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簒奪女王
王の隣人たち 1
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リードホルムの氷河王ノアとグラディスの宝石ベアトリス――ふたりの婚姻からひと月が過ぎようとしていた。ノアは結婚前と全く変わらぬ様子で、政務に忙殺される日々を送っている。
リードホルムの内政に関してベアトリスはほとんど蚊帳の外だが、これは結婚直前まで家門存亡の窮地にあった彼女に対してノアが配慮した結果でもある。そうではあるのだが、当のベアトリスはノルドグレーン――ヴァルデマルへの対応に専念することは叶わなかった。
かつてベアトリスの本拠地だったグラディスは、今や対ノルドグレーンの最前線となった。そこから、現在ベアトリスが身を置くリードホルム王国の首都ヘルストランドは遠く離れすぎている。距離という足かせによって、できることは大きく制限されているのだ。
ランバンデッドとグラディスの間で情報伝達に活躍した伝書鳩も、ヘルストランドまでの航路を飛ぶ訓練をさせた鳩はいない。また、グラディスの運営を委任したエディット・フォーゲルクロウとグスタフソン連隊に任せておけば、少なくとも冬の間は大事に至ることはないだろう――この安心感が、対ノルドグレーン戦略におけるベアトリスの切迫感を低減させていた。
こうしてベアトリスには、思いがけない精神の余裕と時間の猶予がもたらされた。無論ベアトリスはこの寸暇を無駄にはしない。図書省のサンテソン長官や軍務省のミュルダール長官のもとに自ら通い、リードホルムの政治機構や、その要路に立つ人物についての理解を深めるための時間に充てることにしていた。リードホルムの内務に精通すれば、ノアの両肩にのしかかる多大な政務のいくつかを、いずれ肩代わりすることもできるだろう。
ある日の午後、ベアトリスは侍従たちを招いてのアフタヌーンティーを準備させていた。これも単なる娯楽ではなく、侍従たちの視点からしか見えない情報を得るため、という側面もある。
だがそこに、ノアが会議をひとつ終えて午後は予定がない、という話が舞い込んできた。ベアトリスはノアの体調を案じつつも、茶会への同席を申し入れた。それは無事に認められ、ティーセットや焼き菓子を載せた三段式スタンドがノアの休憩室に運び入れられることになった。
夕方などには仮眠を取っていることが多いノアだったが、誘いに乗っただけあって顔色もよく、無理をしている様子はない。穏やかに紅茶を口にするノアに、ベアトリスは問いかけるように軽い愚痴を言った。
「やっと儀礼めいた門閥貴族との面会が落ち着いたと思ったら、今度はいろいろな物が届くようになりましたわ」
「いろいろなもの……?」
この頃ベアトリスのもとに、結婚祝いの品という名目で、主として反国王派の貴族たちから相次いで貢物が届けられていた。ベアトリスとしては、軽々に受け取るべきか判断に迷うところがあり、ノアの知恵を借りたかったのだ。
「なるほど……隔世の感があるな。別に皮肉で言うのではないが、私の即位時にはそのような献呈品はごく少数だったのだ。皮肉にしか聞こえないだろうが」
リードホルムの内政に関してベアトリスはほとんど蚊帳の外だが、これは結婚直前まで家門存亡の窮地にあった彼女に対してノアが配慮した結果でもある。そうではあるのだが、当のベアトリスはノルドグレーン――ヴァルデマルへの対応に専念することは叶わなかった。
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ランバンデッドとグラディスの間で情報伝達に活躍した伝書鳩も、ヘルストランドまでの航路を飛ぶ訓練をさせた鳩はいない。また、グラディスの運営を委任したエディット・フォーゲルクロウとグスタフソン連隊に任せておけば、少なくとも冬の間は大事に至ることはないだろう――この安心感が、対ノルドグレーン戦略におけるベアトリスの切迫感を低減させていた。
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「なるほど……隔世の感があるな。別に皮肉で言うのではないが、私の即位時にはそのような献呈品はごく少数だったのだ。皮肉にしか聞こえないだろうが」
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