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思わぬ助け
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香華子は見た。
男たちの襟元に輝く千垣組の代紋を。
「動くな!」
男が突進してきた。
香華子は踵を返して逃げようとした。
だが、二歩も進まないうちに手首をつかまれる。
「いやぁ! 離して!」
「おとなしくしろ! 黙ってついてくりゃあ痛い目に会わねぇぜ!」
もうひとりの男もニヤニヤと笑う。
「大事な人質だ、悪いようにはしねぇよ、お嬢ちゃん。ひひひ……」
香華子は声の限りに悲鳴をあげた。
「きゃぁぁぁぁっ! 誰か! 助けて!」
「うるせぇ! 静かにしろ!」
男は香華子の口を手で塞ぎ、ヘッドロックしてきた。
その態勢でぐいぐいと車へ引きずっていく。
「もごごごご!」
香華子は手足をバタバタ振って抵抗したが、それも虚しい。
抱えられて、両足が宙に浮いていた。
もうひとりの男が粘着テープを取りだした。
それで香華子の自由を奪うのだろう。
香華子が諦めかけたとき、救いの神が現れた。
「やめなさーい! なにしてるの!」
世ノ目えひめ、その人だった。
学校帰りか、えひめは制服姿で自転車に乗ってやってきた。
妄想のなかだったら、ここはすでにえひめの家の近くだった。
やはり妄想と現実の接点はここにあるのか。
助けが現れたことと、謎が解けかかっていること、二重の意味で香華子は希望に包まれた。
思わず涙が頬を伝う。
えひめは躊躇なく近づいてくる。
「だいの大人がなにしてるの! 恥を知りなさい!」
香華子を押さえている男が脅しをかけた。
「あぁ? カンケーねぇ! すっこんでろ!」
「ケガしたくなかったら、うぼぉっ!」
えひめはまったくスピードを落とさず、自転車でもうひとりの男へ突っこんでいた。
男は身体を折って倒れる。
えひめは衝突の寸前に飛び降りていて、すでに臨戦態勢だった。
香華子を捕らえていた男が応戦しようとした瞬間。
えひめの足首がそのあごを刈っていた。
まるでカミソリのようなハイキックだった。
香華子を捕らえていた男は白目を剥いて倒れる。
もうひとりの男が唸って身を起こそうとしていた。
えひめは迷うことなく、その男のみぞおちを蹴りあげる。
「ぐぉぉ!」
男は倒れ、痙攣した。もう動けない。
香華子は汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔で感謝した。
「うっうっ、ありが、ありがとう、世ノ目さん、うっ……」
「橘さん、こんなところでなにしてたの?」
「うっうっうっ、わたし、わたし確かめたくて……わたし……」
「ま、いいや。まずはここから離れましょ。家がすぐ近くだから、そこまでがんばって」
えひめはカバンを回収し、自転車はそのままに、
しゃくりあげる香華子の手を取って小走りになった。
香華子を振り返りながら言う。
「でも、ウチで見たり聞いたりしたことはみんなには黙ってて。話してもどうせ誰も信じないだろうけど、できれば興味を引きたくないの」
香華子はこくこくと首を振った。
「しってる、わたししってるから! 次元接続体犯罪抑止研究所!」
えひめはぴたりと足を止めた。
「なんで……、なんで、そんなこと知ってるの……。誰にも話してないのに……」
その顔は青ざめて見えた。
香華子がもしかしたら敵かもしれないという疑惑にかられたかのようだった。
香華子はまだ順序立てて説明ができる状態ではなかった。
鼻をすすりながら繰り返す。
「うっうっうぅ……、話すと長いから……、長いから話すとぉー、うぅっうっうっ……」
えひめはため息をついた。
「ほんとに長い話になりそう。落ち着いてからでいいから、ね? いこ」
えひめは再び走りだし、香華子もふらつきながらついていった。
坂を登りきると、一軒の家についた。えひめも足を止めた。
シャッターのついた白い壁に囲まれた大きな邸宅。表札はない。
それはまさしく、妄想で幻視していたとおりの次元接続体研究所であった。
