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1章
第25話:自由自治領フェンリース、誕生
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朝日が差し込む。
長く続いた戦いの余韻を乗せて、フェンリース村に新しい一日が訪れた。
だが今日は、ただの朝ではない。
この村にとって、そしてこの地に生きるすべての者にとって、始まりの日だった。
広場に設けられた仮設の壇上に、ユリウスが立った。
その周囲には、避難民たち、復興に携わる職人、そしてかつて捨てられた者たち。
皆がこの地に、生きる場所を見つけた者たちだった。
セラとリリアも並び立ち、フレアはその傍らに静かに翼をたたんで座っている。
ユリウスは高くは語らなかった。
ただ、短く、静かに宣言する。
「今日をもって、ここフェンリースは“自治領”を名乗る。
帝国にも、王にも、誰にも縛られない。……ただ、“ここに生きる者”によって動く場所として」
その言葉は、祝詞ではなかった。
けれど、静かに、確かに人々の胸に灯をともした。
そしてその瞬間。
リリアが手に持った古の魔導印が淡く輝き、村の結界全体に優しい光が走る。
風が吹き、水が流れ、地が安堵し、火が祝福をもたらす。
それは精霊たちが“この地を認めた”という、何よりの証だった。
夜。焚き火を囲む小さな宴が始まる。
簡素な食事と、手作りの楽器。
でも、そこには確かに笑いと、喜びがあった。
「なあ、ユリウス」
セラがパンをかじりながら言う。
「“王様”になった気分は?」
「……俺は王じゃない。誰の上に立つ気もない」
「でも、皆はあんたを見てるよ。ちゃんと、頼ってる」
「……なら、その期待は裏切らない。王ではなく、“守り手”としてな」
一方その頃、帝国・宰相府。
宰相ゼノ=ヴァルトハイムは、報告書を手に取る。
「フェンリース村、自治宣言。勢力名:“自由自治領フェンリース”……ふむ」
ゼノは静かに目を閉じる。
「……火が灯ったな。ならば次は、“風”を送るとしよう。
あの女を、もう一度——」
長く続いた戦いの余韻を乗せて、フェンリース村に新しい一日が訪れた。
だが今日は、ただの朝ではない。
この村にとって、そしてこの地に生きるすべての者にとって、始まりの日だった。
広場に設けられた仮設の壇上に、ユリウスが立った。
その周囲には、避難民たち、復興に携わる職人、そしてかつて捨てられた者たち。
皆がこの地に、生きる場所を見つけた者たちだった。
セラとリリアも並び立ち、フレアはその傍らに静かに翼をたたんで座っている。
ユリウスは高くは語らなかった。
ただ、短く、静かに宣言する。
「今日をもって、ここフェンリースは“自治領”を名乗る。
帝国にも、王にも、誰にも縛られない。……ただ、“ここに生きる者”によって動く場所として」
その言葉は、祝詞ではなかった。
けれど、静かに、確かに人々の胸に灯をともした。
そしてその瞬間。
リリアが手に持った古の魔導印が淡く輝き、村の結界全体に優しい光が走る。
風が吹き、水が流れ、地が安堵し、火が祝福をもたらす。
それは精霊たちが“この地を認めた”という、何よりの証だった。
夜。焚き火を囲む小さな宴が始まる。
簡素な食事と、手作りの楽器。
でも、そこには確かに笑いと、喜びがあった。
「なあ、ユリウス」
セラがパンをかじりながら言う。
「“王様”になった気分は?」
「……俺は王じゃない。誰の上に立つ気もない」
「でも、皆はあんたを見てるよ。ちゃんと、頼ってる」
「……なら、その期待は裏切らない。王ではなく、“守り手”としてな」
一方その頃、帝国・宰相府。
宰相ゼノ=ヴァルトハイムは、報告書を手に取る。
「フェンリース村、自治宣言。勢力名:“自由自治領フェンリース”……ふむ」
ゼノは静かに目を閉じる。
「……火が灯ったな。ならば次は、“風”を送るとしよう。
あの女を、もう一度——」
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