11 / 12
第11話
しおりを挟む
グラウンド脇にある2号館へ私たちは向かった。
2号館は12階建の本校舎と違って、小さめの3階建だ。そこにはあらゆる文化系部活の部室がひしめいている。
2号館に入って奥の方にある階段を降りて地下に行った。
薄暗い廊下が続いていた。なんだか君が悪い。
さらに奥へと進むと、鉄製の扉があった。
青年は扉を開けるための指紋認証、網膜認証、パスワード入力を行った。高校の設備にしてはなかなか厳重である。
扉が開かれる。何が向こうにあるのだろうという高揚感が私を襲った。
暗い廊下に「光」と「音」が漏れ出す。
中は廊下と対照的に真昼のように明るく、私は思わず目を細めた。
瞼をゆっくり上げると、白衣を着た高校生が十人近く、機械のようなもので実験をしているのが見えた。
「ただの物理部じゃん」
私はそう遥に耳打ちした。
しかし青年に聞こえていたらしく、小馬鹿にするように笑った。
「こっちだ」
私たちは青年の案内されるがままに奥の方へと進んだ。
さっきから聞こえていた「音」の正体がわかった。
ガラス越しに射撃場が広がっていた。
生徒数人が射撃を行なっている。しかも実弾だ。
私はこの懐かしい光景に見惚《みと》れててしまっていた。
すると、青年は私と遥の前に立って両手を広げた。
「ようこそ先進戦術技術研究部、通称戦研へ。私が部長の海馬悠だ。」
海馬は軽くお辞儀をする。
「せんけん?そんなダサい名称誰が考えたのよ」
私はそうぼやく。
「無論、私が考えた」
海馬はもはや誇らしげに言う。
相手が自己紹介したからにはこちらもするのが礼儀だ。
「私は一年一組の古賀ゆりなです」
「私も同じ一年一組の近衛遥です」
遥が名前を言うと、海馬は目を丸くした。
「近衛遥って首席で入学した子だよね?いやー素晴らしい!」
海馬が遥に握手を求めた。遥は恥ずかしそうにそれに応じる。
「ともかく、何で学校に射撃場があるんですか。流石におかしいでしょう」
私は興奮を抑えて海馬に問う。
すると海馬は簡易型プロジェクターをポケットから取り出し、机に写し始めた。
「t-Sportsというのはご存知で?」
「いえ」
私にとっては初耳だった。
「戦術兵器を使ったスポーツのことですよね」
遥がそう答える。
「さすが首席。よくご存知で」
海馬が小さく拍手する。
なんか私が馬鹿にされたようで鼻につく。
海馬は説明を続ける。
「t-sportsの『t』は戦術の『t』だ。ちょうど二年前に日本で普及し始めた出来立てホヤホヤの競技なんだ。t-sportsは五十年前に流行ったサバイバルゲームやペイントボールの進化版のようなものだ」
「ちょうど五年前に銃規制が緩和されて、銃を使うスポーツがメジャーになったんですよね」
遥が口を挟む。
「その通りだ。技術の進歩と銃規制の緩和でこれまでにない高レベルな競技が誕生したのだ。t-sportsは基本的に実弾を使う」
するとプロジェクターにスーツの写真が映された。
「アダマントスーツ...」
遥が呟く。
「首席さんは何でも知ってるね。このアダマントスーツは銃弾に耐えうる強度と機動性を兼ね備えた装備だ。米国の特殊部隊ジ・エイスも使っている」
もちろん知ってます。
「さっき実験をしてたのは研究組のやつら。アダマントスーツとかの装備の製造、改良担当ね。さっき地上で撃ったレールガンも研究組の新作。威力高すぎて実際は使えないと思うけど」
流石にあれくらいの弾速があればアダマントスーツくらいは貫通する。
「研究組以外の奴らは実戦組。僕は両方を担当してるけど。これで大体この部の説明はしたかな。どう?入りたい?」
海馬はにっこりと微笑む。
「私ちょっと興味あります」
遥がそう口にした。
意外だった。大人しそうな印象だったからこういうのは苦手だと思っていた。
「おお!じゃあ早速やってみるか!古賀さんはどうする?興味ある?」
私は頷いた。遥が行くと言うなら私も行くしかない。興味がないわけでもないし。
「よし!二人ともついてこい!」
遥は海馬を追ってスキップしている。
こうなったら元特殊部隊の手腕を見せつけてやろうじゃないか。