その白亜の壁を見あげて、香華子は感極まった。
「うっうっうっ、ほんとにあった、ほんとにあったよー、けんきゅうじょー……」
男たちの襟元に輝く千垣組の代紋を。
「動くな!」
男が突進してきた。
香華子は踵を返して逃げようとした。
だが、二歩も進まないうちに手首をつかまれる。
「いやぁ! 離して!」
「おとなしくしろ! 黙ってついてくりゃあ痛い目に会わねぇぜ!」
もうひとりの男もニヤニヤと笑う。
「大事な人質だ、悪いようにはしねぇよ、お嬢ちゃん。ひひひ……」
香華子は声の限りに悲鳴をあげた。
「きゃぁぁぁぁっ! 誰か! 助けて!」
「うるせぇ! 静かにしろ!」
男は香華子の口を手で塞ぎ、ヘッドロックしてきた。
その態勢でぐいぐいと車へ引きずっていく。
「もごごごご!」
香華子は手足をバタバタ振って抵抗したが、それも虚しい。
抱えられて、両足が宙に浮いていた。
もうひとりの男が粘着テープを取りだした。
それで香華子の自由を奪うのだろう。
香華子が諦めかけたとき、救いの神が現れた。
「やめなさーい! なにしてるの!」
世ノ目えひめ、その人だった。
学校帰りか、えひめは制服姿で自転車に乗ってやってきた。
妄想のなかだったら、ここはすでにえひめの家の近くだった。
やはり妄想と現実の接点はここにあるのか。
助けが現れたことと、謎が解けかかっていること、二重の意味で香華子は希望に包まれた。
思わず涙が頬を伝う。
えひめは躊躇なく近づいてくる。
「だいの大人がなにしてるの! 恥を知りなさい!」
香華子を押さえている男が脅しをかけた。
「あぁ? カンケーねぇ! すっこんでろ!」
「ケガしたくなかったら、うぼぉっ!」
えひめはまったくスピードを落とさず、自転車でもうひとりの男へ突っこんでいた。
男は身体を折って倒れる。
えひめは衝突の寸前に飛び降りていて、すでに臨戦態勢だった。
香華子を捕らえていた男が応戦しようとした瞬間。
えひめの足首がそのあごを刈っていた。
まるでカミソリのようなハイキックだった。
香華子を捕らえていた男は白目を剥いて倒れる。
もうひとりの男が唸って身を起こそうとしていた。
えひめは迷うことなく、その男のみぞおちを蹴りあげる。
「ぐぉぉ!」
男は倒れ、痙攣した。もう動けない。
香華子は汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔で感謝した。
「うっうっ、ありが、ありがとう、世ノ目さん、うっ……」
「橘さん、こんなところでなにしてたの?」
「うっうっうっ、わたし、わたし確かめたくて……わたし……」
「ま、いいや。まずはここから離れましょ。家がすぐ近くだから、そこまでがんばって」
えひめはカバンを回収し、自転車はそのままに、
しゃくりあげる香華子の手を取って小走りになった。
香華子を振り返りながら言う。
「でも、ウチで見たり聞いたりしたことはみんなには黙ってて。話してもどうせ誰も信じないだろうけど、できれば興味を引きたくないの」
香華子はこくこくと首を振った。
「しってる、わたししってるから! 次元接続体犯罪抑止研究所!」
えひめはぴたりと足を止めた。
「なんで……、なんで、そんなこと知ってるの……。誰にも話してないのに……」
その顔は青ざめて見えた。
香華子がもしかしたら敵かもしれないという疑惑にかられたかのようだった。
香華子はまだ順序立てて説明ができる状態ではなかった。
鼻をすすりながら繰り返す。
「うっうっうぅ……、話すと長いから……、長いから話すとぉー、うぅっうっうっ……」
えひめはため息をついた。
「ほんとに長い話になりそう。落ち着いてからでいいから、ね? いこ」
えひめは再び走りだし、香華子もふらつきながらついていった。
坂を登りきると、一軒の家についた。えひめも足を止めた。
シャッターのついた白い壁に囲まれた大きな邸宅。表札はない。
それはまさしく、妄想で幻視していたとおりの次元接続体研究所であった。
その白亜の壁を見あげて、香華子は感極まった。
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