異世界転移された傾国顔が、アラ還宰相の幼妻になって溺愛されるまでの話

ふき

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ゴーンと鐘の音が街を震わせる。
石造りの礼拝堂には、死んだ顔の男が二人立っていた。

「では、誓いの口付けを」

二人は機械のように顔を寄せ、かすめるだけの口付けを交わした。
その姿を合図に、もう一度鐘の音が鳴った。



―――――



「本当にどういうことぉ?」

気付けば、盛大な結婚式が終わっていた。
誰のと言えば、俺の結婚式だった。同意…は流されたことを同意と言うなら、ギリギリ同意の上でされたものだ。

そしてよく分からない間に、着ていたタキシードを剥ぎ取られ、風呂へと投げ込まれた。
あっという間に数人の女の人に囲まれると、ツルツルにされて、今度は寝室へと投げ込まれる。

「旦那様がいらっしゃるまで、こちらでお待ちください」

ポカンとしている間に誰もいなくなった。
部屋は薄明かりしかついていなくて心細くなる。
なんで、女の人でも着ないような透け透けの服を着るはめになったのか。

「……なんか、顔だけなら見れないこともないのがまた…滑稽…」

姿見に写る自分。他人から持て囃され、追いかけ回されるこの顔はあまり好きではなかった。
なんでこんなことに…。



「つまり、なんでも孕ませられる最強つよつよちんこ…!?」
「そのような下品な物言いを兄上の前でしないでください」
「お前は黙っていなさい」

白金の髪の美人に、ピシリと言い含められた金髪のイケメンがううっと呻いた。
発言よりも、兄上と呼ばれたその人が金髪の人を馬にして優雅に座ったことの方が気になってしまう。
この国の王様とその弟らしいけども。

「申し訳ありません。こちらの監督不行き届きでこのようなことになり…」
「あ、いえ。まあ、元の世界に帰れないのは困りますが、そんなにやりたいことがあるわけでもないので…衣食住などどうにかしてもらえたら…はは、はははは」

俺の乾いた笑いが響く。どうしてこうなった?
ストーカーたちに追いかけられて、逃げ回っていた。突然目の前が白くなって、気付けばヨーロッパのお城のような部屋。
ゲームやアニメでしか見なさそうな風貌は、ここが日本とは思えなかった。
もはや地球ですら無いんじゃないかと思えた。
小さくため息をつく。

「それはもう。こちらとしても貴方を野放しするわけにはいきませんので」
「の、野放し…」
「ええ。この愚弟が考えもなしにしてしまったことですが…貴方が無闇に種をばら蒔かれると、困ってしまいますので」

美しい顔に笑顔が浮かんでいる。
それだけなのに、背筋がひやりとした。

「それは何故…?」
「おや、興味がありますか?簡単ですよ。貴方が望めば世界を変えられます」

勝手に付けられた俺の能力は、なんでも孕ませられるというもの…らしい。
単刀直入に言っていらない。ただでさえ、他人とどうこうなりたいなんて思っていないのに、不要な能力を押し付けられていた。

「お、俺はそんなことしないです!」
「それは僥倖です。…けれど貴方が望まなくても、その顔では中々…うーん」

馬になっているイケメンが何か言っているが、王様は全部無視していた。
少し悩む仕草を見せた後、すぐに顔を上げる。

「そうだ。貴方には結婚して貰いましょう」

唐突な言葉を飲み込めない。けっ、こん?

「………はぁ?」
「兄上!俺との結婚は!?」

王様はその言葉も無視して近くにあった小さな鐘を鳴らす。すぐに重たい扉が開いた。
入ってきたのは壮年の男性だった。白髪が多い濃いオリーブ色の髪に紫色の瞳。しゃんとした佇まいが特徴的だ。
ちらりと一瞬こちらを見ると、宰相殿と呼ばれたその人は王様の前で一礼した。

「宰相殿。こちらが君の夫人となるカナト殿だ」
「え?」
「では後は頼むね。私はこの愚弟に躾をしないといけないから。ああ、早いところ広めてくれよ」

馬の人が王様を姫抱きして、部屋から連れ去っていく。
な、なんだったんだ…。ストーカーたちに囲まれてそれなりに濃いキャラの人間にも出会ってきた自信があった。だがその中でも、ぶっちぎりで変な人たちだった。

バタンと扉が閉まると、はぁと横で大きなため息が聞こえた。
見上げると宰相殿と呼ばれた人は、額に手を当てている。

「状況の把握がまだ出来ていないが、大体は理解した。陛下は言い出したことを撤回はしない。すまないが付き合ってもらう」
「………………俺の人権は?」

皺の刻まれた顔がふっと笑う。この人のことはなんにも知らないけど、これだけは分かる。
そんなものは無いというやつだった。




あれから一週間。あれよ、あれよという間に結婚式まで行われた。その間あの宰相殿と話す機会はほぼなく…。

「名前も知らないし…」

誰も名前を呼ばないのだ。宰相殿、旦那様、侯爵様。そんな呼ばれ方しか知らない。
小さなテーブルに置かれていた酒をショットグラスに注いで少しだけ飲む。
飲まないでいられっか!の気分だ。

「あ、美味い。ちょっと甘いけど」

琥珀色の酒は、口当たりがまろやかでいくらでも飲めそうだ。
宰相殿も全然やってこないし…いや、来てほしいのか?俺は。
こんな格好までさせられれば、何されるのかぐらいは分かる。
無理やり迫られることばかりで、そういうことは好きではなかった。だけど、宰相殿のことを考えると不思議とそこまで嫌悪感は沸かなかった。

「いや、でもそもそも抱くの?抱かれるの?」

無闇に種をばら蒔くなって言われたけど、結婚したらなら無闇ではない。
じゃあいいのか?いやでも相手の意思もあるし。俺の意思もあるはずだけど。

「うーん?」

唸りながら酒を飲む。わんこ蕎麦を食べるような勢いでショットグラスに酒を注ぎ飲んでいく。
そんなことを続けていると、頭がふわふわとしてきた。
心地よい酔いが回った頃、コンッと音が鳴った。

「……おん?」
「君…」

上を見ると結婚式ぶりに見た顔がある。紫色の瞳には疲れが隠しきれていなかった。
ゆったりとしたシャツのようなものを着ている。

「あ、宰相殿だぁ~」
「はぁ。なんていう格好を…侍女たちか。全く余計な気を使わせて…」
「どうしたんですかぁ~、宰相殿も飲みますか?」

グラスは二つある。どぼどぼと注ぎ、差し出す。
宰相殿は立ったままだ。良くない。疲れているなら座ったほうがいい。

「ほらほら、座りましょ~。あ、こぼれた…つめたっ……くないや。あはは~冷たくない~」
「はぁ。酒はもう止めなさい」

グラスを取り上げられてテーブルに置かれる。少しだけ遠くなったグラスが、やけに寂しく感じる。

「お、さけ……のみたい」
「止めなさい」
「じゃあ宰相殿が飲んでくださいぃ~おれのぶんまで!ほら!」

宰相殿の腕を引っ張ると隣に座ってくれる。グラスを取り、もう一度差し出した。
ため息が一つ宰相殿から漏れる。紫色の瞳と目が合った。

「…いらない?」
「いや、…貰おうか」
「ふふ、どうぞ!」

満タンに入ったショットグラスを宰相殿が取ると、ぐっと一気に呷った。
いい飲みっぷりに思わず拍手する。

「久しぶりに飲んだな」
「えー、きらいなんですか?」
「いや、これは閨でしか出されないものだ」
「……ねや?」

難しい言葉に思わず聞き返すと、宰相殿は少しだけ気まずそうな顔をした。

「夜を共にするという意味だ」
「……よる?よる……あ?…そういう意味じゃないです…!」
「知っている。侍女たちが気を利かせて置いたんだろう。これには、少量の媚薬が入っている」
「び、びやく…」
「そんなに強いものではない。まあ夜を楽しむ程度のものだ」

