なけなしの石で引いたガチャから出てきた娘がただのレアだった件

きゅちゃん

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第32話 再会

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…それから数日後、俺は大学を辞めた。
小野寺さんの会社に入社させてもらい必死に働きながらスキルを身につけた。
プログラミング、経営学、会計学、法律…ありとあらゆる、ビジネススキルを小野寺さんとアストライア団長に叩き込まれた。
もともと頭がそんなに良くない俺には、地獄というほかはない辛さだった。
でも、ニアと再会するためだと思えば、どんな苦難も乗り越えられた。

…数年後、アストライア団長と小野寺さんに出資してもらい、俺は一国一城の主として起業。
業務内容はもちろん…VRMMOの運営だ。
業界団体を結成し、政治家へのロビー活動も行い、VRMMOの啓蒙普及に努め、銀行や行政機関の理解を得ることも忘れなかった。
受託運用や下請けの下請けといった地味な仕事もこなし、少しずつ資金と信用を集めていった。
もちろん小野寺さんたちの間接的なバックアップのお陰もあるが、俺は自分がこんなにも成長できたということに驚いていた。
…人間、大きな目標があるとどこまでも頑張れるものらしい。

「恋する男は強いんだな」

そういって小野寺さんに優しく笑われたこともある。
それについては全く否定のしようもなかった。
俺の心には…ただひとり、ニアだけがいた。

そして俺の目の前には…再び山形さんが座っている。
頭にすっかり白いものが目立つようになった山形さんが、ほっと息をついた。

「リョウキさん…この数年、あっという間でしたね」

「…俺にとっては一日千秋の思いでした」

「そうでしょう…」

そうして山形さんは深々と頭を下げた。
そして、ノートPCを取り出すと、俺の目をじっと見つめる。

「リョウキさんのニア・インクからの資金…確かに受け取られたようです」

…全てはこの日のために。
俺は身を粉にして働いてきたのだ。
ルーンデスティニーのサービス終了時のデータは、スポンサーのアリア・ソリューションによって保存されてきた。
俺は会社を設立し、順調に事業を拡大させ、アリア・ソリューションからデータを買収したのだ。
決して安い金額ではなかったが、俺にとってその多寡は問題ではない。

「データ…転送します」

緊張した面持ちで、山形さんがニア・インクの運営するメインサーバにデータを転送する。

「…いきますか」

俺はそういって、最新型のヘッドギアを手に取る。

「そうだな」

「うむ」

小野寺さんとアストライア団長が微笑んで、同じようにヘッドギアを手に取る。
少し、手が震えた。

脳裏に懐かしい白いウィンドウが浮かび、ウィイイン…というハードの起動音がする。
胸の鼓動が異常に早くなり、緊張が全身を支配する。
待ち望んだ瞬間だというのに…待ち望みすぎて、恐怖を感じるほどだ。

「ルーンデスティニーの世界へようこそ」

…ああ、戻ってきた。
とうとう戻ってきたのだ、この世界に。

きらめく「Continue」の文字に、俺は涙がこみ上げてくるのをぐっと抑える。
…まだだ、まだ泣く時間じゃない。

全身を覆う光の出現エフェクト。
その時間がもどかしい。
…首都ダナン、白の騎士団本部。

何もかもが、あの夜のまま。
テクスチャ一つ違わず再現されていた。

ゆっくりと目を開いたその先に。
誰よりも恋い焦がれた、彼女が待っている。
ほっそりとした、けれど芯の強さを感じさせるシルエット。
どこまでも懐かしい、柔らかい声。

「おかえりなさい、リョウキ」

「…ただいま、ニア」

End
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