57 / 63
有利に展開するが
しおりを挟む
俺は博士の考えを吟味してみた。
他に方法もない。
やってみるしかなかった。
セツのほうが素早いが、首を締めるとなると俺じゃなきゃパワー不足だ。
「セツ! 烏羽の気を引いてくれ。俺がヤツの首を締めてやる!」
「わかった、やってみる!」
セツとの距離は離れていたが、トランシーバーの通信状態は良好だった。
すぐにセツが動きを変える。
セツはテレポートで烏羽に肉薄すると一撃を加えて走って逃げる。
衝撃波が撃たれようとすると、短い距離をテレポート。
するとまたしばらく走って、衝撃波の狙いがつけられたころに短距離テレポートをして走る。走る時間が多くなっていた。
なるほど、うまい。
まるでテレポートする力が尽きかけているような演技だ。
烏羽もいまが攻め時と誤解して、セツの動きに集中していた。
俺を狙っていた諸戸もセツを捉えようと、俺から離れていく。
いい具合だ。
俺はじりじりと烏羽へ接近した。
セツがテレポートしたあと、足をとられたように動きを止めた。
烏羽も動きを止めて狙いを定める。
この一瞬が俺のチャンス!
強化された跳躍力で一気に烏羽の背中にとりつく。
間髪を容れずに左腕を烏羽の首に回して締めあげた。
こいつの頑丈さは知っている。
首が取れない程度に力をこめて頸動脈を圧迫してやった。
「ぐふぅぅぅ!」
烏羽は暴れまわるが、俺は離さない。
俺と烏羽が密着しているから、諸戸も手を出せないでいる。
締めあげて数秒、烏羽は泡を吹いて倒れた。
いくら身体が頑丈でも、人間の形をしている限り、頸動脈を遮断されれば気絶する。
残るは諸戸ひとりだ。
俺のブレスレットは変わらない音をたてている。
次元接続体がそばにいる限り、意識のあるなしは関係ないようだった。
俺とセツは肩を並べて立った。
セツはひん曲がった刀を諸戸に向ける。
「あとはおまえだけだぞ!」
俺も言った。
「降参するならいまのうちだぞ。素直に投降すれば痛い目にあわせないでやる」
諸戸は笑った。
「くっくっく、まさかあのとき出会った底辺のおっさんにここまで追い詰められるとは思わなかったぜ。金なんてめぐんでやるんじゃなかった」
「おかげでうまい飯が食えたぜ。その恩で、これ以上悪事を重ねないようにしてやる」
「それでいいことをしてるつもりか? まったく底辺てのはどこまでいってもバカなんだな。そんなんじゃ、いつまでも貧乏だぜ」
「でも俺は力をよいことに使っているし、いまはそれほど貧乏じゃない」
諸戸は空中にいる。
飛んで逃げることもできるだろう。
逃げられたとしたら、俺たちに追う力はないが、やつの仲間は一網打尽だ。
あとのこともなんとかなるだろう。
だが、諸戸は引かなかった。
「俺ひとりでおまえらを仕留めてやる!」
諸戸が突進してきて雷撃を放つ。俺たちはすんでのところで避けた。
セツが空中にテレポートして、諸戸の背後から刀で打った。
諸戸の体勢が崩れる。
俺は跳躍し、狙いすました拳の一撃で諸戸のあごを撃ち抜いた。
諸戸はもんどり打ってアスファルトに落下した。
「うぐぅうう……」
俺はうなる諸戸の背中を膝で押さえて、腕を取ってひねりあげる。
「よし、これで終わりだ諸戸! おとなしくしろ!」
諸戸の一味としては、あと蕪屋雫と坂上蒔絵が残っている。
しかし、いま出てきていないところをみると、やはり戦闘力はないんだろう。
場合によってはもう逃げちまっているかもしれない。
セツが傍らに立った。
そのメイド服はボロボロだった。
もう鞘に収まらない刀を担いで言う。
「一件落着か。こんな大暴れは初めてだ。いいストレス解消になった。一張羅は駄目になったがな」
俺はトランシーバーに向かって言った。
「博士、拘束具を持ってきてくれ。もう勝負はついた」
数秒の間があいて返事があった。
「すまない……。そちらに気を取られすぎていた……」
真夜中の静けさにパーンと銃声が響き渡る。
銃声のほうへ頭を向ける。
道路の向こうに、頭に銃を突きつけられた博士と、銃を持った坂上蒔絵の姿があった。
なんてこった。
次元接続体といえども博士は銃で撃たれたら死ぬだろう。
逆の言い方をすれば、次元接続体としての能力は低くとも、銃を持てば人を殺せる。
諸戸の一味は千垣組の助っ人として、橘組との抗争に参加している。
拳銃くらい持たされていても不思議じゃない。
まさか戦闘力のない坂上蒔絵の手によって状況が逆転するとは!
油断していた!
坂上蒔絵が大声で言った。
「動くな!」
両手をあげた博士と坂上蒔絵が、足早に道路を渡ってくる。
俺の下で諸戸が首をひねってそっちを見る。
「へへへ、やっぱ頼りになるな。愛してるぜ蒔絵。さあ、おっさん、どけよ! 仲間の命が惜しかったらな!」
「くそ……」
俺は身体を離した。
諸戸は立ちあがって埃を払う。
「さて、どう落とし前をつけるつもりだ。タダじゃ済まねーぞ、え、おっさん」
くそ、あと一歩だったのに!
このクソガキが!
絶対これで終わらせねえ!