そんなものが入った酒なんて知らない。だから、あのメイドさんたちはあんな顔で、こちらを飲んでお楽しみくださいとか言ってたのか。
おっさんの下ネタのような発言が、メイドさんたちから出ていたなんて。

「お、おれいっぱい飲んじゃった…」

ふわふわしているだけだと思ったのに、そこに熱が集まっているような気がしてくる。
下を見れば、透け透けの服で丸見えなちんこがこんにちはしている。

「ひぃ」
「落ち着きなさい」
「だ、だって…」
「…私は隣の部屋で寝るから、君はここを使いなさい」

宥めるように低く落ち着いた声。宰相殿は静かに立ち上がってしまう。

「まっ、まって」

翻ったシャツの裾を掴むと、宰相殿が止まってくれた。

「どうしたんだ?」
「おれ、…したことなくて、その…」

俺を見下ろす瞳が揺れる。その顔で?と思われているのが分かった。

「す、好きじゃなくて…あんまり性欲もなかったから…あんまり分かんなくて……」
「……」
「手伝って、…ほしいです」

最後の方は、蚊の鳴くような声だ。あまりの恥ずかしさに、顔が熱くなる。
返事を待つがなにも答えがない。心配になってきて俯いた顔を上げた。

「宰相殿?」
「………君は恐ろしいな」

宰相殿はなにかを小さく呟くと、ベッドに膝を下ろし、枕元に座る。
緩く広げた足の間を軽く手で叩いた。

「来なさい。手伝おう」

ベッドの奥は、より一層薄暗い。なのに宰相殿の瞳だけ輝くように見えた。
ごくりと溜まった唾を飲み込む。こっちから頼んだのに、近付くには覚悟が必要だった。

「ほら」

覚悟が決まらないままその一言に身体が動く。

「身体を預けて。そう、いい子だ」

宰相殿の股の間に座って背中を預ける。見た目よりもずっとしっかりとした身体は年齢を感じなかった。

「触れるが嫌になったら言いなさい」
「はい」

その言い方は歯医者さんのようで面白かった。
宰相殿の手が伸びる。節くれ立った長い指に、手の甲は薄く血管が見えた。
俺の手とは違う、生きてきた月日を感じる手。
その手が俺のそれに触れる。

「んんっ」

熱い手の感覚と握られた刺激に、少しだけ出てしまう。
自分で処理することすらなかったそれは、まだ勃ち上がっている。

「…うぅ」
「大丈夫だ、私しか見ていない」
「……ん、っあ…さ、宰相ど…っふぁ」
「ヴァルターだ」

耳の裏に低い声が響く。それだけでまた声が漏れそうになる。

「ヴァ、ヴァルター…様?」
「敬称は不要だ、カナト」
「…あっ、ん、先っ、……さきっぽ、だめッ…」

ぐりっと指を差し込むように弄られる。溜まる熱がだらだらと先端から溢れ出す。

「やっ、あっあっ、ヴァル、…ぅんっ、ヴァルター」
「ほら、イキなさい」
「あ、っ」

低い声が甘く聞こえると、腰からなにかが迸り震える。先端から白濁のものが溢れ出した。

「…っ、カナト」
「…はぁ、っ…ヴァルター」
「口付けをしても?」

一つ、頷く。ヴァルターの顔が近付いて俺の唇に触れた。ぎゅっと目を瞑っていると、ぬるりと舌が唇を割って入り込む。
突然の感覚に思わずヴァルターの舌を噛みそうになった。

「…ふぁ、…っあ」
「随分と可愛らしい」
「んっ、…ひぁっ、ん、あっ」

キスをされながら、俺のものを包み込んだ手が止まらない。
与えられるものに追い付くのがやっとで、気付けば意識が飛んでいた。








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