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着飾って出て行く母を止められなかった夜
しおりを挟むその日、私の16歳の誕生日だった。もうお祝いする歳でもないが、家に帰れば美味しいご飯が食べられると思っていた。そんな風に誕生日の日は特別な気がしていた。
家に着いたら父と姉はいなかった。祖父母もいなかった。母は、コンビニの小さい200円のケーキを一つだけ残して、「てきとうにご飯食べて」と言い残し、着飾って遊びに出掛けた。
自分がこの日に産まれたことだけを呪い、ケーキだけ食べて布団に入った。やけに広く感じた布団。冷たい布団。感じた違和感。未だに忘れられない感覚がある。父と姉が仕事と修学旅行でいないのはしょうがない。だが、母が娘の誕生日よりも男と遊ぶことを選んだことはやけにショックだった。きっと、好きになってしまうと周りが見えないタイプなんだなと思った。
やけに楽しそうな顔、娘には作れない顔。女はいくつになっても女のままだ。
そう思った16の冬。
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