この重大な局面で裸に戻らないように、俺は心を振るい立たせて怒りを注ぎ足していた。
だが、圧倒的不利に変わりはなかった。
他に方法もない。
やってみるしかなかった。
セツのほうが素早いが、首を締めるとなると俺じゃなきゃパワー不足だ。
「セツ! 烏羽の気を引いてくれ。俺がヤツの首を締めてやる!」
「わかった、やってみる!」
セツとの距離は離れていたが、トランシーバーの通信状態は良好だった。
すぐにセツが動きを変える。
セツはテレポートで烏羽に肉薄すると一撃を加えて走って逃げる。
衝撃波が撃たれようとすると、短い距離をテレポート。
するとまたしばらく走って、衝撃波の狙いがつけられたころに短距離テレポートをして走る。走る時間が多くなっていた。
なるほど、うまい。
まるでテレポートする力が尽きかけているような演技だ。
烏羽もいまが攻め時と誤解して、セツの動きに集中していた。
俺を狙っていた諸戸もセツを捉えようと、俺から離れていく。
いい具合だ。
俺はじりじりと烏羽へ接近した。
セツがテレポートしたあと、足をとられたように動きを止めた。
烏羽も動きを止めて狙いを定める。
この一瞬が俺のチャンス!
強化された跳躍力で一気に烏羽の背中にとりつく。
間髪を容れずに左腕を烏羽の首に回して締めあげた。
こいつの頑丈さは知っている。
首が取れない程度に力をこめて頸動脈を圧迫してやった。
「ぐふぅぅぅ!」
烏羽は暴れまわるが、俺は離さない。
俺と烏羽が密着しているから、諸戸も手を出せないでいる。
締めあげて数秒、烏羽は泡を吹いて倒れた。
いくら身体が頑丈でも、人間の形をしている限り、頸動脈を遮断されれば気絶する。
残るは諸戸ひとりだ。
俺のブレスレットは変わらない音をたてている。
次元接続体がそばにいる限り、意識のあるなしは関係ないようだった。
俺とセツは肩を並べて立った。
セツはひん曲がった刀を諸戸に向ける。
「あとはおまえだけだぞ!」
俺も言った。
「降参するならいまのうちだぞ。素直に投降すれば痛い目にあわせないでやる」
諸戸は笑った。
「くっくっく、まさかあのとき出会った底辺のおっさんにここまで追い詰められるとは思わなかったぜ。金なんてめぐんでやるんじゃなかった」
「おかげでうまい飯が食えたぜ。その恩で、これ以上悪事を重ねないようにしてやる」
「それでいいことをしてるつもりか? まったく底辺てのはどこまでいってもバカなんだな。そんなんじゃ、いつまでも貧乏だぜ」
「でも俺は力をよいことに使っているし、いまはそれほど貧乏じゃない」
諸戸は空中にいる。
飛んで逃げることもできるだろう。
逃げられたとしたら、俺たちに追う力はないが、やつの仲間は一網打尽だ。
あとのこともなんとかなるだろう。
だが、諸戸は引かなかった。
「俺ひとりでおまえらを仕留めてやる!」
諸戸が突進してきて雷撃を放つ。俺たちはすんでのところで避けた。
セツが空中にテレポートして、諸戸の背後から刀で打った。
諸戸の体勢が崩れる。
俺は跳躍し、狙いすました拳の一撃で諸戸のあごを撃ち抜いた。
諸戸はもんどり打ってアスファルトに落下した。
「うぐぅうう……」
俺はうなる諸戸の背中を膝で押さえて、腕を取ってひねりあげる。
「よし、これで終わりだ諸戸! おとなしくしろ!」
諸戸の一味としては、あと蕪屋雫と坂上蒔絵が残っている。
しかし、いま出てきていないところをみると、やはり戦闘力はないんだろう。
場合によってはもう逃げちまっているかもしれない。
セツが傍らに立った。
そのメイド服はボロボロだった。
もう鞘に収まらない刀を担いで言う。
「一件落着か。こんな大暴れは初めてだ。いいストレス解消になった。一張羅は駄目になったがな」
俺はトランシーバーに向かって言った。
「博士、拘束具を持ってきてくれ。もう勝負はついた」
数秒の間があいて返事があった。
「すまない……。そちらに気を取られすぎていた……」
真夜中の静けさにパーンと銃声が響き渡る。
銃声のほうへ頭を向ける。
道路の向こうに、頭に銃を突きつけられた博士と、銃を持った坂上蒔絵の姿があった。
なんてこった。
次元接続体といえども博士は銃で撃たれたら死ぬだろう。
逆の言い方をすれば、次元接続体としての能力は低くとも、銃を持てば人を殺せる。
諸戸の一味は千垣組の助っ人として、橘組との抗争に参加している。
拳銃くらい持たされていても不思議じゃない。
まさか戦闘力のない坂上蒔絵の手によって状況が逆転するとは!
油断していた!
坂上蒔絵が大声で言った。
「動くな!」
両手をあげた博士と坂上蒔絵が、足早に道路を渡ってくる。
俺の下で諸戸が首をひねってそっちを見る。
「へへへ、やっぱ頼りになるな。愛してるぜ蒔絵。さあ、おっさん、どけよ! 仲間の命が惜しかったらな!」
「くそ……」
俺は身体を離した。
諸戸は立ちあがって埃を払う。
「さて、どう落とし前をつけるつもりだ。タダじゃ済まねーぞ、え、おっさん」
くそ、あと一歩だったのに!
このクソガキが!
絶対これで終わらせねえ!
この重大な局面で裸に戻らないように、俺は心を振るい立たせて怒りを注ぎ足していた。
だが、圧倒的不利に変わりはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる