Another Care World

ロキ

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第36話: 「広がる闇の痛み」

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―前編―
1. 異変の兆し
王立医療院の診察室で、美咲は若い女性の患者を診ていた。彼女の名前はリリー、20歳の織物職人の娘だった。彼女は一週間前から体調を崩し、今朝になって症状が悪化したという。
「どのような症状ですか?」美咲は優しく尋ねた。
「体が痛くて…」リリーは震える声で答えた。「でも、普通の痛みとは違うんです。体の中に何か…暗いものが広がっていくような…」
美咲は眉をひそめた。その描写は「闇の痛み」に似ていた。しかし、モルガスの「闇の核」は破壊され、「シャドウケア」の残党も壊滅したはずだった。
「いつから具体的にその感覚を感じ始めましたか?」
「三日前です」リリーは答えた。「最初は単なる疲れかと思ったのですが、昨夜から急に悪化して…」
美咲は「共感の魔法」を軽く発動させ、リリーの状態を探った。すぐに彼女は異変に気づいた。確かに「闇の痛み」の特徴があったが、何か違っていた。通常の「闇の痛み」よりも深く、より複雑なパターンで体内に広がっていた。
「少し詳しく診させてください」美咲は言った。
彼女は「共感の魔法」を強め、リリーの体内の「闇の痛み」を詳しく調べた。通常、「闇の痛み」は体の表面から内部へと広がるが、リリーの場合は中心から外側へと広がっていた。まるで彼女の内側に「闇の核」があるかのようだった。
「これは…」美咲は驚きを隠せなかった。
「どうしたんですか?」リリーが不安そうに尋ねた。
「心配しないで」美咲は彼女を安心させようとした。「治療できるわ。ただ、少し通常とは異なる症状ね」
美咲は「調和の医術」の基本的な治療法を適用した。彼女の「共感の魔法」で痛みを理解し、受け入れ、そして変容させる。金色の光がリリーの体を包み込み、闇のエネルギーと交わった。
しかし、予想外のことが起きた。闇のエネルギーは変容せず、むしろ美咲の「共感の魔法」に抵抗するかのように振る舞った。
「おかしいわ…」美咲は集中力を高め、より強い「共感の魔法」を放った。
今度は闇のエネルギーが部分的に変容し始めた。リリーの表情が少し和らいだ。
「少し楽になりました」彼女は言った。
「良かった」美咲は安堵したが、完全に治療できなかったことに不安を感じていた。「今日はここまでにしましょう。明日また来てください。さらに治療を続ける必要があります」
リリーが帰った後、美咲はすぐにマーリン院長を訪ねた。
「院長、重大な問題があります」彼女は診察室での出来事を詳細に報告した。
マーリン院長は深刻な表情で聞き、時折頷いていた。
「それは確かに懸念すべき事態だ」彼は言った。「『闇の痛み』の新たな形態か、あるいは全く別の何かかもしれない」
「『調和の医術』が完全に効かなかったことが最も心配です」美咲は言った。「これまでの『闇の痛み』なら、一度の治療でかなり改善するはずなのに」
「他の患者はいるのか?」
「まだ確認していません。リリーが最初のケースです」
「すぐに調査が必要だ」院長は立ち上がった。「王国各地の医療施設に問い合わせ、同様の症例がないか確認しよう」
その日の午後、レインとアルトが美咲の診察室を訪れた。
「聞いたぞ、新たな『闇の痛み』が発生しているって」アルトが心配そうに言った。
「ええ」美咲は頷いた。「でも、これまでのものとは少し違うの。『調和の医術』が完全には効かなかった」
「それは深刻だな」レインは眉をひそめた。「モルガスの『闇の核』が破壊された後も、何か残っていたのだろうか」
「わからないわ」美咲は窓の外を見つめた。「でも、これが単発のケースでないことを祈るわ」
しかし、彼女の願いは叶わなかった。その日の夕方までに、王国の各地から同様の症例が報告され始めた。北部の山岳地帯、東の平原、南の港町…様々な場所で、通常の「闇の痛み」とは異なる症状を持つ患者が現れていた。
マーリン院長は緊急会議を招集した。王立医療院の主要な医師たち、そして調和医術研究所からネガトとエリナも参加した。
「状況は予想以上に深刻だ」院長は厳しい表情で言った。「過去24時間で、王国全土から42件の新たな『闇の痛み』の症例が報告された。そのすべてが従来の治療法に完全には反応していない」
「広範囲すぎる」ネガトが指摘した。「これは自然発生ではない。何か意図的なものがあるはずだ」
「シャドウケアの残党?」アルトが尋ねた。
「可能性はある」ネガトは頷いた。「しかし、モルガスは死亡し、『闇の核』は破壊された。誰が新たな『闇の痛み』を広めているのか…」
「それより、まず治療法を見つけることが先決です」美咲は言った。「患者たちは苦しんでいます」
「その通りだ」院長は同意した。「まず、この新たな『闇の痛み』の性質を解明し、効果的な治療法を開発しなければならない」
「私が提案があります」美咲は立ち上がった。「『調和の医術』を強化する必要があります。私の『共感の魔法』だけでは不十分かもしれません。ネガトさんの『闇の医術』の知識と、より深く融合させる必要があるでしょう」
「賛成だ」ネガトも立ち上がった。「私たちの知識と力を結集させよう」
会議の後、美咲、レイン、アルト、ネガト、エリナは別室に集まり、詳細な計画を立てた。
「まず、患者の詳細な調査が必要だ」レインが言った。「この新たな『闇の痛み』の特性を理解するために」
「私が担当します」美咲は言った。「『共感の魔法』で患者の状態を詳しく調べます」
「私も協力しよう」ネガトが言った。「『闇の医術』の観点から分析する」
「俺は王国各地を回って、発生状況を調査する」アルトが申し出た。「何か共通点があるかもしれない」
「私は研究所で新たな治療法の開発に取り組みます」エリナが言った。
彼らは互いに頷き合い、それぞれの任務に向かった。
翌朝、美咲は再びリリーを診察した。彼女の状態は一晩で悪化していた。顔色は青白く、目の下には大きな隈ができていた。
「昨夜は眠れませんでした」リリーは弱々しく言った。「痛みが…増しています」
美咲は「共感の魔法」を使って彼女の状態を調べた。闇のエネルギーは確かに広がっており、より深く彼女の体に根付いていた。
「ネガトさん、お願いします」美咲は隣にいたネガトに言った。
ネガトは頷き、リリーに近づいた。彼は「闇の医術」の知識を使って、闇のエネルギーの性質を分析した。
「これは…」彼は驚いた表情を見せた。「通常の『闇の痛み』とは明らかに異なる。より適応力が高く、宿主の生命力と結びついている」
「どういうこと?」美咲が尋ねた。
「通常の『闇の痛み』は外部から侵入し、体内で増殖する」ネガトは説明した。「しかし、これは宿主自身の生命エネルギーを変換して増殖しているようだ。まるで…寄生虫のように」
「それで『調和の医術』が完全に効かなかったのね」美咲は理解した。「闇のエネルギーと宿主のエネルギーが区別しにくくなっている」
「そうだ」ネガトは頷いた。「しかし、これは『調和の医術』の本質に関わる問題だ。患者の痛みを理解し、受け入れ、変容させる…その原理は変わらない。ただ、アプローチを変える必要がある」
二人は新たな治療法を試みた。美咲の「共感の魔法」とネガトの「闇の医術」の知識を完全に融合させ、リリーの体内の闇のエネルギーを、彼女自身の生命力から分離しようとした。
金色の光と微かな黒いエネルギーが混ざり合い、紫色の光となってリリーの体を包み込んだ。
「これは…」リリーは驚いた表情を見せた。「温かい…」
闇のエネルギーが徐々に変容し始め、リリーの表情が和らいでいった。治療は30分ほど続き、最後には彼女の体から黒い霧のようなものが抜け出し、空中で消えていった。
「痛みが…消えました」リリーは信じられないという表情で言った。
「完全に治ったわけではないわ」美咲は優しく言った。「闇のエネルギーの一部はまだ残っています。数日間、定期的に治療を続ける必要があります」
リリーは感謝の気持ちを込めて頷いた。
治療後、美咲とネガトは結果を分析した。
「効果はあったが、完全ではない」ネガトは言った。「通常の『闇の痛み』なら、一度の治療でほぼ完治するはずだ」
「でも、アプローチは正しかったわ」美咲は言った。「闇のエネルギーと宿主のエネルギーを分離することが鍵ね」
「そうだ」ネガトは頷いた。「しかし、この方法は非常に労力を要する。すべての患者にこの治療を行うのは現実的ではない」
「より効率的な方法を見つける必要があるわね」
彼らが話している間に、アルトから連絡が入った。彼は北部の村から報告していた。
「状況は深刻だ」彼の声は緊迫していた。「この村だけで15人の患者が確認された。そして、共通点を見つけた。全員が先週、同じ行商人から買い物をしている」
「行商人?」美咲は驚いた。
「ああ、『闇の痛み』は物品を通じて広がっているようだ」アルトは言った。「特に、青い宝石のペンダントを買った人々が感染している」
「それは重要な手がかりね」美咲は言った。「その行商人は?」
「すでに村を離れている」アルトは残念そうに言った。「追跡中だ」
美咲とネガトは互いに顔を見合わせた。状況は予想以上に複雑だった。新たな「闇の痛み」は物品を通じて広がり、従来の治療法では完全に治せない。そして、その背後には何者かの意図があるようだった。
「これは単なる疫病ではない」ネガトは暗い表情で言った。「計画的な攻撃だ」
「でも、誰が?そして、なぜ?」美咲は窓の外を見つめた。
空には暗雲が立ち込め、遠くで雷鳴が轟いていた。まるで、これから訪れる嵐の前触れのようだった。

―中編―
2. 感染の広がり
アルトからの報告を受け、マーリン院長は即座に王国全土に警告を発した。青い宝石のペンダントを含む、不審な行商人から購入した品物に注意するよう呼びかけた。
しかし、警告は遅すぎた。すでに多くの人々が感染しており、「闇の痛み」は急速に広がっていた。
王立医療院は患者で溢れかえり、医師たちは不眠不休で治療に当たっていた。美咲とネガトが開発した新たな治療法は効果を示したが、時間と労力がかかりすぎた。
「このペースでは間に合わない」レインは疲れた表情で言った。「感染のスピードが治療のスピードを上回っている」
「より効率的な治療法が必要ね」美咲は同意した。
彼女は日本での経験を思い出していた。現代医学では、ワクチンや抗体療法のような予防・治療法がある。「ケアワールド」にも同様の概念を適用できないだろうか。
「ネガトさん、『闇の痛み』に対する免疫のようなものは存在するの?」美咲が尋ねた。
「興味深い質問だ」ネガトは考え込んだ。「通常、『闇の痛み』は魔法的なエネルギーであり、免疫という概念は適用されない。しかし…」
彼は何かを思いついたように顔を上げた。
「回復した患者のエネルギーパターンを調べたことがあるか?」
「いいえ」美咲は首を振った。
「試してみる価値がある」ネガトは言った。「もし回復した患者が『闇の痛み』に対する抵抗力を持っているなら、その特性を利用できるかもしれない」
彼らはすぐに行動に移した。リリーを含む、治療によって回復した患者たちのエネルギーパターンを調査した。
「興味深い」ネガトは分析結果を見て言った。「回復した患者のエネルギーパターンには、闇のエネルギーに対する抵抗力を示す特徴がある」
「それを他の患者に移植できるかしら?」美咲が尋ねた。
「理論上は可能だ」ネガトは頷いた。「『調和の医術』の原理を応用すれば、回復した患者のエネルギーパターンを抽出し、感染した患者に移植できるかもしれない」
彼らは新たな治療法の開発に取り組んだ。エリナも研究所から駆けつけ、三人で昼夜を問わず研究を続けた。
三日後、彼らは「調和抗体」と名付けた新たな治療法を完成させた。回復した患者から抽出した特殊なエネルギーを結晶化し、それを感染した患者に投与するというものだった。
「理論上は、これによって患者の体内で闇のエネルギーと宿主のエネルギーの分離が促進され、治癒過程が加速するはずだ」ネガトは説明した。
「試してみましょう」美咲は言った。
最初の試験は成功した。「調和抗体」を投与された患者は、通常の治療よりも速く回復した。しかも、一度の治療で症状が大幅に改善した。
「これは革命的だ」マーリン院長は結果を見て感嘆した。「『調和抗体』の大量生産を始めよう」
王立医療院と調和医術研究所は協力して、「調和抗体」の生産ラインを設立した。回復した患者たちも進んで協力し、エネルギーの提供者となった。
しかし、問題はまだ残っていた。感染源である青い宝石のペンダントの行方と、その背後にいる人物の特定だ。
アルトは行商人の追跡を続けていた。彼は東の国境近くの町で行商人の痕跡を見つけた。
「彼はこの町で多くのペンダントを売ったようだ」アルトは美咲に報告した。「そして、東の森に向かったという情報がある」
「東の森…」美咲は考え込んだ。「そこには何があるの?」
「古い遺跡だ」レインが答えた。「かつて魔法使いたちの聖地だったと言われている」
「調査に行くべきね」美咲は決意した。
「危険だ」レインは心配そうに言った。「感染源に近づくことは、大きなリスクを伴う」
「でも、根本的な解決には原因を突き止める必要があるわ」美咲は言った。「『調和抗体』は対症療法に過ぎない。感染源を断たなければ、『闇の痛み』は広がり続けるでしょう」
レインは渋々同意した。「では、私も同行する」
「私も行くぞ」アルトが言った。
「私は患者の治療を続ける」ネガトが言った。「エリナと共に、『調和抗体』の生産を監督する」
彼らは翌朝、東の森に向かう準備を始めた。
その夜、美咲は不思議な夢を見た。彼女は暗い森の中を歩いていた。周囲には青い光を放つ宝石が散りばめられていた。そして、森の奥から声が聞こえてきた。
「来なさい、共感の魔法の使い手よ…」
声は優しく、しかし不気味だった。美咲は声の方へ歩いていった。森の奥には古い石造りの祭壇があり、その上に巨大な青い宝石が置かれていた。
「あなたは誰?」美咲は尋ねた。
「私は古の者…」声は宝石から発せられているようだった。「そして、新たな時代の使者…」
「あなたが『闇の痛み』を広めているの?」
「痛みではない…変容だ…」声は答えた。「世界を変えるための…必要な過程…」
美咲は恐怖を感じた。「人々を苦しめて、何の意味があるの?」
「理解できない者には…苦しみに見えるだろう…」声は静かに言った。「しかし、それは進化の過程…より高次の存在への道…」
「やめて!」美咲は叫んだ。「人々を苦しめるのはやめて!」
「遅すぎる…」声は笑った。「過程はすでに始まっている…そして、あなたも…その一部となる…」
巨大な青い宝石が突然、まばゆい光を放ち、美咲に向かって飛び込んできた。
「やめて!」
美咲は悲鳴と共に目を覚ました。彼女は冷や汗をかき、心臓が激しく鼓動していた。
(あれは…単なる悪夢?それとも…)
彼女は不安を感じながらも、再び眠りについた。しかし、その夢の意味を考えずにはいられなかった。
翌朝、美咲、レイン、アルトは東の森に向かって出発した。彼らは馬に乗り、一日かけて森の入口に到着した。
森は予想以上に暗く、不気味だった。巨大な木々が空を覆い、ほとんど日光が差し込まなかった。
「警戒して」アルトは剣を手に取った。「この森には危険な生物がいるという噂がある」
彼らは慎重に森の中を進んだ。レインは魔法の光で道を照らし、アルトは前方を警戒した。美咲は「共感の魔法」を使って、周囲のエネルギーを感じ取っていた。
「何か…異常を感じるわ」彼女は言った。「森全体に、微かな闇のエネルギーが漂っている」
「私も感じる」レインは頷いた。「しかし、通常の『闇の痛み』とは少し異なる。より…古い感じがする」
彼らが森の奥へと進むにつれ、闇のエネルギーは強くなっていった。そして、美咲は夢で見たのと同じ青い光を見つけた。
「あれは…」
木々の間から、青い光が漏れていた。彼らはその光源に向かって進んだ。
やがて、彼らは小さな空き地に出た。そこには古い石造りの祭壇があり、美咲の夢と全く同じ光景だった。
「信じられない…」美咲は震えた。「夢で見た通りの場所…」
「何の夢だ?」アルトが尋ねた。
美咲は昨夜見た夢について説明した。レインとアルトは驚いた表情で聞いていた。
「予知夢か?」レインは考え込んだ。「それとも、何者かが君の夢に侵入したのか…」
「どちらにせよ、注意が必要だ」アルトは警戒を強めた。
彼らは祭壇に近づいた。しかし、夢とは異なり、祭壇の上に巨大な青い宝石はなかった。代わりに、小さな青い結晶の欠片が散らばっていた。
「これらは…」レインは一つを手に取った。「ペンダントに使われていた宝石と同じものだ」
「感染源ね」美咲は理解した。
突然、森の中から足音が聞こえた。彼らは振り返り、一人の男が近づいてくるのを見た。それは行商人の姿だった。
「お客さんですか?」男は微笑んだ。「それとも、私を追ってきた?」
「あなたが青い宝石のペンダントを売っていた行商人ね」美咲は言った。
「ええ、そうですよ」男は肩をすくめた。「良い商売でした。みんな喜んで買ってくれましたからね」
「その宝石が『闇の痛み』を広めていることを知っていたの?」美咲は厳しく尋ねた。
「『闇の痛み』?」男は首を傾げた。「私は単に言われた通りに宝石を配っただけですよ。その効果については知りません」
「誰に言われたんだ?」アルトが剣を構えた。
「それは…」男は急に表情を変えた。「言えません」
「話してもらうぞ」アルトは脅すように一歩前に出た。
「待って」美咲は彼を止めた。彼女は「共感の魔法」を使って、男のエネルギーを探った。「この人も感染している…」
確かに、男の体内には闇のエネルギーが広がっていた。しかし、通常の感染者とは異なり、彼は苦しんでいないようだった。
「あなたは苦しくないの?」美咲が尋ねた。
「苦しい?」男は笑った。「いいえ、むしろ素晴らしい気分ですよ。力が湧いてくる感じがします」
「彼は操られている」レインが警告した。「闇のエネルギーが彼の心を支配している」
「正解だ」男の声が突然変わった。より深く、より古い声に。「彼は私の僕。そして、私の計画の一部」
「あなたは誰?」美咲は尋ねた。
「私の名は、アズラエル」男の口を借りた声が答えた。「古の時代から眠っていた者。そして今、再び目覚めた者」
「あなたが『闇の痛み』を広めている理由は?」
「それは『闇の痛み』ではない」アズラエルは言った。「それは変容のエネルギー。人々を次の段階へと導くもの」
「人々は苦しんでいる!」美咲は怒りを込めて言った。
「変容の過程には苦しみが伴う」アズラエルは冷たく言った。「蝶になるために、毛虫は繭の中で溶けなければならない。人類も同様だ」
「狂気の沙汰だ」アルトは剣を構えた。「止めてやる」
「止められはしない」アズラエルは笑った。「過程はすでに始まっている。そして、あなたたちも…その一部となる」
男の体から突然、強烈な闇のエネルギーが放出された。それは波のように広がり、三人に襲いかかった。
「気をつけて!」レインは魔法の盾を展開した。
美咲も「共感の魔法」で防御を試みたが、このエネルギーは通常の「闇の痛み」よりも遥かに強力だった。
「これは…」美咲は苦しげに言った。「モルガスの『闇の核』よりも…強い…」
闇のエネルギーは彼らの防御を突破し、三人を包み込んだ。美咲は意識が遠のくのを感じた。
「レイン…アルト…」
彼女の視界が暗くなる前、最後に見たのは男の背後に立つ巨大な影だった。それは人の形をしていたが、完全な闇で構成されているようだった。
そして、美咲は意識を失った。

―後編―
3. 闇の真実
美咲が目を覚ますと、彼女は石の祭壇の上に横たわっていた。レインとアルトも近くで横になっており、まだ意識がないようだった。
彼女は起き上がろうとしたが、体が動かなかった。見えない力に押さえつけられているようだった。
「目覚めたか、共感の魔法の使い手よ」
声は闇の中から聞こえてきた。美咲は目を凝らし、祭壇の前に立つ影を見つけた。それは人の形をしていたが、完全な闇で構成されているようだった。
「アズラエル…」美咲は名前を呟いた。
「そう呼ばれていた時期もあった」影は言った。「私は多くの名を持つ。多くの形を取る。しかし、本質は常に同じ」
「あなたは何者?」美咲は尋ねた。「なぜ人々を苦しめる?」
「私は変化そのもの」アズラエルは答えた。「混沌から秩序へ、秩序から混沌へ。そのサイクルを司る者」
彼は美咲に近づいた。闇の中に、二つの青い光が浮かび上がった。それは彼の目だった。
「人々は変化を恐れる」彼は続けた。「彼らは安定と予測可能性を好む。しかし、それでは進化はない。変化なくして、成長なし」
「だからといって、強制的に人々を変えようとするのは間違っている」美咲は反論した。
「強制?」アズラエルは笑った。「私は単に可能性を提供しているだけだ。青い宝石は触媒に過ぎない。それが各人の内なる闇と共鳴し、変容を促す。受け入れるか拒絶するかは、彼ら自身の選択だ」
「でも、彼らには選択の余地がなかった」美咲は言った。「宝石が何をもたらすか知らずに手に入れたのだから」
「無知もまた選択だ」アズラエルは冷たく言った。「そして、変容の過程で苦しむのは、彼らが変化に抵抗するからだ。完全に受け入れれば、苦しみはない」
「行商人のように?」
「そう」アズラエルは頷いた。「彼は完全に受け入れた。そして、新たな力を得た」
美咲は思い出した。行商人は確かに苦しんでいなかった。しかし、彼は自分自身でもなかった。アズラエルの操り人形になっていた。
「それは受け入れたのではなく、乗っ取られたのよ」美咲は言った。
「解釈の問題だ」アズラエルは肩をすくめた。「いずれにせよ、過程は進行中だ。そして、あなたも重要な役割を果たす」
「私?」
「そう」アズラエルの青い目が輝いた。「あなたの『共感の魔法』は特別だ。二つの世界の力を持つ。それは私の計画に完璧に適合する」
美咲は驚いた。彼は彼女が日本からきたことを知っているようだった。
「あなたは私のことを…」
「もちろん知っている」アズラエルは言った。「私は全ての世界に存在する。全ての変化を見守る。あなたが二つの世界を行き来できることも知っている」
「それが何の関係があるの?」
「私の目的は世界の変容だ」アズラエルは説明した。「しかし、一つの世界だけでは不十分。全ての世界が変わらなければならない。あなたの力を使えば、二つの世界を同時に変容させることができる」
美咲は恐怖を感じた。彼は「ケアワールド」だけでなく、日本の世界も変えようとしているのだ。
「絶対に協力しないわ」彼女は強く言った。
「選択肢はない」アズラエルは冷たく言った。「あなたの友人たちを見なさい」
美咲はレインとアルトを見た。二人の体が微かに震え、顔には苦痛の表情が浮かんでいた。
「彼らはすでに変容の過程にある」アズラエルは言った。「あなたが協力しなければ、彼らは苦しみ続ける。そして最終的には、意識を失い、私の僕となる」
「やめて!」美咲は叫んだ。「彼らを解放して!」
「協力すれば、考えよう」アズラエルは言った。
美咲は苦しい選択を迫られていた。友人たちを救うために協力するか、二つの世界を守るために拒否するか。
しかし、彼女には秘密の武器があった。「共感の魔法」は単なる治療の力ではない。それは心と心を繋ぎ、理解し、変容させる力だ。
「わかったわ」美咲は降伏するふりをした。「協力する。でも、まず友人たちを解放して」
「賢明な判断だ」アズラエルは満足げに言った。「しかし、彼らを完全に解放することはできない。保険として、彼らの体内の闇のエネルギーは残しておく」
彼は手を動かし、レインとアルトを縛っていた見えない力を緩めた。二人はうめき声を上げ、少し動けるようになった。
「美咲…」レインが弱々しく呼びかけた。
「大丈夫よ」美咲は彼を安心させようとした。「なんとかするわ」
「さあ、始めよう」アズラエルは言った。「あなたの『共感の魔法』を私に貸しなさい」
彼は美咲の前に青い宝石を置いた。それは彼女が夢で見た巨大な宝石だった。
「この宝石に魔法を注ぎ込みなさい」彼は命じた。「それが二つの世界を繋ぐ門となる」
美咲は宝石を見つめた。それは美しく、魅惑的だった。彼女は「共感の魔法」を発動させ、金色の光を放った。
「そう、その調子だ」アズラエルは満足げに言った。
しかし、美咲の計画は別にあった。彼女は「共感の魔法」を使って、アズラエルの本質を探ろうとしていた。敵を理解することが、彼を倒す鍵になるかもしれない。
彼女の意識はアズラエルに向かって伸びていった。闇の中に、彼の存在を感じ取ろうとした。
最初は抵抗があった。アズラエルの闇は濃く、侵入を許さなかった。しかし、美咲は諦めなかった。彼女は「共感の魔法」をさらに強め、闇の壁に小さな亀裂を作り出した。
そして、彼女はついにアズラエルの本質を垣間見た。
それは驚くべき真実だった。アズラエルは単一の存在ではなかった。彼は無数の意識の集合体だった。かつて「闇の痛み」に感染し、完全に変容した人々の意識が融合したものだった。
そして、その中心には…
「モルガス…!」美咲は驚いて呟いた。
「見たな」アズラエルの声が変わった。それはモルガスの声だった。「そう、私はモルガスだ。しかし、もはや以前の私ではない。私は進化した。『闇の核』と融合し、より高次の存在となった」
「あなたは死んだはずよ」美咲は震えた。
「肉体は死んだ」モルガスは言った。「しかし、意識は『闇の核』に吸収された。そして、古代の力と融合した。今の私はアズラエル。変容の使者だ」
美咲は恐怖を感じたが、同時に希望も見出した。モルガスの意識がまだ存在するなら、彼を倒した方法が再び使えるかもしれない。
「あなたの計画は失敗するわ」美咲は強く言った。「前にもあなたを止めた。今回も同じよ」
「前回とは状況が違う」アズラエル/モルガスは笑った。「今の私はより強力だ。そして、あなたの『共感の魔法』も私のものになる」
彼は手を伸ばし、美咲の「共感の魔法」のエネルギーを強引に引き出そうとした。美咲は抵抗したが、彼の力は強大だった。
「抵抗は無駄だ」彼は言った。「あなたの力は私のものになる」
しかし、美咲には秘密の計画があった。彼女は「共感の魔法」を通じて、レインとアルトに呼びかけていた。
(レイン、アルト、聞こえる?私の声が聞こえたら、応えて)
(美咲…?)レインの弱々しい声が彼女の心に響いた。
(聞こえるのね。良かった。アルトは?)
(ここにいる…)アルトの声も聞こえた。
(二人とも、力を貸して。私の『共感の魔法』を通じて、あなたたちのエネルギーを私に送って)
(わかった…)
レインとアルトは、美咲の指示に従った。彼らは自分たちの持つ魔法と生命力を、美咲の「共感の魔法」を通じて彼女に送り始めた。
美咲は力が増していくのを感じた。そして、彼女はその力を使って、アズラエル/モルガスの闇に対抗した。
「何をしている?」アズラエル/モルガスは怪訝な表情を見せた。
「あなたは『共感の魔法』の本質を理解していない」美咲は静かに言った。「それは単なる力ではない。心と心を繋ぐ絆。そして、その絆は闇よりも強い」
彼女の体から金色の光が溢れ出し、レインとアルトも同じく光り始めた。三人の光が一つになり、祭壇全体を包み込んだ。
「やめろ!」アズラエル/モルガスは叫んだ。
しかし、美咲は止まらなかった。彼女は「共感の魔法」の全力を解放し、アズラエル/モルガスの闇に向けて放った。
「あなたの言う通り、変化は必要よ」美咲は言った。「でも、それは強制されるものじゃない。自ら選び取るもの。そして今、私たちは闇ではなく光を選ぶわ」
金色の光がアズラエル/モルガスを包み込んだ。彼は苦悶の叫びを上げ、闇の体が揺らぎ始めた。
「私を倒しても…変容は止まらない…」彼は苦しげに言った。「青い宝石はすでに世界中に…」
「それも浄化するわ」美咲は決意を込めて言った。
彼女は「共感の魔法」をさらに強め、アズラエル/モルガスの中心に向けて集中した。彼の本質である「闇の核」の残滓を探し出し、それを変容させようとした。
「痛みを理解し、受け入れ、そして変容させる」美咲は「調和の医術」の原理を唱えた。「あなたの闇も例外ではない」
アズラエル/モルガスの体が激しく震え、闇の中から光が漏れ始めた。彼は最後の抵抗を試みたが、美咲の「共感の魔法」と、レイン、アルトの力の前には無力だった。
「これで終わりよ」美咲は言った。
最後の光の波が、アズラエル/モルガスを完全に包み込んだ。彼の闇の体が崩れ始め、青い宝石も砕け散った。
強烈な光の爆発が起こり、美咲たちは一瞬、目を閉じなければならなかった。
光が収まると、アズラエル/モルガスの姿はなく、祭壇の上には小さな透明な結晶だけが残っていた。
「成功したの…?」美咲は弱々しく言った。
「ああ」レインは彼女を支えた。「彼は消えた」
「でも、青い宝石は…」アルトが心配そうに言った。
「その心配はないぞ」
振り返ると、そこにはネガトとエリナが立っていた。
「ネガトさん!エリナ!」美咲は驚いた。「どうしてここに?」
「君たちが危険にさらされていると感じたんだ」ネガトは説明した。「『調和の医術』の繋がりを通じて」
「そして、私たちは『調和抗体』の新たな形態を開発しました」エリナが付け加えた。「それは青い宝石のエネルギーを中和できます」
「すでに王国全土に配布を始めている」ネガトは言った。「感染者たちは急速に回復しつつある」
美咲は安堵のため息をついた。「良かった…」
彼女は疲れ果て、レインの腕の中で意識を失いかけた。
「美咲!」レインが彼女を抱きとめた。
「大丈夫…ただ疲れただけ…」彼女は弱々しく微笑んだ。
ネガトは彼女の状態を確認し、頷いた。「魔力を使い果たしただけだ。休息が必要だ」
彼らは美咲を担いで、森を後にした。
4. 新たな調和
一週間後、美咲は王立医療院のベッドで目を覚ました。窓からは明るい陽光が差し込んでいた。
「やっと目覚めたな」
アルトが椅子に座って彼女を見ていた。
「アルト…」美咲は微笑んだ。「みんなは?」
「無事だ」アルトは安心させた。「レインは図書館で研究中、ネガトとエリナは『調和抗体』の配布を監督している」
「感染者たちは?」
「ほとんどが回復した」アルトは嬉しそうに言った。「『調和抗体』の新型は驚くほど効果的だった。青い宝石のエネルギーを完全に中和し、患者たちは急速に回復している」
美咲は安堵した。「良かった…」
「お前が倒したアズラエル、あるいはモルガスについてだが」アルトは真剣な表情になった。「彼は本当に消えたのか?」
「わからないわ」美咲は正直に答えた。「彼の物理的な形態は破壊されたけど、彼の言っていた『変容』の力は…完全には消えていないかもしれない」
「警戒が必要だな」
「ええ」美咲は頷いた。「でも今は、回復に集中しましょう。患者たちの、そして私たち自身の」
その日の午後、マーリン院長、レイン、ネガト、エリナが美咲のもとを訪れた。
「回復が早くて何よりだ」院長は微笑んだ。
「ありがとうございます」美咲は起き上がった。「皆さんのおかげです」
「いや、君のおかげだ」ネガトは真剣に言った。「君の『共感の魔法』がなければ、アズラエル/モルガスを倒すことはできなかった」
「私一人の力じゃないわ」美咲は首を振った。「みんなの力があったから」
「それこそが『調和の医術』の本質だ」ネガトは頷いた。「一人一人の力は小さくても、心を一つにすれば、どんな闇も打ち破れる」
「今回の事件から学ぶことは多い」レインが言った。「特に、『闇の痛み』の新たな形態について」
「ええ」美咲は同意した。「アズラエル/モルガスの『変容』のエネルギーは、通常の『闇の痛み』とは異なっていた。それは宿主のエネルギーと融合し、より深く根付いていた」
「それに対抗するために、私たちは『調和の医術』を進化させる必要があった」ネガトが付け加えた。「『調和抗体』の開発は、その第一歩に過ぎない」
「これからも新たな脅威が現れるかもしれない」エリナが心配そうに言った。
「その時は、また一緒に立ち向かいましょう」美咲は決意を込めて言った。
彼らは互いに頷き合い、未来への決意を新たにした。
数日後、美咲は完全に回復し、通常の診療に戻った。彼女は「調和の医術」をさらに発展させ、新たな治療法の開発に取り組んでいた。
ある日、彼女が診察室で研究をしていると、レインが訪ねてきた。
「何か発見があったよ」彼は興奮した様子で言った。
「何?」美咲は顔を上げた。
「祭壇に残されていた透明な結晶を分析したんだ」レインは説明した。「それはアズラエル/モルガスのエネルギーが変容したものだ。しかし、それは純粋な闇ではなく、光と闇の調和したエネルギーだった」
「調和?」美咲は驚いた。
「そう」レインは頷いた。「君の『共感の魔法』が、彼の闇を完全に消し去ったのではなく、変容させたんだ。光と闇の新たな形態へと」
「それは…良いことなの?」
「それが興味深いところだ」レインは続けた。「この新たなエネルギーは、治療効果を持っている。特に、精神的なトラウマや深い心の傷に対して」
「アズラエルの言っていた『変容』が、実は…」
「破壊ではなく、治癒の可能性を秘めていたのかもしれない」レインは言った。「彼の方法は間違っていたが、その根底にあった考えは…」
「全てが調和の一部なのね」美咲は理解した。「光も闇も、痛みも喜びも」
「その通りだ」レインは微笑んだ。「そして、それこそが『調和の医術』の真髄だ」
美咲は窓の外を見つめた。空には雲一つなく、青空が広がっていた。しかし、彼女は知っていた。晴れた日の後には、必ず雨が来る。光の後には闇が、そして闇の後には再び光が。
それが世界の調和であり、彼女たちの目指す医術の本質だった。
「新たな挑戦が待っているわね」美咲は静かに言った。
「ああ」レインは頷いた。「しかし、私たちは一人じゃない」
「ええ、一人じゃない」美咲は微笑んだ。
彼らの前には、まだ多くの試練が待ち受けているだろう。新たな「闇の痛み」、新たな敵、新たな困難。しかし、彼らは共に立ち向かい、乗り越えていくだろう。
そして、その過程で「調和の医術」はさらに進化し、より多くの人々を救うことになるだろう。
光と闇の調和。それこそが、彼らの目指す道だった。
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