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死別の悲劇
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翌朝、夜明けと共に帝国軍の総攻撃が始まった。二万の大軍が破竹の勢いで三方向からアルテミス城に押し寄せてくる。
「全軍、配置につけ!」
アドリアンの号令が城内に響いた。しかし、その声は昨日よりも明らかに弱々しかった。
エリアナは父の傍らで戦況を見守っていた。城壁の上から見る帝国軍の陣容は圧巻だった。整然と並んだ兵士たちが、まるで黒い波のように押し寄せてくる。
「父上、やはり私が指揮を」エリアナは心配そうに提案した。
「まだ大丈夫だ」アドリアンは咳をこらえながら答えた。「この城はそう簡単には落ちぬ」
戦いは朝から夕方まで続いた。アルテミス軍は果敢に抵抗したが、圧倒的な兵力差は如何ともし難かった。城壁の一部が破られ、帝国兵が城内に侵入し始める。
「危険です、父上!」エリアナは剣を抜いて父を守ろうとした。
その時、アドリアンが激しく咳き込み、その場に膝をついた。今度は大量の血を吐き、顔色が土気色に変わった。
「父上!」
エリアナは駆け寄って父を支えた。アドリアンの体は熱く、呼吸も荒かった。
「エリアナ」アドリアンは苦しい息の下で言った。「指揮を…お前に託す」
「父上、お気を確かに!」
しかし、アドリアンの意識は朦朧としていた。長期間の激務と病気が、ついに限界に達したのだ。
「お嬢様!」ウィンストンが軍医を連れて駆けつけた。
軍医がアドリアンを診察した結果は深刻だった。
「急性の肺炎です。それに加えて、内臓にも病気が進行している可能性があります」
「治療法は?」エリアナは必死に尋ねた。
「今は安静にするしか」軍医は首を振った。「戦場での治療は困難です」
エリアナは絶望的な気持ちになった。父が倒れた今、三千の兵士と領民の命を守るのは自分の責任だった。
「全軍に告げる!」エリアナは城壁に立ち、大声で叫んだ。「今より私、エリアナ・フォン・アルテミスが指揮を執る!」
兵士たちは動揺した。しかし、昨日の戦いでエリアナの実力を見ている者たちは、次第に彼女を受け入れ始めた。
「エリアナ様にお任せします!」
「アルテミス家の血筋であれば、我らも従います!」
エリアナは父から受け継いだ指揮官用の外套を羽織った。まだ十九歳の少女が、数千の命を預かる重責を背負った瞬間だった。
戦いは三日間続いた。エリアナは昼夜を問わず指揮を執り、時には自ら剣を振るって戦った。しかし、戦況は絶望的だった。
兵士の数は日毎に減り、城壁の損傷も激しくなっていく。そして何より辛いのは、父の容体が悪化の一途を辿っていることだった。
四日目の夜、アドリアンは最後の力を振り絞ってエリアナを呼んだ。
「エリアナ、来てくれ」
エリアナは父の横に座った。アドリアンの顔は痩せこけ、かつての偉丈夫の面影はなかった。
「父上、無理をなさらないでください」
「もう時間がない」アドリアンは娘の手を握った。「最後に言っておきたいことがある」
エリアナの目に涙が浮かんだ。
「お前は立派に育った」アドリアンは微笑んだ。「王都で辛い思いをしたが、それもお前を強くするためだったのかもしれない」
「父上」
「この城を、この領地を、お前に託す」アドリアンの声は弱くなっていた。「どのような決断をしても、父は誇りに思う」
「父上、まだ......きっと......」
しかし、アドリアンは首を振った。
「エリアナ、忘れるな。お前はアルテミス家の誇りだ。どこにいても、何をしても、その誇りを胸に生きていけ」
その言葉を最後に、アドリアンは静かに息を引き取った。
「父上! 父上!」
エリアナの叫び声が城内に響いた。しかし、もう父が応えることはなかった。
翌朝、アドリアンの死は城内に伝えられた。兵士たちは悲しみに沈んだが、同時にエリアナへの忠誠を強めた。
「お嬢様のために!」
「伯爵様の意志を継ぎます」
エリアナは涙を拭い、再び指揮官として立ち上がった。父の死を悼む時間はなかった。今は戦いに勝つことだけを考えなければならない。
しかし、その日の昼、ついに城壁が崩壊した。帝国軍が本格的に城内に侵入し、最後の決戦が始まった。
エリアナは僅かに残った兵士たちと共に、城の中央広場で最後の抵抗を続けた。もはや勝利の見込みはなかった。それでも、アルテミス家の誇りにかけて、最後まで戦い抜くつもりだった。
「エリアナ様、もうお逃げください!」マルクスが叫んだ。
「逃げません」エリアナは剣を構えた。「私はアルテミス家の当主。この地で果てるのが本望です」
その時、帝国軍の中から一騎の騎士が現れた。銀の甲冑に身を包んだその人物は、間違いなくルシアン皇帝だった。
「エリアナ・フォン・アルテミス!」ルシアンの声が響いた。「命を無駄にするな。降伏せよ!」
エリアナはルシアンを見上げた。その瞳には、まだ闘志が燃えていた。
「お断りします、陛下」エリアナは毅然として答えた。「私は最後まで戦います」
ルシアンの表情が変わった。この美しい女性が、死を覚悟してなお戦おうとしている姿に、何かを感じたようだった。
「君の父君は亡くなったのではないか」ルシアンは馬から降りた。「もう守るべき物はないはずだ」
「違います」エリアナは涙を浮かべながら叫んだ。「父の意志を、この土地を、領民を守るのです!」
その瞬間、ルシアンの心に強い衝撃が走った。この女性の美しさは、外見だけではない。その魂の美しさに、彼は心を奪われていた。
「素晴らしい」ルシアンは小さくつぶやいた。
そして、思いもよらない命令を下した。
「全軍、戦闘を中止せよ!」
帝国兵たちは困惑した。なぜ勝利目前で戦闘を中止するのか理解できなかった。
エリアナも驚いた。なぜ皇帝が戦いを止めたのか分からなかった。
ルシアンはエリアナの前に歩み寄った。
「君のような女性を殺すのは、この世界の損失だ」彼は静かに言った。
「陛下、何を」
「君の美しい魂に免じて、今日の戦いは終わりにしよう」
その言葉に、戦場に奇妙な静寂が訪れた。
エリアナは理解できなかった。なぜ敵の皇帝が、自分を助けようとするのか。しかし、その瞳に宿る真摯な光を見て、彼が嘘を言っていないことは分かった。
運命の歯車が、再び大きく回り始めようとしていた。
「全軍、配置につけ!」
アドリアンの号令が城内に響いた。しかし、その声は昨日よりも明らかに弱々しかった。
エリアナは父の傍らで戦況を見守っていた。城壁の上から見る帝国軍の陣容は圧巻だった。整然と並んだ兵士たちが、まるで黒い波のように押し寄せてくる。
「父上、やはり私が指揮を」エリアナは心配そうに提案した。
「まだ大丈夫だ」アドリアンは咳をこらえながら答えた。「この城はそう簡単には落ちぬ」
戦いは朝から夕方まで続いた。アルテミス軍は果敢に抵抗したが、圧倒的な兵力差は如何ともし難かった。城壁の一部が破られ、帝国兵が城内に侵入し始める。
「危険です、父上!」エリアナは剣を抜いて父を守ろうとした。
その時、アドリアンが激しく咳き込み、その場に膝をついた。今度は大量の血を吐き、顔色が土気色に変わった。
「父上!」
エリアナは駆け寄って父を支えた。アドリアンの体は熱く、呼吸も荒かった。
「エリアナ」アドリアンは苦しい息の下で言った。「指揮を…お前に託す」
「父上、お気を確かに!」
しかし、アドリアンの意識は朦朧としていた。長期間の激務と病気が、ついに限界に達したのだ。
「お嬢様!」ウィンストンが軍医を連れて駆けつけた。
軍医がアドリアンを診察した結果は深刻だった。
「急性の肺炎です。それに加えて、内臓にも病気が進行している可能性があります」
「治療法は?」エリアナは必死に尋ねた。
「今は安静にするしか」軍医は首を振った。「戦場での治療は困難です」
エリアナは絶望的な気持ちになった。父が倒れた今、三千の兵士と領民の命を守るのは自分の責任だった。
「全軍に告げる!」エリアナは城壁に立ち、大声で叫んだ。「今より私、エリアナ・フォン・アルテミスが指揮を執る!」
