異世界でも介護するんだってさ〜王宮の魔法と絆〜

ロキ

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異世界でも介護するんだってさ 

第4話: 闇に潜む影

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シャドウベアとの戦いを終え、無事に王宮へ戻った悠斗とリリス。しかし、エルドリッチの「操られていた可能性」という言葉が二人の心に重くのしかかっていた。森での異変が偶然ではないとしたら、一体誰が、何の目的で魔物を操っていたのか——その疑念は、次第に大きな不安となっていく。

新たな任務の発令
翌朝、悠斗とリリスはエルドリッチに呼び出された。彼は厳しい表情を浮かべながら二人にこう告げた。
「お前たちにはもう一つ試練を課す。この国で最近起きている異変について調査してもらいたい。特に、シャドウベアが現れた森の近くにある村で奇妙な事件が報告されている。」
エルドリッチによると、その村では最近、住民たちが次々と原因不明の病に倒れているという。医師たちが治療を試みても効果はなく、村全体が恐怖と混乱に包まれているとのことだった。
「この病気には魔法的な要因が絡んでいる可能性が高い。お前たちには現地へ行き、原因を突き止めてほしい。そしてもし解決できるならば、それも頼む。」
悠斗は戸惑いながらも頷いた。「僕たちにそんな大役が務まるでしょうか?」
エルドリッチは静かに微笑み、「お前たちはもう十分に成長している。自分を信じろ」と励ました。その言葉に背中を押された二人は、再び未知なる任務へ向かう決意を固めた。

村への旅路
村へ向かう道中、悠斗とリリスは慎重に周囲を警戒しながら進んだ。前回のシャドウベアとの戦い以降、二人は互いへの信頼感を深めており、その絆が旅の心強い支えとなっていた。
「ねえ、悠斗さん。今回の病気、本当に魔法が関係してると思う?」リリスがふと問いかける。
「正直わからない。でも、普通の病気なら医者が治せないなんてことは少ないだろうし……何か特別な力が関わっている可能性は高いと思う。」悠斗は真剣な表情で答えた。
その会話を交わしながら進む中で、二人は道端で倒れている一人の男性を発見した。彼は村から来た農夫であり、体中に黒ずんだ痣のようなものが広がっていた。
「助けて……村のみんなも……」農夫は弱々しい声で訴えかけると、そのまま意識を失ってしまった。
悠斗はすぐさま彼の脈を確認しながら、「この症状……普通じゃない」と呟いた。一方でリリスは急ぎ魔法で応急処置を施し、なんとか農夫の命を繋ぎ止めることに成功した。

村での調査
ようやく村へ到着した二人を待ち受けていたのは、不気味な静寂だった。家々には灯りもなく、人々は怯えた様子で窓から外を覗いているだけだった。
「ここ、本当に生きてる村なの?」リリスが不安げにつぶやく。
二人が村長宅を訪れると、年老いた村長が疲れ切った表情で迎えてくれた。彼によれば、この病気は数週間前から突然広まり始め、多くの住民が倒れているという。そして奇妙なことに、この病気にかかった者たちは皆、「夜になると黒い霧を見る」と口々に語っているとのことだった。
「黒い霧……?」悠斗は眉をひそめた。その言葉には何か禍々しいものを感じ取ったからだ。
黒い霧との遭遇
その夜、村長宅で休んでいた悠斗とリリスだったが、不意に外から低いうなり声のような音が聞こえてきた。二人は急いで外へ飛び出すと、そこには本当に黒い霧が漂っていた。そしてその霧から現れたのは、人間とも動物ともつかない異形の存在だった。
「これ……魔物!? でも何か違う!」リリスが驚きの声を上げる。
その存在は明らかに魔法的な力によって作り出されたものであり、生き物というよりも呪詛そのものといった印象だった。悠斗とリリスはすぐさま戦闘態勢に入り、その異形と対峙することになった。

初めての連携魔法
この戦闘では、二人の新しい力——連携魔法——が初めて発揮されることとなった。エルドリッチから教わった基礎魔法を応用し、互いの力を組み合わせることでより強力な効果を生み出す技術だ。
「私が炎で奴らの動きを封じる! 悠斗さん、その隙に光魔法で仕留めて!」リリスが指示を出す。
「わかった! 頼むぞ!」悠斗も即座に応じた。
リリスの炎魔法によって黒い霧が一時的に消散し、その隙を突いて悠斗の光魔法「ヒーリングライト」が異形へ放たれた。その光には浄化作用があり、異形は悲鳴ともつかない音を上げながら消滅していった。

陰謀への手掛かり
戦闘後、二人は異形が消滅した場所に残された痕跡を調べた。そこには奇妙な紋様——明らかに呪術的なもの——が刻まれていた。それを見て悠斗は確信する。この病気や黒い霧には、人為的な悪意が関わっている、と。
「これ……誰かが意図的に仕組んだものだよね。」悠斗が険しい表情で言うと、リリスも頷いた。「どうしてこんなこと……」
その後、村長にも報告した二人だったが、この紋様について知っている者はいなかった。ただ一つだけ分かったこと、それはこの紋様には古代魔法特有の特徴があるということだった。
次なる目的地へ
村でできる限り手当てや調査を行った後、二人はエルドリッチへ報告するため王宮へ戻ることとなった。しかしその胸中には、新たな疑問と不安が渦巻いていた。この事件の背後には何者かの陰謀——それも非常に大きな規模——が潜んでいる可能性。そしてそれこそ、この世界全体に危機を及ぼすものではないかという予感だった。
「これからどうなるんだろうね……」帰路につく中で呟くリリス。その言葉には、自分たちだけでは到底解決できないほど大きな問題へ足を踏み入れてしまった恐怖が滲んでいた。
しかし悠斗は静かな決意を込めて答えた。「僕たちはできる限りやるしかない。この世界でも誰かの役に立つためにな。」
こうして新たなる試練への幕開けとなり、大きな陰謀への第一歩として物語はさらに深まっていく——。
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