか酪農園ですか?」

『ああ⋯そうじゃよ。この酪農園は、一ヶ月後に閉園するんじゃが⋯』

「閉園とは⋯酪農園をやめると言う事ですか?どうして?」

『そうじゃ⋯もう経営できなくなっての~。跡継ぎもいないし、ワシも年だからの~続けていけなくなったんじゃ』

「そうですか⋯。次の経営者は決まりましたか?」

『いんや⋯誰も⋯。ここはキッパリ閉めることに⋯⋯』

ゼウスナーが老人に聞いたところ、どうやら後継者不足と経営難が理由で経営をやめるようだ。一ヶ月後と言ったが、牛の売却も含め、現状はどうなっているか知る必要がある。ゼウスナーは再び、老人に聞いた。

「中の牛はもう売り払いましたか?」

『いや⋯みな⋯我が子のように育てたんじゃ⋯まだ中にいる⋯別れがたくてのう⋯』

「うむ⋯ならば⋯我々に⋯家畜も含め酪農園丸ごと売却しませんか?」

『へ?へ??へ???』

ゼウスナーは、急な話だったので老人をこれ以上混乱させては悪いと思い、酪農園の中の案内を頼んだ。

「突然すみません。私はゼウスナー・ギリリッシアと申します。天手でレストランを開く予定でして、自分の店に出すために、牛も育てたいと考えてまして⋯」

『そうじゃったのか。ほれ、ここが牛舎じゃ』

牛舎には、十頭くらいの牛がいた。今は、まだ妊娠している牛はいないようだ。しかし⋯どの牛も普通の牛だ。本当に神の力を持った牛が産まれるのかとゼウスナーは疑問に思った

《モーモー!モモーー!》

「そうか⋯うん⋯」

《モーモーモーモー!モモーー!》

「そう⋯なるほど⋯」

『ふぁふぁ⋯兄ちゃんは⋯花子の言う事がわかるのかい?』

「このコは花子と言うんですね。ええ⋯おじいさんが大好きだから⋯まだ一緒にいたいと言ってます。ご飯にはお米とワインをもう少し増やして欲しいとも⋯」

『ふぉふぉ、そうかい、そうかい。ワシが一番かわいがってる牛じゃ。花子はワインが大好きだからの~』

「アポロ⋯わかるのか?さすが⋯ギリリッシア動物人気ナンバーワンだな!ってことは⋯アルテもわかったりしてな!どうなんだ?」

「筋肉バカは、やっぱりバカだ。わかるわけがない⋯」

その後、和やかに老人と色々な話をした。牧場を経営する事になるが⋯かなり大変そうだと、ゼウスナー達は思った。

「生き物の世話は、大変そうですね。休みなく⋯働かなくてはいけないでしょうな⋯」

『そうじゃのう⋯御飯や牛舎の掃除⋯かなりの重労働じゃ⋯だが⋯かわいいと思って接すれば⋯苦ではなかったな⋯』

「おじいさんに飼われている牛達は⋯みな⋯おじいさんが大好きだと言ってました」

『ふぉふぉふぉ⋯そうかい!そうかい!そう言っておったかい!』

老人の話では、老人の娘夫婦とその子供⋯孫が時々手伝いをしてくれているようだ。娘夫婦にも話をしてから返事をしたいと言ったので、名刺と連絡先を渡し、また五日後に来訪する事を伝えた。

「では⋯五日後に、またお伺いします。どうぞよろしくお願いします」

『わかった、わかった⋯娘夫婦も呼んでおくので、話はその時に⋯』

「では⋯おじいさん、また五日後に!花子も元気で!」

『ふぉふぉ!花子と一緒に待っておるぞ!』
《モーー!モーーー!》

老人と別れたあとにゼウスナーは思考した。

(神様の神託に間違いはない⋯絶対に!自分達が神だったので⋯わかる。

しかも、神託を受けたのはアテナーシャだ。かつてギリリッシアでは、【先見神力】⋯少し先の未来を見通す神力⋯を持ち、人々に神託与えていた女神だ。

それに、アポロンドの話では、ほんの少しだが神の力を秘めている牛が二匹いたそうだ。

アポロンドはギリリッシアでは芸術の神。才能ある人々を発掘するのが得意だった。【見識神力】⋯(隠れている)本質や才能を見抜く力⋯を持っている。

ほんの少しの神力を秘めている二匹に黄金牛が産まれるのだろう。人々の手に渡る事を、懸念して我々に神託したのだろうか⋯。)

ゼウスナーは、いい返事を期待して、次なる村【火野家】に向かうことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...