呼び止められた記憶

花鳴金糸雀(KanariKanaria)

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 呼び止められた記憶

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 休み明けの通勤電車ってのは、大体みんな死んだ表情をしている。
どんな感じか解るだろ?
今さら確かめるまでもない現実だ。
もしこんな御時世に幸せそうな顔で歩いてる奴がいたら、大体頭がちょっとおかしいんだと察した方がいい。
一応断っておくが、これは差別的な話では断じてない。
そう言う垣根を飛び越えて、そう言う輩が多いと言う事なのだ。
-特に春先なんぞは。

「…おい」

満員の車内で俺に声を掛けてきたのは、年齢不詳のみすぼらしいスプリングコートを着た男だ。
ボサボサの不潔そうな長い白髪、頬の肉は痩け、そこから下顎まで無精髭がびっしりと生えている。
おかしな風体とすえたような体臭に周囲の乗客が遠ざかる。
なんだお前ら、まだこんなにスペースあったんじゃねえか。
四方の圧力から解放された俺は、男に構わず無言を決め込む事にした。

「おい、聞いてるのか?
俺にはもう、時間がないんだよ」

俺の肩を掴んで急に叫び出した男にざわめきが起こる。
-こいつの顔、どこかで。
しかし、俺にはホームレスの知り合いなどいない。

「人違いです」

俺は男の手を払って、大急ぎで電車を降りた。

「待て!」

男が後ろで何かを喚くが、駆けつけた駅員に取り押さえられる。

「俺の話を聞け‼
必ず後悔…」

誰が聞くかよ、バーカ。
ホームレスのストーカーなんて最悪だ。
俺は階段を早足に駆け上がった。

「おはよう御座います。
栗田さん」
「あぁ、おはよう。
前原くん」

会社に到着して受付係の子と挨拶をかわしていると、

「おい、前原」

同僚の宮北が声を掛けてきた。

「おう、おはよう」

高校からの腐れ縁に向かって軽く手をあげる。

「おう、じゃねーよ。
いつもより遅いじゃねえか」

宮北は何だか苛ついている様子だった。
そんな筈はないと反論する為に腕時計を見ると、確かに五分ほど遅かった。

「いや、電車で妙な奴にからまれてな。
多分、そのせいだろ。
それよりお前、俺を待ってたのか?」

無言で腕を引っ張ると、宮北は俺をエントランスの脇にある自販機の前へと連れていった。

「…前原、お前さ。
昨夜の十一時頃、何してた?」

こいつにしては珍しく神妙な顔つきだ。
俺は記憶を辿りながら答えた。

「どうしたんだよ、急に。
昨夜はたしか、会社帰りにコンビニで雑誌を立ち読みして、家に帰った筈だけど」
「その後、出掛けたりしなかったか?」
「…その後?」

どうも記憶がはっきりしない。
しかし、一度帰宅してから平日の夜に外出する事など、自分の行動パターンとしては有り得ない事だ。

「いや、ずっと家にいたよ。
それより血相変えて、何でそんな事が気になるんだ?」

俺の顔をじろじろと眺めながら、宮北は考え込んでいた。
再び俺が答えを促すと、言い辛そうに重い口を開いた。

「昨夜、お前によく似た奴が路地で女性を襲ってたんだよ」
「…はぁ?
そんな下らない理由で俺を疑ってたのか、お前」
「下らないとはなんだ!
女性を助けて急いで犯人を追い掛けたけど、逃げ足の早い奴で見失っちまって…」
「しかし、そんな暗がりで犯人の顔をはっきり確認したって言うのか?
それが俺だったと?」

