11 / 63
謎の親子
しおりを挟む
走ってくる女子高生。
その後ろにはマスクとサングラスをつけた三人組が続く。
違和感を覚えるのは、三人とも妙にキレイなフォームで走っているところだ。
そんなことに感心している場合じゃねえか。
万筋服の出番だ。
俺は走り出しながら、現場に焦点を絞って怒りを醸成していく。
不埒な奴らだッ!
女の子ひとりを三人で追いかけ回してなにをするつもりだッ!
誰であろうとも、どんな理由があろうともッ!
人をいたぶるようなことッ!
俺はッ!
ゆるさんッ!!!
怒りで体が熱くなり、着ていた服が破れる。
俺は万筋服に包まれていた。
強化された脚力で二飛び。
追手の三人組に肉薄し、いちばん近かった男の胸を殴りつける。
男は叫びもあげずに大きく吹っ飛んだ。
やばい! もっと手加減しないと!
だが理性のブレーキより早く体が動いてしまい、俺は残る二人も打ち倒していた。
抵抗などなく、三人は倒れたままだった。
ひとりは片足が、もうひとりは胴体が、折れたマッチ棒のように曲がっている。
二人とも、うぃんうぃんと変な音をたてて痙攣していた。
やばい、これは重傷間違いなしだ……。
やばい、やりすぎた、やばい、どうしよう。
呆然と立ちすくんでいると、逃げていた女の子が駆け寄ってきた。
思いがけぬことを口にする。
「あーん、みんな高いのにー! 修理代がー!」
少女は腰に手を当てて俺に向きなおる。
「おじさん、やりすぎ!」
「あ、ああ。やっぱ救急車呼ばないとまずいよな。君、呼んでくれない」
「そうじゃないの!」
女の子は近くの男に向かってしゃがみこんだ。
帽子、サングラス、マスクを剥いだかと思うと、無表情な顔まで外してしまう。
メカニカルなフェイスがあらわになった。
「みんなロボ!」
「う……そ……」
そっかロボか!
うぃんうぃんていうのもモーター音か!
走るフォームが妙にキレイだったのもロボだったからか!
安心した!
いや待て。
ほっとしたのは本心だが、いろいろ腑に落ちない。
いくらロボットが発達したからといっても、こんな一般人みたいな子がロボを持てるのか。
見たこともないほど精巧だし、それを三体も引き連れて歩くなんて。
常識に収まるレベルじゃない。
それを言ったら俺の万筋服も同じかもしれないが、
まあいろいろ納得できるものじゃないだろう。
まるで俺のまわりの宇宙が変貌してしまったようだ。
俺は当然の疑問を口にする。
「これはおまえのロボットなのか。なんで追われてたんだ? 確かに助けを求めたよな? 説明してもらおうか」
「えーっと、それは……。あっ、お父さんから!」
女の子はセミロングの髪をゆすって俺の背後に目をやった。
俺も振り返る。
薄暗がりのなか、白衣の長身痩躯がすぐそばまで来ていた。
なんちゃら博士って感じだ。
五十は過ぎているが六十には達していないぐらいか。
近づくとわかったが隻眼だった。
右目に金属製の眼帯をしている。
博士っぽい男はニコリともせず言った。
「娘がお世話になりましたな」
「いやなに。いったいどんな事情があって……」
ここはカッコよく決めたい。
ヒーローの醍醐味だ。
と、思っていたら。
突然、ぬるりとした感触が体を包む。
続いて寒気。
素っ裸だ!
万筋服が消えた!
「きゃっ!」
少女の視線が刺さる。
きゃっとかいいながら、身を乗り出して俺の股間を注視しやがる。
「ちくしょう!」
俺は股間だけはなんとか隠しながら走り出す。
「ちょ、ちょっと待っててくれ! そこに着替えがあるんだ!」
変身する前に投げ捨てたリュックのもとへつき、大急ぎで服を着る。パンツもはいた。
まったく人生思うようにはいかない。
もうカッコもつかないけど、事情を聞かなければならなかった。
おヌードを披露してしまって気まずいが、二人のところへ戻る。
女の子が言いやがった。
「わたし、大人の包茎って初めて見ました!」
屈託なく言われるとマジで傷つくもんだな。
「皮被っててわるかったな! 包茎じゃないのはいっぱい見てるのかよ!」
「な、生はないですけど! ネットとかで! いや、嘘です見たことないです! おじさんのが初めてです!」
女の子は父親に睨まれて慌てて訂正する。
俺は言った。
「まあいまはどっちでもいい。それよりあんたらのことだろ」
その後ろにはマスクとサングラスをつけた三人組が続く。
違和感を覚えるのは、三人とも妙にキレイなフォームで走っているところだ。
そんなことに感心している場合じゃねえか。
万筋服の出番だ。
俺は走り出しながら、現場に焦点を絞って怒りを醸成していく。
不埒な奴らだッ!