兵士たちは動揺した。しかし、昨日の戦いでエリアナの実力を見ている者たちは、次第に彼女を受け入れ始めた。
「エリアナ様にお任せします!」
「アルテミス家の血筋であれば、我らも従います!」
エリアナは父から受け継いだ指揮官用の外套を羽織った。まだ十九歳の少女が、数千の命を預かる重責を背負った瞬間だった。
戦いは三日間続いた。エリアナは昼夜を問わず指揮を執り、時には自ら剣を振るって戦った。しかし、戦況は絶望的だった。
兵士の数は日毎に減り、城壁の損傷も激しくなっていく。そして何より辛いのは、父の容体が悪化の一途を辿っていることだった。
四日目の夜、アドリアンは最後の力を振り絞ってエリアナを呼んだ。
「エリアナ、来てくれ」
エリアナは父の横に座った。アドリアンの顔は痩せこけ、かつての偉丈夫の面影はなかった。
「父上、無理をなさらないでください」
「もう時間がない」アドリアンは娘の手を握った。「最後に言っておきたいことがある」
エリアナの目に涙が浮かんだ。
「お前は立派に育った」アドリアンは微笑んだ。「王都で辛い思いをしたが、それもお前を強くするためだったのかもしれない」
「父上」
「この城を、この領地を、お前に託す」アドリアンの声は弱くなっていた。「どのような決断をしても、父は誇りに思う」
「父上、まだ......きっと......」
しかし、アドリアンは首を振った。
「エリアナ、忘れるな。お前はアルテミス家の誇りだ。どこにいても、何をしても、その誇りを胸に生きていけ」
その言葉を最後に、アドリアンは静かに息を引き取った。
「父上! 父上!」
エリアナの叫び声が城内に響いた。しかし、もう父が応えることはなかった。
翌朝、アドリアンの死は城内に伝えられた。兵士たちは悲しみに沈んだが、同時にエリアナへの忠誠を強めた。
「お嬢様のために!」
「伯爵様の意志を継ぎます」
エリアナは涙を拭い、再び指揮官として立ち上がった。父の死を悼む時間はなかった。今は戦いに勝つことだけを考えなければならない。
しかし、その日の昼、ついに城壁が崩壊した。帝国軍が本格的に城内に侵入し、最後の決戦が始まった。
エリアナは僅かに残った兵士たちと共に、城の中央広場で最後の抵抗を続けた。もはや勝利の見込みはなかった。それでも、アルテミス家の誇りにかけて、最後まで戦い抜くつもりだった。
「エリアナ様、もうお逃げください!」マルクスが叫んだ。
「逃げません」エリアナは剣を構えた。「私はアルテミス家の当主。この地で果てるのが本望です」
その時、帝国軍の中から一騎の騎士が現れた。銀の甲冑に身を包んだその人物は、間違いなくルシアン皇帝だった。
「エリアナ・フォン・アルテミス!」ルシアンの声が響いた。「命を無駄にするな。降伏せよ!」
エリアナはルシアンを見上げた。その瞳には、まだ闘志が燃えていた。
「お断りします、陛下」エリアナは毅然として答えた。「私は最後まで戦います」
ルシアンの表情が変わった。この美しい女性が、死を覚悟してなお戦おうとしている姿に、何かを感じたようだった。
「君の父君は亡くなったのではないか」ルシアンは馬から降りた。「もう守るべき物はないはずだ」
「違います」エリアナは涙を浮かべながら叫んだ。「父の意志を、この土地を、領民を守るのです!」
その瞬間、ルシアンの心に強い衝撃が走った。この女性の美しさは、外見だけではない。その魂の美しさに、彼は心を奪われていた。
「素晴らしい」ルシアンは小さくつぶやいた。
そして、思いもよらない命令を下した。
「全軍、戦闘を中止せよ!」
帝国兵たちは困惑した。なぜ勝利目前で戦闘を中止するのか理解できなかった。
エリアナも驚いた。なぜ皇帝が戦いを止めたのか分からなかった。
ルシアンはエリアナの前に歩み寄った。
「君のような女性を殺すのは、この世界の損失だ」彼は静かに言った。
「陛下、何を」
「君の美しい魂に免じて、今日の戦いは終わりにしよう」
その言葉に、戦場に奇妙な静寂が訪れた。
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