もっともな質問をされ、宮北は黙り込んだ。
朝から婦女暴行の嫌疑を掛けられるとは、全く以て不愉快な話だ。

「とにかく、何に誓っても構わないが俺はやってないぞ!」
「あぁ、そうだよな。
…疑って悪かったよ」

俺の剣幕に押され、宮北がたじろぎながら謝罪した。

「解ったらほら、早く上がろうぜ」

俺はエレベーターのスイッチを押すと、ドアが開くのを待った。

 一日の仕事を終え、いつものコンビニに向かう。
店員の女の子ともすっかり顔馴染みになり、客がいない時などにはつい話し込んでしまう事も多い。

「いらっしゃいませー」
「あれ、今日は店員さん一人か」

レジカウンターで忙しなく作業をしているのは男性店員のみだった。

「ねぇ。
今日、大谷さんは休み?」

俺は切れていた牛乳パックを持ってレジに向かうと、男性店員に尋ねた。

「はい。
何だか昨夜から体調が悪いとかで」
「ふーん、そうなんだ。
お大事にって言っといて」

俺は清算を済ませて自動ドアの外に出た。
二、三歩進んだところで横から走ってきた男とぶつかり、レジ袋のなかの牛乳パックが地面に落ちて倒れた。

「すいま…あっ!」

謝るつもりだった言葉を半分残して、中年男は俺の顔を見るなり胸ぐらを掴んだ。

「こんなところに居やがったか!
あんた、うちの店で食い逃げしただろ‼」
「……え」

今日はよく濡れ衣を着せられる日だ。

「人違いじゃないですか?」
「いいや、確かにあんただった!」

男は俺を睨み付け、スマホを取り出した。

「ちょっ、何するんですか?!」
「けーさつだよ、けーさつ。
警察呼ぶに決まってんだろっ」
「待ってください!
俺は食い逃げなんてしてません」

いきり立っている男を何とか落ち着かせ、詳しく話を聞いてみると、午後八時頃に入店した男性客が蕎麦を食べ終わった後で忽然と姿を消したのだと言う。
その姿と言うのが、

「俺にそっくりだった、と?」

そんな筈はない。
今日は残業が長引いたせいで、その時間帯ならまだ帰りの電車に揺られていた筈だ。

「その時間、俺はまだ電車に乗っていました。
人の乗り降りが激しい駅なので、駅員が覚えているかは解りませんが確認して頂けますか?」
「この野郎、食い逃げした上に俺にそんな面倒な事までさせようってのか!」

店主の怒りが再び燃え上がる。

「い、いや。
そうではなくて。
警察沙汰にして人違いだった場合、まぁ、人違いなんですが。
ご主人のお立場の方が悪くなるんじゃないかと心配でして。
ほら、よく見てください。
本当にその食い逃げ、俺でしたか?
男が座ってたのは入り口付近、カウンターから一番遠い席だったんですよね?」

あくまでも冷静に、相手の立場になって説得を試みる。

「ううん。
そう言われると、こっちも厨房でドタバタしてたしな。
食い逃げなんて言語道断な話だが、警察が来て店に悪い噂が立つのも御免だ。
うちとしちゃ、代金さえ支払ってくれりゃ文句はねえのよ」

店主はちらりと俺の顔を見た。
どうして俺が見ず知らずの食い逃げ犯の為に、蕎麦代を払わなきゃならねーんだよ!
内心ではそう思ったがこれ以上、事が大きくなるのも面倒だ。
ここは妥協した方が賢明かと、俺は千円札を店主に手渡した。

「まいどあり、っと。
それじゃ、俺は店に戻るわ。
もう食い逃げなんてするんじゃねーぞ!」

してねーし。
釈然とした気持ちを拭えないまま、俺は家に帰る事にした。
突然の目眩に景色が歪む。
記憶力の欠乏に今度は目眩、これは一度病院で精密検査を受けるべきか。
その場に踞って目を閉じると、俺は本気で自分の健康状態を心配した。

なんだか地面がフワフワと揺れているような気がする。
酔っ払った時とはまた違う、例えるなら天地がひっくり返っているような感覚だった。
ようやく目眩が収まって瞼を開けると、奇妙な違和感を覚えた。
何も変わっていない筈の街並みが、やけに懐かしく感じる。
デシャブと言うやつだろうか?

「…やっぱり一度、診て貰うか」

俺は不安定な足取りで、手すりに凭れながらノロノロと進んだ。
人目につくのは嫌だったがこの際、仕方がない。
まだコンビニから五メートルも離れていない場所で人知れず奮闘していると、

「前原さん?!
ちょっと、大丈夫ですか!」

聞き覚えのある声が背後からした。

「…大谷さん?」

振り向くとそこに立っていたのは紛れもなく大谷史華だった。

「いや、ちょっと目眩がしてね。
それより君、今日は休みじゃなかったの?」

コンビニの制服を着ていると言う事は、俺が蕎麦屋の店主と揉めている間に出勤したのだろうか?
それにしては見掛けなかった気がするが。

「何言ってるんですか。
八時頃、うちのお店で会ってる癖に」
「…八時頃?
君こそ何を言っているんだ。
それは昨夜の話だろ」

そう言って立ち上がろうとした直後、俺の体がぐらりとよろけた。

「肩を貸しますね」

大谷さんに介助して貰いながら、通行の邪魔になっていた通りから路地裏の脇へと移動する。

「救急車、呼びましょうか?」
「いや、時間が経てば治まると思うんだ。
それより店の方はいいの?」

そう尋ねると、

「林くん一人でもこの時間帯は回りますから」

彼女はそう言って笑顔を見せた。
酔っ払ったサラリーマンが指笛を鳴らして俺達を冷やかす。
暗がりでイチャつくカップルだと勘違いされているのか。
俺は大谷さんに申し訳なかった。

「有り難う。
お陰でだいぶ良くなったよ」

もちろん、それは嘘。
未だに目眩の余韻で気分は最悪だった。
しかし、これ以上彼女を拘束すべきではない。
俺は勢いよく立ち上がって復活をアピールした、つもりだった。
だが、それが最悪の事態を招いた。
バランスを崩した俺は咄嗟に手を着こうと、あろう事か大谷さんの胸を鷲掴みにしてしまったのだ。

「きっ、キャーーーッ‼」

突然の出来事に悲鳴をあげる大谷さん。

「おい、そこで何してるっ‼」

足音と共に駆け付けたのは、偶然にも宮北だった。

「…こ、これは違」
「助けて下さい!」

覆い被さっていた俺を突き飛ばし、宮北にすがり付く大谷さん。
-さすがに状況が悪すぎる。
俺は路地の反対側へと必死に逃走した。
逃げたところで彼女がこの事を警察に話せばおしまいなのは解っていたが、あの場に留まっていても誤解をとける自信はなかった。
散々な気持ちで家に辿り着く。
気付けば目眩はすっかり治まっていた。
闇雲に走った事が荒療治になったのかも知れない。
シャワーを浴びて汗を流すと、疲労と眠気に負けてベッドに潜り込んだ。

 翌朝、俺は電車に揺られて風景をぼんやり眺めていた。
警察がアパートにやってくる事はなかったが、彼女は犯人が俺だと通報しなかったのだろうか。
ずっと仲良くしてくれていた大谷さんに、誤解を抱かれたままなのは辛かった。
そして、俺の顔を見たであろう宮北に対しても。

「おはよう御座います」

いつものように受付の女の子に挨拶をする。

「おっす、今日は早いな」

俺の肩に手を乗せて宮北が笑顔で言った。
なんだ、この反応は。

「どうしたんだよ、浮かない顔して」
「…宮北。
昨夜の事なんだけど」
「昨夜?
誰かと間違えてるんじゃないか。
俺は昨夜、お前となんか会ってないぞ」
「おい、冗談はよせ。
いくら暗かったとは言え、あの距離だぞ」
「知らねーよ。
寝惚けてたんじゃないか?」

宮北が嘘を言っているようには思えなかった。
こいつとは昨日も噛み合わない会話をしたばかりだ。
-何かがおかしい。
釈然としない気持ちではあったが、哀れな社畜としては会社に来て働かない訳にもいかない。
自分が抱えている膨大な仕事量を思うと、もはや溜め息も出なかった。

 帰り道。
コンビニを横切るのも躊躇われ、俺は車道を跨いで反対側の道を歩いていた。
車の往来もそこそこある広い道だ。
ここなら店内から見付かる事もまずあるまい。
時刻は午後の七時半。
昨日と同様に中途半端な時間に残業が終わったので、夕食がまだだった事に気付く。
-何か腹に入れるか。
辺りを見回すと、俺を食い逃げ扱いした蕎麦屋の暖簾が目についた。
この店に入ってきちんと代金を支払えば、あの店主も少しは考えを改めるかも知れない。
あるいは出てきた蕎麦が「クソ不味い」と文句を言ってやるのはどうだ。
それ自体は罪ではないのだし、先に犯人扱いしてきたのはあの親父の方なのだ。
それなら少しは気が晴れそうだし、無実の罪で散った俺の野口英世も浮かばれると言うものだ。
俺は上がる口角を必死で引き締めると、何気ない体を装って店の扉をあけようとした。
…目眩だ。またしても目眩がやってきた。
頭を抱えて踞るが、治まる気配はない。

「…さん」

誰かに声をかけられた気がするが、今はそれどころではなかった。
とにかく蕎麦屋に入って休ませてもらおう。
俺は立ち上がって扉を開き、なかに入った。

「へい、らっしゃい!」

威勢のいい声が狭い店内に響く。
この店、思ってたより繁盛してるんだな。
テーブルの半数以上が埋まっているのを見た俺は、クレームをつけるのは難しいかも知れないと思った。

看板娘らしい若い女性がお冷やを持って注文を取りにくる。
青い顔でコップの水を飲み干すと、気分がいくらかマシになった。

「ご注文はー?」

快活な声だが、今は少し耳障りだと感じた。
頭痛もしていたらもっと頭に響いただろう。

「…盛りそば、ひとつ」

俺は無愛想にそう告げると、テーブルの上に顔をつけた。
ひんやりとした感触が気持ちいい。
出来ればずっとこうしていたかった。
十五分ほど経過してうとうとし出した頃、

「お待たせ致しました。
盛りそば一人前になりまーす」

再びの雑音に起こされて俺は頭を上げた。
目の前には大きなザルに盛られた蕎麦がキラキラと輝いている。

「ご注文は以上で宜しかったですか?」
 
質問に無言で頷くと、店員は足音をパタパタと立てて厨房に戻っていった。
目眩はかなりマシになっている。
俺は割り箸を手にすると、空腹の胃袋に蕎麦を一気に流し込んだ。
気取ってチビチビと啜らない事、それが江戸っ子流の蕎麦の食い方だろう。
まぁ、俺は他県から移ったばかりで江戸っ子でも何でもないのだが。
大口を開けて一気に掻き込むと、大盛りだった蕎麦があっという間になくなった。
それと同時に再び目眩を覚えて目を閉じる。
座っていても目が眩むなんて、やはりおかしい。
眉間にシワを寄せた俺が目を開けると、目の前にはさっきの女性店員が立っていた。
気分でも悪いのかと心配してくれたのかも知れない。

「いらっしゃいませー。
ご注文は?」

…正直、バカを見る目で彼女を見てしまったのは謝る。
しかし、ほんの五分前に料理を平らげたばかりの客のところに、再び注文を取りにくるのは如何なものか。
俺は不快感を隠さず女性店員に告げた。

「おたく、ちゃんと客の顔とか見ながら仕事してる?
食ったばかりでそんなすぐ、腹なんて空くわけないでしょうが!」

大声で机の上をドンと叩くと、女性はびくりと肩を震わせた。
何事かと数人の客が俺達に注目する。

「…す、すみません。
で、でもですよ!
お腹いっぱいならどうしてウチの店に入ってきたんですか?!」
「…はぁ?」

俺は立ち上がると店員を睨み付けた。

「さっき盛りそば食ったから腹が膨れたんじゃねーかよ!」
「何を食べたかなんて聞いてません。
これ以上訳の解らない事を言うなら営業妨害で警察呼びますよ!」
「訳の解らない事を言ってるのはそっちだろっ?!」

俺は盛りそばの入っていたザルを指差して、女性店員に証拠を突き付けようとした。
しかし、そこにあった筈のザルが見当たらない。

「…また、あんたか」

店の奥から昨夜の店主がのそりとやって来た。

「食い逃げの次は営業妨害か。
ウチに一体、なんの恨みがあるってんだ!
おい、警察だ。警察を呼べ!」
「…前原さんっ!」

扉がガラリと開き、大谷史華が俺の腕を掴んだ。

「お、大谷さん?!」
「あんた、こいつの知り合いか?
ちょうど良かった。
こいつ連れてとっとと帰ってくれや。
今度そのツラ見せやがったら本当に警察呼ぶからな!」
「なんだと、この…」
「前原さん、ダメです!
一旦、落ち着いて。
皆さん、お騒がせしてすみませんでした。
すぐ出ていきますので」

大谷さんは俺の腕を引っ張ると、強引に店の外に連れ出した。
昨夜突き飛ばされた時も思ったが、意外と力の強い人だ。
近くの自販機でコーヒーを二つ買い、ブラックの方を俺へと差し出す。
常連だから好みもすっかり知られてるんだよな。
俺は礼を言ってそれを受け取り、大谷さんに尋ねた。

「どうして蕎麦屋に俺がいると?」
「偶然お店に入るところを見掛けたんです。
とても具合が悪そうだったから心配で…」

それで店の外で待っててくれたのか。
俺は改めて礼を言い、続けて昨夜の事を謝った。

「…あれはワザとじゃなかったんじゃないかって、あれから考えるようになって。
私の方こそあの時は大声だしてすみませんでした。
でも、おかしいわ」

何が引っ掛かったのか、大谷さんは俺の顔を不思議そうに見詰めた。

「コンビニの前で前原さんが倒れてたのって、でしょう?」

彼女の言葉を理解するのに数秒を要した。
いや、どう考えてもあれは昨夜の出来事の筈だ。

「やだ、前原さん。
言い間違い?
それともこんな時間なのに寝惚けてるの?」
「…どういう事だ」

俺の頭は完全に混乱していた。
昨日?一昨日?どっちなんだ。
記憶喪失?
いや、記憶が失われてる訳じゃない。
日付がずれてるんだ。
それも一日の内のほんの数十分の間だけが、前日の同じ時間のものとすり変わっている。
しかし、そこで俺は矛盾に気が付く。
では、彼女が俺と遭遇したと言う二日前の午後八時、俺は何をしていた?
彼女に介抱されて…いや、それは昨夜。
大谷さんに会ったのは昨夜だと脳が訴えてくる。
-考えろ、もっと情報をかき集めろ。
俺は缶コーヒーを握りしめたまま、一点を見つめて集中した。
コーヒー、自販機、会社の自販機、宮北、婦女暴行…。
そこでハッとする。
宮北が俺を問い詰めたのは二日前の朝の話だ。
身に覚えのなかった俺は無論、否定した。
そしてその日の夜、大谷さんに暴行していると間違えられ、俺は夜の街で宮北に遭遇している。
…順序が、完全に逆だ。

「……タイム、スリップ」

非科学的な結論に達せざるを得なかった。
例の激しい目眩が起きた後、どういう理屈かは見当もつかないが、俺の体は一日前の同じ場所に飛ばされてしまうらしい。
そう考えれば蕎麦屋の件も説明がつく。
蕎麦屋に入る前に起きた目眩。
それが原因で、俺は昨日の蕎麦屋にタイムスリップしていたのだ。
そして蕎麦を食べ終えた後、再び目眩に襲われて今日に戻ってきた。
その時点で昨日の俺は店から姿を消し、店主はそれを食い逃げと考えた。
あの店員は昨夜に続いて店を訪れた俺に対して、今日食べる分の注文を取りに来たのだ。
-なんて、ややこしい話だ。

「さっきから考え込んで、どうしたんですか?」
「…いや、何でもないです」

大谷さんが心配そうに俺を見た。
俺って何だかタイムスリップしてるみたい、とは口が裂けても言えない。
そんな事を話しても頭のおかしな奴と思われるだけだ。
それよりこいつを使って何か出来ないか。
…絶対に当たる占い師?
絶対に外さない天気予報士?

「…あの、前原さん、ですよね?」

知らない女の子から不意に声をかけられた。
少し明るめの茶髪に年齢は二十代前半くらいか。

「そうだけど、君は?」

俺が尋ねると女の子はプッと吹き出す。
その失礼な態度に俺は少しムッとした。

「はい、これ。
預かってたメモです」

女の子は砕けた感じでメモを俺の手に握らせた。
何が何だかさっぱり解らない。

「じゃあ私、行きますね」

呆然と立ち尽くす俺に向かって頭を下げると、女の子は去っていった。

「…お知り合いですか?」

なぜか不機嫌そうな大谷さんの言葉に、俺は首を振って答えた。

「きっと人違いですよ」

しかし、メモの表に書いてあった字に目を止めると、俺はすべてを理解した。
そこにはたった一言。

『明日の俺から、昨日の俺へ』

と書かれていたからだ。
つまりこいつは、何かを思い付いた後の俺からのメッセージって事か。
俺は震える指でゆっくりとメモを広げた。

『第一レース、ホワイトグレイス
第二レース、オカノワイルド
第三レース、コウノトリワンダー
第四レース…』

そこには明日の競馬の全結果が記されてあった。

「でかしたぞ、明日の俺ぇっ‼」

俺は人目も憚らずに何度も飛び跳ねた。
不審がる大谷さんと別れて家路につくと、俺は胸の興奮を押さえきれず、一睡も出来ないまま朝を迎えた。

「…はい、ゲホゲホッ。
そうなんです、ちょっと熱が高くて」

出来るだけ辛そうな声を出して会社を病欠すると、俺はメモを片手に朝から競馬場に赴いた。
鞄の中には銀行から引き出した全財産、五百万が入っている。

「競馬王に、俺はなるっ!」

ろくでもない野望だと笑いたい奴は笑え。
俺だって本来ならギャンブルなんてしない主義だ。
それでも百パーセント勝てる見込みがあるのだから、みすみすそのチャンスを逃すバカはいまい。

第一レースから最終レースまで全勝すると、俺の財産は一日で二千万に膨れ上がっていた。
これを繰り返せば大金持ちだって夢じゃない。
帰りの電車の中で鞄を抱えて眠りこけてしまったが、大金を盗まれると言う事もなく、俺は無事に帰宅した。
手に汗握る一日を送ったせいか、時間の経つのがやけに早く感じる。
気付けば辺りはすっかり暗くなり、時刻は夜の七時になろうとしていた。
-何か忘れているような?
俺はそれが何だったのかに気付くと、コートを羽織って夜の街に大慌てで飛び出した。
-そうだ、メモ。
俺はこのメモを、昨日の女の子に渡さなければいけないんだ。
しかし、会った事もない子をどうやって探せばいい?
大きな疑問は他にもあった。
俺は今日、タイムスリップできるのか?
それはいつ、どこにいる時だ。
思わぬ大金を手にし、浮かれていた数時間前までの自分を俺は呪った。
なんて単細胞だ、俺って奴は!
そもそもタイムスリップが起きる条件なんて、考えてもみなかった。
目眩が起きて気付いたら昨日の同じ時刻に飛んでいる。
たったそれだけの理解しか、俺はしていなかったのだ。
街中を走りながら、俺は人ごみから女の子を必死で探した。
-何か、彼女がいる場所の手がかりでもあれば。
足と目を動かしながら考える。
服装は何処にでも居るようなカジュアルな格好。
人相からしてクラブで夜遊びするようなタイプではない。
仕事が終われば本屋を覗いて、コンビニでアイスを買って帰るのが楽しみのような、ごく平凡な印象を受けた。
手に下げていたのも確か、コンビニのビニール袋…。
-そうだ、コンビニだ!
俺は隣町に入る直前の交差点で足を止めると、来た道を全速力で疾走した。
昨夜メモを受け取ったのが八時十五分頃。
同じ時刻まであまり時間がない。
俺は急いでコンビニに駆け込むと店内を見回した。
-いない、でも当然か。
俺がこのメモを手渡さなければならないのは、昨日このコンビニに来ていたかもしれない女の子なのだ。

「前原さん、いらっしゃい」

大谷さんが明るく声をかけてくれた。
それと同時に再び目眩が俺を襲う。
額に脂汗を滲ませて倒れ込むと、俺は頭を抱えて悶絶した。

「前原さん!
しっかりして!」
「…し、心配ないから。
俺は、これを待ってたんです」

猛烈な目眩に天地が逆転するなか、俺は吐き気を堪えて大谷さんに告げた。

「ちょっと、大丈夫ですか?!」

男性店員が俺の元に駆け寄る足音がした。
ゆっくりと瞼を開く。
大谷さんの姿は店内から消えており、車道を挟んだ向かいの自販機に昨夜の俺と大谷さんの姿があった。

「…よし、戻ったぞ」

充血した瞳でフラつきながら立ち上がる俺を、男性店員が奇異なものを見る目で見ている。
再び店内を見回すと、思った通り。
昨夜の女の子がファッション雑誌を立ち読みしているところだった。

「君っ!」

思いのほか大きな声が出てしまい、俺は咄嗟に口を塞いだ。
驚いたのは彼女も同じらしく、俺の方を訝しげに凝視している。
しかし、まごついている時間はない。
何とかして彼女にメモを渡して貰わなければならないのだ。
-いや、待てよ。
そんな事をわざわざしなくても、直接俺が俺に手渡せばいいんじゃないか?
一度はそう考えたが、俺はすぐに思い直した。
バタフライ効果。
ここでは、過去の出来事を改竄する事で未来に予測不能な結果をもたらす事と定義するが、もし蝶の羽ばたきが悪く作用すれば破滅に導かれる未来だって起こり得る。
仮に過去を改竄しても人智を越えた時空間的超作用が働き、理屈に沿った辻褄合わせをしてくれると言う見解もあるにはあるが、そんな不確かなものに自分の命運を委ねる訳にはいかなかった。

「突然で申し訳ないんだけど、すごく変な事を頼んでいいかな?」

俺は自分の名前を告げると、真相は話さず簡単な説明をした。

「つまり、前原さんから貰ったメモを、車道の向こうで待ってる前原さんに渡せばいいの?」
「そう!その通り。
飲み込みが早くて助かるよ」

俺は女の子が持っていた雑誌とカゴ一杯にスイーツを入れて支払いを済ませると、一緒にコンビニの外に出た。

「報酬はこれで」
「…え、何だか悪いです」
「いいから、いいから。
変なお願いするんだから、これくらいは当然だよ」

遠慮する女の子の手に無理やり袋を握らせると、俺はその背中を見送った。
彼女が昨夜の俺に話しかけたのと同時に、再び目眩がやって来る。
-ミッション、コンプリート。
俺はグニャグニャと歪んだ世界に放り出されながら、ようやく胸を撫で下ろしたのだった。

「…前原さん、前原さん!」

大谷さんの声が聞こえる。
ここは、戻ってきたのか。

「大、丈夫です」

俺はヨロヨロと立ち上がるとコンビニを出た。
そこで奇妙な事に気づく。
この時間帯にしては人通りが少なすぎるのだ。

「本当にもう平気ですか?」
「ええ。
それより今、何時です?」

店の外まで出てきてくれた大谷さんに俺は尋ねた。

「ええと、ちょうど十一時を過ぎたところですね」
「十一時だって?!」

俺は思わず聞き返した。
あまりの時間の早さに困惑していると、コンビニの幟の一つに落書きを見つけた。

『明日の俺から昨日の俺へ。
これ以上は危険だ。
大谷史華には二度と近付くな』

-何だよ、これ。
目眩の治まらない視界で俺は星のない空を見上げた。

 翌日も俺は会社を休んだ。
せっかくタイムスリップと言う特殊能力を手に入れたのだ。
身を粉にしてバカ正直に働く気になどなれなかった。
そして何より、今日の俺が昨日の俺に残したメモの意味を解読すると言う大仕事があったからだ。
これ以上は危険。
大谷さんには近付くな。
一体、どういう意味なんだ。
頭を掻きむしってみても何も閃かない。
ただ、危険の意味は理解していた。
今日、俺は朝の七時に目が覚めた。
顔を洗って髭を剃り、朝食を済ませて時計を見れば九時半。
たったこれだけの行動に二時間半を費やした事になる。
明らかに時間の進む速度が増していたのだ。
これまで気付かなかった事を考えれば、おそらくタイムスリップする度に段階的に加速していたのだろう。
それに気付いたからこそ、今日の俺は昨日の俺にメッセージを残したのだ。
タイムスリップしていられる時間が徐々に短くなっていたのも、時間そのものが加速していたからに他ならない。
おそらく現在の俺は、二十四時間を二倍速の十二時間ほどで過ごしている。
これ以上タイムスリップを使用して加速が進行すれば、あっという間に年を取って寿命を迎えてしまうだろう。
だからあと一度だけ。
警告に使う分の今日限りで封印せざるを得ない。
問題はなぜ大谷さんに近付いてはならないのか、だ。
彼女にはタイムスリップの事は一切伝えていない。
そもそもタイムスリップが起きるようになってからも、これまでと同様に普通に会っていたのだ。
今更、何が問題だと言うのか。
今日も晩飯はコンビニ弁当で済ませるつもりなのに、今日の俺の考えが今日の俺には理解できなかった。
もしかすると、大谷さんに関わる事で何か悪い事が起きるのだろうか?
しかし、過去の改竄はとても危険な行為だ。
それなのに俺自身がその考えを曲げてまで未来を変えようとするとは考えにくい。
自分の命が危ないような場合を除いては…。
つまり大谷さんと俺が今日会う事で、命の危険に晒される出来事が起こると言う事か?
しかし、メモにはこう書いてあった。
『二度と近付くな』と。
今日だけの出来事を回避するだけで良いのなら、こんな書き方にはならないだろう。
『明日は大谷さんに会うな』
これで十分、かつ正確な警告文になる筈だ。
彼女と俺が今日だけでなく、明日以降も会う事によって起きる事とは-。
俺はここ数日の大谷さんとの出来事を振り返る事にした。
まず、初めてタイムスリップが起きたのが三日前。
俺はその前日にコンビニで働いていた大谷さんと出会い、不名誉な誤解を受けてしまった。
あの時は気付かなかったが、帰宅してからタイムスリップの効果が切れて四日前から三日前に戻ってきたのだろう。
次に二日前。
俺が蕎麦屋に入るところに偶然居合わせた大谷さん。
そして昨日。
コンビニで女の子を探している時、店番をしていた大谷さん。
三度のタイムスリップの内、二度は彼女が傍にいた時に限って起こっている。
これはただの偶然だろうか?
俺は彼女に確認すべく、コンビニに向かおうとして足を止めた。
もし俺の仮説が正しければ、彼女とこの時間帯に会うのは不味い。
徒歩十分の場所にあるコンビニ。
今の俺の足なら二十分かかる計算だが、昨夜の俺が見つけるまでは店員や通行人に落書きが見つかる事態は避けたかった。
タイムスリップの効果時間の減少も気になるし、ここは夜の十時半頃に家を出るのが良さそうだ。
俺はあらかじめ落書きの予定をたてると、コンビニに電話を架ける事にした。
電話であれば間接的に話を聞く事ができる。

「…はい、こちらライフリー○×店です」

大谷さんの声だ。

「あ、もしもし。
前原です」
「あら、前原さん。
その後、ご体調はいかがですか?」

俺が返事をしようとした時、壁のカレンダーがグニャリと歪んだ。

「…ウソだろ」

目眩に受話器を落とし、頭を抱えて踞る。

「もしもし、前原さん?」

大谷さんの微かな声が遠退き、やがて俺は昨日の自室にタイムスリップしていた。

「ちくしょう!
電話すら出来ないのかよ!」

一回分を無駄にした。
しかし、これでタイムスリップと大谷史華との因果関係がほぼ固まった訳だ。
-まだ昼間だが、今からコンビニに向かって落書きするか?
今度タイムスリップから戻れば、俺は二十四時間を三倍速で生活する事になる。
だが、ここで落書きをしなければもう一度タイムスリップする必要が生じ、二十四時間が四倍速になってしまう。
迷っている暇などなかった。
俺は慌てて靴を履くと、鍵もかけずに部屋を飛び出した。
コンビニまでは二十分。
タイムスリップの効果時間内には何とか着ける計算だったが、道の半ばに差し掛かったところで再び強い目眩が俺を襲った。

「ちょっと待てよ!
まだ、早い。
早いんだよ‼」

回転する世界のなかで俺の絶叫が響いた。
目を開いた時、俺は今日の世界の住人だった。

「…タイムスリップした時点で、三倍速だったのか」

こうして二十四時間を体感八時間で生きる事になった俺だったが、更に絶望的な事実に気付いた。
時計の進み方が三倍速にしては早すぎるのだ。

「ふざけるな!
これじゃ、三倍どころか四倍じゃないかっ!」

時間加速の規則性を完全に読み違えていた。
午後三時から体感十五分で一時間が怒濤のように進み、あっという間に午後十時がやってきた。
四倍速。
最低でも十時二十分には家を出なければならない。
俺はメモを鞄に入れると早足に家を出た。
そしてコンビニに辿り着くと目眩でタイムスリップし、無事に落書きを終えて戻ったのである。
しかし-。

「なんだ、これは…」

元の世界に戻るなり、俺は自分の目を疑った。
車、人、風、太陽、雲。
そこでは目まぐるしい速度で様々なものが移動していた。
四倍速の世界でも感じていたが、自分以外のものが信じられない速度で動いていたのだ。

「こ、こんなバカな」

十六倍速の世界。
見る間に空腹に陥り、食べたと思ったら排泄し、眠り、また飢えを満たす。
俺の毎日は、もはや地獄と化していた。
持っていた財産はすぐに底をつき、仕事をする事もままならず、アパートを追い出されて俺はホームレスになった。
瞬く間に時が過ぎ、残酷な現実に身も心もボロボロになった俺は、寿退社したと言う大谷さんの連絡先をコンビニで教えてもらい、長年通い続けた電車に乗り込んで盗んだスマホから電話を掛けた。

「もしもし、宮北史華ですが」

加齢の為に嗄れてはいるが、それは間違いなく大谷さんの声だった。

「もしもし、前原です」

なるべく早口に俺はそう告げたが、大谷さんにはずいぶんゆっくり聴こえたに違いない。

「あら、ずいぶんと懐かしいお名前ね」
「大谷さん。
実は俺、ずっと君の事が」
「…なぁに?
お婆ちゃんをからかってるの?」

僅か三年余りの邂逅の筈なのに、俺達は互いにすっかり老人になっていた。
電車のなかの風景がグニャリと歪む。
俺は一心に当時の電車の様子を思い浮かべ続けた。
ただ、一心に、祈るように。
この願いが叶うなら、神でも悪魔でも構わない。
目脂と皺だらけの瞼を開けたとき、奇跡が起きた。
俺の体は始まりの日の朝にタイムスリップしていたのだ。
周囲の乗客が迷惑そうに俺から遠退く。
-時間が、ない。
俺はすかした顔で吊革を掴んでいる青年に近付くと、

「…おい」

と声を掛けた。
青年はこちらを見ようともせず、退屈そうに窓の外を眺めている。

「おい、聞いてるのか。
俺にはもう時間がないんだよ」

早口で声を張り上げたが、

「人違いです」

と一蹴されてしまった。

電車が止まり、青年が足早に降りる。

「俺の話を聞け!
必ず後悔…」

駆けつけた駅員に取り押さえられながら、俺は五十年前の自分に向かって必死に叫び続けた。
このタイムスリップも、じき終わる。
そうすれば待っているのは…二百五十六倍速の狂気だ。




                    おわり
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