9 / 12
第9話
しおりを挟む
「遥さんは中学の時何部だったの?」
私はさりげなく話しかける。
「中学の時は帰宅部だったよ。親に『部活より勉強!』って怒鳴られてさ。部活に入れさせてもらえなかったんだ」
遥はしょぼんとした顔になる。
「ゆりなさんは何部だったの?」
しまった。この質問は想定していなかった。
「わ、私は吹奏楽部だったよ」
昔マーチバンドに入っていたから嘘ではない。
「え~いいなぁ~。じゃあとりあえず吹奏楽部見に行こうよ!」
そんなこんなで、金管楽器が勢いよく鳴り響く音楽室の前まで来た。
音楽室のドアを開くと、先輩たちが一斉に集まってきた。
「新入生かな?よく来てくれた!さ、入って入って」
ほとんど無理矢理、中に入れさせられた。
「楽器経験ある?」
「ピアノなら小さい頃...」
遥がそう答える。
「じゃあ楽譜が読めるのか!Nice!あなたは?」
先輩が私にそう聞く。
「トランペットをやってました」
私がそう答えると、音楽室内に歓声が起きる。
「じゃあちょっとこれ吹いてみてよ」
先輩が塗装の剥げたボロいトランペットを私に渡してくる。
私はマーチバンドにいた時に演奏した「星条旗よ永遠なれ」を吹き始めた。
先輩たちの視線を感じる。みんなが練習を中断して私が吹くのを見ていた。特に隣の遥の目線がきつい。じーっと私を見ているのがわかる。
私が吹き始めて30秒ほど経ったところで、ドラムの一人が合わせて叩き始めた。それにつられて他の楽器も入ってくる。
気づけば一つの大きな楽団になっていた。なんだか昔に戻った気分だ。私は長らくこの感覚を忘れていた。瞼が熱くなる。
3分の演奏があっという間に終わった。
音楽室は歓声に包まれた。
「あんたすげーな!新入りなのにHiB♭出せんのか!」
「これでトランペットパートの人員不足も解決だな」
先輩たちが寄ってたかって私を褒める。
そこで私は雰囲気をぶち壊す一言を放った。
「入部するなんて一言も言ってませんよ」
しーんと静まり返る。
私は遥の手を掴み、音楽室から走って逃げた。
先輩たちが獲物を逃すまいという形相で追いかけてくる。あれに捕まったらもう戻ってはこれないだろう。
私は全力で走った。
追いかけてくる先輩たちを撒いたことを確認して走るのをやめた。
遥を握る手には汗が滲んでる。
「ちょっとゆりなさん!逃げてよかったの?!」
と、遥が息を上げながら聞いてくる。
「いいのいいの!さっきので十分楽しかったから!」
私は晴れ晴れとした気持ちで笑った。遥もつられて笑う。そして二人で大声を出して笑った。
心地の良い笑いだった。
私はさりげなく話しかける。
「中学の時は帰宅部だったよ。親に『部活より勉強!』って怒鳴られてさ。部活に入れさせてもらえなかったんだ」
遥はしょぼんとした顔になる。
「ゆりなさんは何部だったの?」
しまった。この質問は想定していなかった。
「わ、私は吹奏楽部だったよ」
昔マーチバンドに入っていたから嘘ではない。
「え~いいなぁ~。じゃあとりあえず吹奏楽部見に行こうよ!」
そんなこんなで、金管楽器が勢いよく鳴り響く音楽室の前まで来た。
音楽室のドアを開くと、先輩たちが一斉に集まってきた。
「新入生かな?よく来てくれた!さ、入って入って」
ほとんど無理矢理、中に入れさせられた。
「楽器経験ある?」
「ピアノなら小さい頃...」
遥がそう答える。
「じゃあ楽譜が読めるのか!Nice!あなたは?」
先輩が私にそう聞く。
「トランペットをやってました」
私がそう答えると、音楽室内に歓声が起きる。
「じゃあちょっとこれ吹いてみてよ」
先輩が塗装の剥げたボロいトランペットを私に渡してくる。
私はマーチバンドにいた時に演奏した「星条旗よ永遠なれ」を吹き始めた。
先輩たちの視線を感じる。みんなが練習を中断して私が吹くのを見ていた。特に隣の遥の目線がきつい。じーっと私を見ているのがわかる。
私が吹き始めて30秒ほど経ったところで、ドラムの一人が合わせて叩き始めた。それにつられて他の楽器も入ってくる。
気づけば一つの大きな楽団になっていた。なんだか昔に戻った気分だ。私は長らくこの感覚を忘れていた。瞼が熱くなる。
3分の演奏があっという間に終わった。
音楽室は歓声に包まれた。
「あんたすげーな!新入りなのにHiB♭出せんのか!」
「これでトランペットパートの人員不足も解決だな」
先輩たちが寄ってたかって私を褒める。
そこで私は雰囲気をぶち壊す一言を放った。
「入部するなんて一言も言ってませんよ」
しーんと静まり返る。
私は遥の手を掴み、音楽室から走って逃げた。
先輩たちが獲物を逃すまいという形相で追いかけてくる。あれに捕まったらもう戻ってはこれないだろう。
私は全力で走った。
追いかけてくる先輩たちを撒いたことを確認して走るのをやめた。
遥を握る手には汗が滲んでる。
「ちょっとゆりなさん!逃げてよかったの?!」
と、遥が息を上げながら聞いてくる。
「いいのいいの!さっきので十分楽しかったから!」
私は晴れ晴れとした気持ちで笑った。遥もつられて笑う。そして二人で大声を出して笑った。
心地の良い笑いだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる