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(10/47)おへそには入れないからぁっ!
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虫の駆除じゃん。
いくら初心者とはいえ虫の駆除じゃん。
確かに大物の退治なんて絶対無理だよ?
何もできない俺と女の子が組んだ仕事だってのはわかってるよ?
それにしたって……、それにしたって初仕事が虫の駆除とかになるとテンションがあがらない。
「まあ、最初はこれくらいの超入門レベルからこなしてくってのが良いと思うんだよ?」
リタは何かを察したのかそう言うと泉への森をスタスタと進む。
俺はその後をえっちらおっちらついていく。
「おっと」
ぬかるみに足をとられバランスをくずす。
「あ、ここぬかるんでるから気をつけるんだよ?」
しっかりと尻もちをついた後の俺にアドバイスをくれた。
「……おい」
「だって、これくらい大丈夫だと思うじゃない。どれだけ歩き慣れてないんだよ?」
地べたに座り込んでいる俺にリタが手を伸ばす。
「……ぬかるみがあるとか、そういうことは先に言ってくれよ」
その手をつかみながらも文句を言う。
「しっかし」
リタが笑いながら言葉を続ける。
「全く、別の人にも『コトンボ未満』とか言われてたとは」
口が大きく全開になっている。そして、
「未満じゃないってことを証明するためにもささっと片付けないとだよ」
と、ウインクして親指を立てた。
そう、俺たちは今『コトンボ』の駆除に向かっている。
ちなみに『コトンボ』とはトンボの子どもの総称らしく。
つまりは虫。……デズリーの俺の初仕事は虫の駆除なのだ。
「『コトンボ未満』ってことはなにか?俺はリタにも別のヤツにも虫ケラ以下ということを言われたということか?」
「むしけら?なにそれ」
「なんていうか、小さな虫?要は俺は『小さな虫にも及ばない』って言われてたってことか?」
「ははは。そうだね。そういう意味で合っているんだよ」
なんだよ。
結構ひどくない?
「カイは馴染みがないかもしれないけど、コトンボはデズリーで割とよく使われる言い回しなんだよ」
「そういうものなのか?」
「忙しいときには『コトンボでも借りたい』とか、価値のわからない人に『コトンボに金貨』とか」
それ……、猫でも良いのでは?
「なあ、リタ……」
と、俺が話そうとしたが、リタがさえぎり話し出す。
「さ、泉が見えてきたよ。コトンボの生息地だから気を引き締めて。だからそろそろ間抜け顔やめて」
「引き締めるってトンボ相手に?っていうか、間抜けな顔ってなんだよ。リタこそ……」
って言いたいけど、こいつ整っているんだよなあ。
「ボクこそ何?」
しかたなく反抗の方法を変える。
「いや、その、リタこそ虫大丈夫なのか?」
「好きじゃないけど大丈夫。そもそも今回はケエジトンボのコトンボだし。毒とか特殊な能力もない普通のコトンボだし」
本当凛々しいなあ、リタ。
草木の向こう側に泉が見えてきた。
石像がその淵に建っている。
「泉の女神エビアンヌ様だよ」
リタが台座の上に建っている女神像の説明をしてくれた。
そして生息地というだけあって、石像の周りには確かにたくさんのトンボが飛んでいる。
「え?女神はデズリーじゃないの?」
「デズリー様はこの町全体の女神。エビアンヌ様はこの泉の女神」
「分担制なのか?」
「お一人でたくさん見られないでしょ?優しい女神様たちがいろんなところで見守ってくださるの」
「ふーん。なるほど。で?まあ早い話、トンボを採っ捕まえて駆除すれば良いんだろ?」
俺はあくびをしながらリタに確認する。
「女神さまの前であくび失礼でしょ。バチが当たるわよ。それと油断しないでってば。痛い目見るよ?」
「さっきからなんだよ。たかがトンボだろ」
「そう?じゃ、信じるんだよ?行くよ!」
そういうとリタは石像へと駆け出した。
俺も後を追う。
え?
なんだかトンボたちと眼が合った気がした。
瞬間、俺は声をあげていた。
「痛い!痛い!痛い!」
トンボたちが一斉に突っ込んできた。
俺の身体へ一直線へ突撃してくる。
突き刺さりこそしないが、間近で小石を全力でぶつけられているような痛さだ。
っていうか、こいつら全然小さくないぞ?体長10センチは余裕である。
俺はたまらずしゃがみ込んでしまう。
「何やってるのさ、カイ。こうするんだよ?『タップ・ステップ』!」
リタの足取りがリズミカルになり難なくコトンボをかわす。
「なるほど。じゃあ俺も『タップ・ステップ』!」
と叫んで立ち上がった。
って、痛い!痛い!痛い!
何も変わらない。
コトンボは容赦なく俺に突っ込んでくる。
「『タップステップ』はボクのギフトなんだからカイには使えないんだよ?本当コトンボ未満なんだよ……。はぁ……」
なんなら楽し気にステップを踏んでコトンボを避けているリタがため息をついた。
「ええ?そういうことなの?」
「当たり前でしょ!」
「って、痛い、痛い、痛い!なんでこいつら突っ込んでくるんだよ!」
「ケエジトンボなんだから。人の形のものに突っ込んでくるんだよ?」
「そんなこと、知らねぇーよっ!って、痛い、痛い、痛い!」
「だからもっと大きくなる前に、女神様像がボロボロにならないようにコトンボのうちに駆除するんでしょ!特に動いてたり音や声が出てたりするのを狙ってくるからおびき寄せて退治するんだよ?」
「そういうことは先に教えてくれよ!痛い、痛い、痛い!」
「大きな声出さないで。コトンボが余計に興奮するんだよ?」
「そうは言っても痛いと声にでちゃうだろ!」
「いいから!とっとと退治しないと。いくらケエジのコトンボでも、こんなに興奮して突っ込まれたらうちの神様が危ないんだよ!」
「おい!リタ!」
「なに?」
「コトンボだけでなく、俺だって突っ込むぞ!」
「どういうこと?」
そう。痛いながらも気づいた以上、俺は突っ込まない訳にいかない。
満を持した気分で俺は叫ぶ。
「なんなんだよ!ケエジコトンボとか!うちの神様がとかっていうのは!……どんなトレンチコート着ているんだってーのっ!!!」
「へ?なにそれ?」
俺の突っ込みが何ひとつ伝わらなかったリタは涼しい顔でコトンボを避けまくっている。
大声に寄せられたコトンボを俺は全く避けられない。
とにかくいろいろ多方面で悔しさが沸き上がってくる。
「通じないのかよ!っていうか、なんでリタにはコトンボが当たらないんだよ!」
「ボクのGGはサンダル。さっき唱えたギフトで素早く動けるんだよ」
「なにぃー!ずるいぞ、それ!」
「カイにだって何かギフトあるでしょ。それで早くコトンボ退治してよ」
「俺にギフトなんてあるかぁー!」
仁王立ちになる俺。
コトンボたちの突進はもちろん止まらない。
むしろ更なる大声に興奮し激しさを増した。
「え?」
途端に動きが止まるリタ。
俺をじっと見ると、
「ええーっ!!!」
更に大きな声を出した。
そして、その声が合図だった。
「痛い、痛い、痛いー!!!」
棒立ちになってしまったリタにケエジコトンボが一斉に攻撃を開始した。
一度動きを止めてしまってタイミングがずれたのか避けることが難しくなってしまったようだ。
「カイー!何とかしてー!」
「リタこそギフトでなんとかしてくれ、って、痛い、痛い、痛い!!!」
「無理ー!いやー!虫いやー!触りたくないー!って、痛い!痛い!」
「大丈夫だって言ってたろ!痛い、痛い!!」
「好きじゃないって言ったじゃない!痛い、痛い!!」
「何だよ、それ!痛い!痛い!」
「触らなければ、避けられていれば別に大丈夫なの!痛い!痛い!」
……間違ってないかもしれないけど無性に腹がたつ。
「きゃー!」
今度はリタが今までとは違う声をあげた。
「だめー!ぐりぐりしないでぇ!おへそには入れないからぁっ!」
いくら初心者とはいえ虫の駆除じゃん。
確かに大物の退治なんて絶対無理だよ?
何もできない俺と女の子が組んだ仕事だってのはわかってるよ?
それにしたって……、それにしたって初仕事が虫の駆除とかになるとテンションがあがらない。
「まあ、最初はこれくらいの超入門レベルからこなしてくってのが良いと思うんだよ?」
リタは何かを察したのかそう言うと泉への森をスタスタと進む。
俺はその後をえっちらおっちらついていく。
「おっと」
ぬかるみに足をとられバランスをくずす。
「あ、ここぬかるんでるから気をつけるんだよ?」
しっかりと尻もちをついた後の俺にアドバイスをくれた。
「……おい」
「だって、これくらい大丈夫だと思うじゃない。どれだけ歩き慣れてないんだよ?」
地べたに座り込んでいる俺にリタが手を伸ばす。
「……ぬかるみがあるとか、そういうことは先に言ってくれよ」
その手をつかみながらも文句を言う。
「しっかし」
リタが笑いながら言葉を続ける。
「全く、別の人にも『コトンボ未満』とか言われてたとは」
口が大きく全開になっている。そして、
「未満じゃないってことを証明するためにもささっと片付けないとだよ」
と、ウインクして親指を立てた。
そう、俺たちは今『コトンボ』の駆除に向かっている。
ちなみに『コトンボ』とはトンボの子どもの総称らしく。
つまりは虫。……デズリーの俺の初仕事は虫の駆除なのだ。
「『コトンボ未満』ってことはなにか?俺はリタにも別のヤツにも虫ケラ以下ということを言われたということか?」
「むしけら?なにそれ」
「なんていうか、小さな虫?要は俺は『小さな虫にも及ばない』って言われてたってことか?」
「ははは。そうだね。そういう意味で合っているんだよ」
なんだよ。
結構ひどくない?
「カイは馴染みがないかもしれないけど、コトンボはデズリーで割とよく使われる言い回しなんだよ」
「そういうものなのか?」
「忙しいときには『コトンボでも借りたい』とか、価値のわからない人に『コトンボに金貨』とか」
それ……、猫でも良いのでは?
「なあ、リタ……」
と、俺が話そうとしたが、リタがさえぎり話し出す。
「さ、泉が見えてきたよ。コトンボの生息地だから気を引き締めて。だからそろそろ間抜け顔やめて」
「引き締めるってトンボ相手に?っていうか、間抜けな顔ってなんだよ。リタこそ……」
って言いたいけど、こいつ整っているんだよなあ。
「ボクこそ何?」
しかたなく反抗の方法を変える。
「いや、その、リタこそ虫大丈夫なのか?」
「好きじゃないけど大丈夫。そもそも今回はケエジトンボのコトンボだし。毒とか特殊な能力もない普通のコトンボだし」
本当凛々しいなあ、リタ。
草木の向こう側に泉が見えてきた。
石像がその淵に建っている。
「泉の女神エビアンヌ様だよ」
リタが台座の上に建っている女神像の説明をしてくれた。
そして生息地というだけあって、石像の周りには確かにたくさんのトンボが飛んでいる。
「え?女神はデズリーじゃないの?」
「デズリー様はこの町全体の女神。エビアンヌ様はこの泉の女神」
「分担制なのか?」
「お一人でたくさん見られないでしょ?優しい女神様たちがいろんなところで見守ってくださるの」
「ふーん。なるほど。で?まあ早い話、トンボを採っ捕まえて駆除すれば良いんだろ?」
俺はあくびをしながらリタに確認する。
「女神さまの前であくび失礼でしょ。バチが当たるわよ。それと油断しないでってば。痛い目見るよ?」
「さっきからなんだよ。たかがトンボだろ」
「そう?じゃ、信じるんだよ?行くよ!」
そういうとリタは石像へと駆け出した。
俺も後を追う。
え?
なんだかトンボたちと眼が合った気がした。
瞬間、俺は声をあげていた。
「痛い!痛い!痛い!」
トンボたちが一斉に突っ込んできた。
俺の身体へ一直線へ突撃してくる。
突き刺さりこそしないが、間近で小石を全力でぶつけられているような痛さだ。
っていうか、こいつら全然小さくないぞ?体長10センチは余裕である。
俺はたまらずしゃがみ込んでしまう。
「何やってるのさ、カイ。こうするんだよ?『タップ・ステップ』!」
リタの足取りがリズミカルになり難なくコトンボをかわす。
「なるほど。じゃあ俺も『タップ・ステップ』!」
と叫んで立ち上がった。
って、痛い!痛い!痛い!
何も変わらない。
コトンボは容赦なく俺に突っ込んでくる。
「『タップステップ』はボクのギフトなんだからカイには使えないんだよ?本当コトンボ未満なんだよ……。はぁ……」
なんなら楽し気にステップを踏んでコトンボを避けているリタがため息をついた。
「ええ?そういうことなの?」
「当たり前でしょ!」
「って、痛い、痛い、痛い!なんでこいつら突っ込んでくるんだよ!」
「ケエジトンボなんだから。人の形のものに突っ込んでくるんだよ?」
「そんなこと、知らねぇーよっ!って、痛い、痛い、痛い!」
「だからもっと大きくなる前に、女神様像がボロボロにならないようにコトンボのうちに駆除するんでしょ!特に動いてたり音や声が出てたりするのを狙ってくるからおびき寄せて退治するんだよ?」
「そういうことは先に教えてくれよ!痛い、痛い、痛い!」
「大きな声出さないで。コトンボが余計に興奮するんだよ?」
「そうは言っても痛いと声にでちゃうだろ!」
「いいから!とっとと退治しないと。いくらケエジのコトンボでも、こんなに興奮して突っ込まれたらうちの神様が危ないんだよ!」
「おい!リタ!」
「なに?」
「コトンボだけでなく、俺だって突っ込むぞ!」
「どういうこと?」
そう。痛いながらも気づいた以上、俺は突っ込まない訳にいかない。
満を持した気分で俺は叫ぶ。
「なんなんだよ!ケエジコトンボとか!うちの神様がとかっていうのは!……どんなトレンチコート着ているんだってーのっ!!!」
「へ?なにそれ?」
俺の突っ込みが何ひとつ伝わらなかったリタは涼しい顔でコトンボを避けまくっている。
大声に寄せられたコトンボを俺は全く避けられない。
とにかくいろいろ多方面で悔しさが沸き上がってくる。
「通じないのかよ!っていうか、なんでリタにはコトンボが当たらないんだよ!」
「ボクのGGはサンダル。さっき唱えたギフトで素早く動けるんだよ」
「なにぃー!ずるいぞ、それ!」
「カイにだって何かギフトあるでしょ。それで早くコトンボ退治してよ」
「俺にギフトなんてあるかぁー!」
仁王立ちになる俺。
コトンボたちの突進はもちろん止まらない。
むしろ更なる大声に興奮し激しさを増した。
「え?」
途端に動きが止まるリタ。
俺をじっと見ると、
「ええーっ!!!」
更に大きな声を出した。
そして、その声が合図だった。
「痛い、痛い、痛いー!!!」
棒立ちになってしまったリタにケエジコトンボが一斉に攻撃を開始した。
一度動きを止めてしまってタイミングがずれたのか避けることが難しくなってしまったようだ。
「カイー!何とかしてー!」
「リタこそギフトでなんとかしてくれ、って、痛い、痛い、痛い!!!」
「無理ー!いやー!虫いやー!触りたくないー!って、痛い!痛い!」
「大丈夫だって言ってたろ!痛い、痛い!!」
「好きじゃないって言ったじゃない!痛い、痛い!!」
「何だよ、それ!痛い!痛い!」
「触らなければ、避けられていれば別に大丈夫なの!痛い!痛い!」
……間違ってないかもしれないけど無性に腹がたつ。
「きゃー!」
今度はリタが今までとは違う声をあげた。
「だめー!ぐりぐりしないでぇ!おへそには入れないからぁっ!」
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