2号館は12階建の本校舎と違って、小さめの3階建だ。そこにはあらゆる文化系部活の部室がひしめいている。
2号館に入って奥の方にある階段を降りて地下に行った。
薄暗い廊下が続いていた。なんだか君が悪い。
さらに奥へと進むと、鉄製の扉があった。
青年は扉を開けるための指紋認証、網膜認証、パスワード入力を行った。高校の設備にしてはなかなか厳重である。
扉が開かれる。何が向こうにあるのだろうという高揚感が私を襲った。
暗い廊下に「光」と「音」が漏れ出す。
中は廊下と対照的に真昼のように明るく、私は思わず目を細めた。
瞼をゆっくり上げると、白衣を着た高校生が十人近く、機械のようなもので実験をしているのが見えた。
「ただの物理部じゃん」
私はそう遥に耳打ちした。
しかし青年に聞こえていたらしく、小馬鹿にするように笑った。
「こっちだ」
私たちは青年の案内されるがままに奥の方へと進んだ。
さっきから聞こえていた「音」の正体がわかった。
ガラス越しに射撃場が広がっていた。
生徒数人が射撃を行なっている。しかも実弾だ。
私はこの懐かしい光景に見惚《みと》れててしまっていた。
すると、青年は私と遥の前に立って両手を広げた。
「ようこそ先進戦術技術研究部、通称戦研へ。私が部長の海馬悠だ。」
海馬は軽くお辞儀をする。
「せんけん?そんなダサい名称誰が考えたのよ」
私はそうぼやく。
「無論、私が考えた」
海馬はもはや誇らしげに言う。
相手が自己紹介したからにはこちらもするのが礼儀だ。
「私は一年一組の古賀ゆりなです」
「私も同じ一年一組の近衛遥です」
遥が名前を言うと、海馬は目を丸くした。
「近衛遥って首席で入学した子だよね?いやー素晴らしい!」
海馬が遥に握手を求めた。遥は恥ずかしそうにそれに応じる。
「ともかく、何で学校に射撃場があるんですか。流石におかしいでしょう」
私は興奮を抑えて海馬に問う。
すると海馬は簡易型プロジェクターをポケットから取り出し、机に写し始めた。
「t-Sportsというのはご存知で?」
「いえ」
私にとっては初耳だった。
「戦術兵器を使ったスポーツのことですよね」
遥がそう答える。
「さすが首席。よくご存知で」
海馬が小さく拍手する。
なんか私が馬鹿にされたようで鼻につく。
海馬は説明を続ける。
「t-sportsの『t』は戦術の『t』だ。ちょうど二年前に日本で普及し始めた出来立てホヤホヤの競技なんだ。t-sportsは五十年前に流行ったサバイバルゲームやペイントボールの進化版のようなものだ」
「ちょうど五年前に銃規制が緩和されて、銃を使うスポーツがメジャーになったんですよね」
遥が口を挟む。
「その通りだ。技術の進歩と銃規制の緩和でこれまでにない高レベルな競技が誕生したのだ。t-sportsは基本的に実弾を使う」
するとプロジェクターにスーツの写真が映された。
「アダマントスーツ...」
遥が呟く。
「首席さんは何でも知ってるね。このアダマントスーツは銃弾に耐えうる強度と機動性を兼ね備えた装備だ。米国の特殊部隊ジ・エイスも使っている」
もちろん知ってます。
「さっき実験をしてたのは研究組のやつら。アダマントスーツとかの装備の製造、改良担当ね。さっき地上で撃ったレールガンも研究組の新作。威力高すぎて実際は使えないと思うけど」
流石にあれくらいの弾速があればアダマントスーツくらいは貫通する。
「研究組以外の奴らは実戦組。僕は両方を担当してるけど。これで大体この部の説明はしたかな。どう?入りたい?」
海馬はにっこりと微笑む。
「私ちょっと興味あります」
遥がそう口にした。
意外だった。大人しそうな印象だったからこういうのは苦手だと思っていた。
「おお!じゃあ早速やってみるか!古賀さんはどうする?興味ある?」
私は頷いた。遥が行くと言うなら私も行くしかない。興味がないわけでもないし。
「よし!二人ともついてこい!」
遥は海馬を追ってスキップしている。
こうなったら元特殊部隊の手腕を見せつけてやろうじゃないか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる