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第1話 聖女のフリをする少女
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私の名前はルーナ・フェイク。もちろん偽名である。
本名はルナ・スミス。貧民街の孤児院出身で、魔力はほぼゼロ。それなのに今、王国で最も神聖とされる聖女の座に就いている。
つまり——詐欺師だ。
「ルーナ様、本日も美しくていらっしゃいます」
侍女のメイドが恭しく頭を下げる。私は慣れた様子で微笑みを浮かべた。
「ありがとう、アンナ」
声のトーンを少し高めに、表情は穏やかに。三年間の練習の成果で、今では完璧な聖女の演技ができる。
鏡に映る自分を見つめる。淡い金髪に青い瞳、白いドレスに身を包んだ姿は確かに聖女らしい。でも——
(魔力検査さえなければ、私は完璧な聖女なのに)
聖女に必要なのは、美貌と品格、そして強大な魔力。私は最初の二つは何とかクリアしているが、肝心の魔力が絶望的に足りない。
聖女の魔力は最低でも一般人の十倍は必要とされている。私の魔力は一般人の十分の一程度。もしバレたら——
「死刑、か」
呟いた瞬間、扉がノックされた。
「ルーナ様、聖女検証官のアルベルト様がお見えです」
私の血の気が引いた。
聖女検証官——偽物の聖女を見抜く専門家。今まで何度も接触してきたが、その度に冷や汗をかいている。
「お、お通しして」
声が少し震えてしまった。慌てて咳払いをして、聖女らしい落ち着きを装う。
扉が開いて、彼が入ってきた。
アルベルト・クリア。年齢は十八歳、私より二つ年上。黒髪に鋭い緑の瞳、整った顔立ちだが表情はいつも険しい。聖女検証官としての使命感からか、偽物を見る目は容赦がない。
「ルーナ様、本日もお美しい」
彼の挨拶は丁寧だが、どこか探るような響きがある。
「アルベルト様こそ、今日もお疲れ様です。何かご用でしょうか?」
彼は一歩近づいた。いつものことだが、彼と向き合うと心臓の鼓動が早くなる。バレるかもしれないという恐怖と——
(なんで、彼を見ると胸がドキドキするんだろう)
最近、その理由がわからなくて困っている。
「実は、昨日の治癒魔法の件でお聞きしたいことが」
げっ。
昨日、怪我をした子供の治癒を頼まれて、魔力のなさをごまかすために手品のような小細工をした。まさか、それがバレた?
「ああ、あの子のことですね。元気になったでしょうか?」
できるだけ自然に答える。演技、演技。
「ええ、おかげさまで。ただ——」
アルベルトの瞳が鋭く光った。
「治癒の過程で、少し気になることがありまして」
やばい。完全にやばい。
私の手のひらに汗がにじむ。でも、ここで動揺したら終わりだ。
「気になること、ですか?」
「はい。あの治癒魔法、通常の聖女の魔法とは少し——」
その時、窓の外で大きな爆発音が響いた。
「何事ですか!」
侍女のアンナが駆け寄る。窓の外を見ると、街の向こうで黒い煙が上がっている。
「魔物の襲撃のようです!」
アルベルトの表情が一変した。
「ルーナ様、すぐに避難を——」
「いえ、私は行きます」
咄嗟に口から出た言葉に、自分でも驚いた。でも、これは好機でもある。魔物退治で活躍すれば、先ほどの疑いをごまかせるかもしれない。
「危険です!」
「でも、困っている人々を見捨てるわけにはいきません」
これは演技ではなく、本心だった。偽物の聖女でも、人を助けたいという気持ちは本物だ。
アルベルトは一瞬、驚いたような表情を見せた。そして——
「わかりました。私がお護りします」
彼の声に、いつもとは違う温かみがあった。
(どうしよう、本当にドキドキしてる)
魔物よりも、自分の心臓の音の方が怖かった。
偽物の聖女が、本物の恋に落ちようとしているなんて——神様は意地悪だ。
「行きましょう、アルベルト様」
「はい、ルーナ様」
私たちは城を飛び出した。嘘に塗り固められた私の物語に、初めて本物の感情が混じった瞬間だった。
本名はルナ・スミス。貧民街の孤児院出身で、魔力はほぼゼロ。それなのに今、王国で最も神聖とされる聖女の座に就いている。
つまり——詐欺師だ。
「ルーナ様、本日も美しくていらっしゃいます」
侍女のメイドが恭しく頭を下げる。私は慣れた様子で微笑みを浮かべた。
「ありがとう、アンナ」
声のトーンを少し高めに、表情は穏やかに。三年間の練習の成果で、今では完璧な聖女の演技ができる。
鏡に映る自分を見つめる。淡い金髪に青い瞳、白いドレスに身を包んだ姿は確かに聖女らしい。でも——
(魔力検査さえなければ、私は完璧な聖女なのに)
聖女に必要なのは、美貌と品格、そして強大な魔力。私は最初の二つは何とかクリアしているが、肝心の魔力が絶望的に足りない。
聖女の魔力は最低でも一般人の十倍は必要とされている。私の魔力は一般人の十分の一程度。もしバレたら——
「死刑、か」
呟いた瞬間、扉がノックされた。
「ルーナ様、聖女検証官のアルベルト様がお見えです」
私の血の気が引いた。
聖女検証官——偽物の聖女を見抜く専門家。今まで何度も接触してきたが、その度に冷や汗をかいている。
「お、お通しして」
声が少し震えてしまった。慌てて咳払いをして、聖女らしい落ち着きを装う。
扉が開いて、彼が入ってきた。
アルベルト・クリア。年齢は十八歳、私より二つ年上。黒髪に鋭い緑の瞳、整った顔立ちだが表情はいつも険しい。聖女検証官としての使命感からか、偽物を見る目は容赦がない。
「ルーナ様、本日もお美しい」
彼の挨拶は丁寧だが、どこか探るような響きがある。
「アルベルト様こそ、今日もお疲れ様です。何かご用でしょうか?」
彼は一歩近づいた。いつものことだが、彼と向き合うと心臓の鼓動が早くなる。バレるかもしれないという恐怖と——
(なんで、彼を見ると胸がドキドキするんだろう)
最近、その理由がわからなくて困っている。
「実は、昨日の治癒魔法の件でお聞きしたいことが」
げっ。
昨日、怪我をした子供の治癒を頼まれて、魔力のなさをごまかすために手品のような小細工をした。まさか、それがバレた?
「ああ、あの子のことですね。元気になったでしょうか?」
できるだけ自然に答える。演技、演技。
「ええ、おかげさまで。ただ——」
アルベルトの瞳が鋭く光った。
「治癒の過程で、少し気になることがありまして」
やばい。完全にやばい。
私の手のひらに汗がにじむ。でも、ここで動揺したら終わりだ。
「気になること、ですか?」
「はい。あの治癒魔法、通常の聖女の魔法とは少し——」
その時、窓の外で大きな爆発音が響いた。
「何事ですか!」
侍女のアンナが駆け寄る。窓の外を見ると、街の向こうで黒い煙が上がっている。
「魔物の襲撃のようです!」
アルベルトの表情が一変した。
「ルーナ様、すぐに避難を——」
「いえ、私は行きます」
咄嗟に口から出た言葉に、自分でも驚いた。でも、これは好機でもある。魔物退治で活躍すれば、先ほどの疑いをごまかせるかもしれない。
「危険です!」
「でも、困っている人々を見捨てるわけにはいきません」
これは演技ではなく、本心だった。偽物の聖女でも、人を助けたいという気持ちは本物だ。
アルベルトは一瞬、驚いたような表情を見せた。そして——
「わかりました。私がお護りします」
彼の声に、いつもとは違う温かみがあった。
(どうしよう、本当にドキドキしてる)
魔物よりも、自分の心臓の音の方が怖かった。
偽物の聖女が、本物の恋に落ちようとしているなんて——神様は意地悪だ。
「行きましょう、アルベルト様」
「はい、ルーナ様」
私たちは城を飛び出した。嘘に塗り固められた私の物語に、初めて本物の感情が混じった瞬間だった。
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