女の子ひとりを三人で追いかけ回してなにをするつもりだッ!
誰であろうとも、どんな理由があろうともッ!
人をいたぶるようなことッ!
俺はッ!
ゆるさんッ!!!
怒りで体が熱くなり、着ていた服が破れる。
俺は万筋服に包まれていた。
強化された脚力で二飛び。
追手の三人組に肉薄し、いちばん近かった男の胸を殴りつける。
男は叫びもあげずに大きく吹っ飛んだ。
やばい! もっと手加減しないと!
だが理性のブレーキより早く体が動いてしまい、俺は残る二人も打ち倒していた。
抵抗などなく、三人は倒れたままだった。
ひとりは片足が、もうひとりは胴体が、折れたマッチ棒のように曲がっている。
二人とも、うぃんうぃんと変な音をたてて痙攣していた。
やばい、これは重傷間違いなしだ……。
やばい、やりすぎた、やばい、どうしよう。
呆然と立ちすくんでいると、逃げていた女の子が駆け寄ってきた。
思いがけぬことを口にする。
「あーん、みんな高いのにー! 修理代がー!」
少女は腰に手を当てて俺に向きなおる。
「おじさん、やりすぎ!」
「あ、ああ。やっぱ救急車呼ばないとまずいよな。君、呼んでくれない」
「そうじゃないの!」
女の子は近くの男に向かってしゃがみこんだ。
帽子、サングラス、マスクを剥いだかと思うと、無表情な顔まで外してしまう。
メカニカルなフェイスがあらわになった。
「みんなロボ!」
「う……そ……」
そっかロボか!
うぃんうぃんていうのもモーター音か!
走るフォームが妙にキレイだったのもロボだったからか!
安心した!
いや待て。
ほっとしたのは本心だが、いろいろ腑に落ちない。
いくらロボットが発達したからといっても、こんな一般人みたいな子がロボを持てるのか。
見たこともないほど精巧だし、それを三体も引き連れて歩くなんて。
常識に収まるレベルじゃない。
それを言ったら俺の万筋服も同じかもしれないが、
まあいろいろ納得できるものじゃないだろう。
まるで俺のまわりの宇宙が変貌してしまったようだ。
俺は当然の疑問を口にする。
「これはおまえのロボットなのか。なんで追われてたんだ? 確かに助けを求めたよな? 説明してもらおうか」
「えーっと、それは……。あっ、お父さんから!」
女の子はセミロングの髪をゆすって俺の背後に目をやった。
俺も振り返る。
薄暗がりのなか、白衣の長身痩躯がすぐそばまで来ていた。
なんちゃら博士って感じだ。
五十は過ぎているが六十には達していないぐらいか。
近づくとわかったが隻眼だった。
右目に金属製の眼帯をしている。
博士っぽい男はニコリともせず言った。
「娘がお世話になりましたな」
「いやなに。いったいどんな事情があって……」
ここはカッコよく決めたい。
ヒーローの醍醐味だ。
と、思っていたら。
突然、ぬるりとした感触が体を包む。
続いて寒気。
素っ裸だ!
万筋服が消えた!
「きゃっ!」
少女の視線が刺さる。
きゃっとかいいながら、身を乗り出して俺の股間を注視しやがる。
「ちくしょう!」
俺は股間だけはなんとか隠しながら走り出す。
「ちょ、ちょっと待っててくれ! そこに着替えがあるんだ!」
変身する前に投げ捨てたリュックのもとへつき、大急ぎで服を着る。パンツもはいた。
まったく人生思うようにはいかない。
もうカッコもつかないけど、事情を聞かなければならなかった。
おヌードを披露してしまって気まずいが、二人のところへ戻る。
女の子が言いやがった。
「わたし、大人の包茎って初めて見ました!」
屈託なく言われるとマジで傷つくもんだな。
「皮被っててわるかったな! 包茎じゃないのはいっぱい見てるのかよ!」
「な、生はないですけど! ネットとかで! いや、嘘です見たことないです! おじさんのが初めてです!」
女の子は父親に睨まれて慌てて訂正する。
俺は言った。
「まあいまはどっちでもいい。それよりあんたらのことだろ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる